10話 保持者、村に立つ
中世ヨーロッパのトイレ事情をちょろっと調べました。まさか大を窓から放り投げる時代があっただなんて……。でもその前の時代には水式トイレがちゃんとあったらしいです。どうして劣化したのか、理解に苦しむ所ですね。
さて、歩き始めて早数時間が経ったのだが、俺は今とてつもない危機に瀕している。
それは‥‥
ぐぎゅるるる~~~・・・・
「シ、シヌ、マジデ、ホント、カンベン・・・・」
猛烈な腹痛による甚大なダメージを負っているからである。
何故こんな状態に陥っているのか?
それは、現在俺が背負っている聖女メルティを救出し、彼女を連れて旅を再開した数十分後の話になる。
森に生い茂る草木を払いながら自身の直感に従って歩いていたのだが、ふと気がついたんだ。こっちに召喚されてから食べ物はおろか、水すらも飲んでいないなと。そこで森なのだから木の実でもあるのではないかと思い探してみたわけだが、巻き込まれ転移してしまった自身の運の無さは何処へやら。あっちに木の実、こっちにも木の実という感じで次々に見つかった。そして、そのまま食したさ。美味かった、なんというか自身で探して取ってきたからか野生に戻ったみたいだったな。ただ、食した木の実はどれも少し水気が足りなかったせいか喉が渇いて仕方がないので水を探すことになる。俺は流れる川を見つける。地球にいた時の物と比べるとこちらの川の水は非常に綺麗だった。店で売られている水と大差ないくらいに透き通っていた。そこで本当に止めておけばよかったのだ。店に売っている水しか飲んでいない、不純物が限りなく消されている水しか飲んでこなかった、そんな人間が勝手に大丈夫な水と判断して飲んでしまった。その結果が‥‥
ぐぎゅ、ぐぎゅるるる~~~・・・・
「ほぉ~~~!あ、アカンってアカン奴やってコレ!あ~あの時なんであんな川の水飲んだんだよ!ぐひィ‥‥。あん時の自分を殴ってやりたい」
これである。
不運に塗れた旅のスタートに先が思いやられるが、今はともかくこの腹痛をどうにかするのが先決。
「よく考えたらこの世界にトイレットペーパーなんてあるはずがねぇ。とにかく川を探すんだ。俺の尊厳を守るためなんだ。ぐぅ‥‥。」
この様に喋って気を紛らわせることで腹痛を耐え、便意を抑える。
そうでもしなければ先程言葉にしたように人としての尊厳を捨ててしまうことになる。それだけはなんとしてでも避けたい。自分一人だけならまだ対処の仕様もあっただろう。しかし此処には聖女メルティがいる。美少女の目の前でブリブリとしてしまう人間を貴様らはどう思う。蔑むだろう。哀れだと思うだろう。面白いと思うものもいれば、大声で笑うものもいるだろう。だからこそ!俺は漏らす訳にはいかない!尊厳を守らなければいけないのだ。
そして虚ろな目を前に向ける。いつの間にか森を抜けていたのだろう‥‥‥目に映るのは村だった。
***
村に入った俺は全力で便所を探した。それはもう命がけで。そしてそれを見つけると同時に背負っていたメルティを村の人間に任せ籠もった、全力で。しかし、出しても出しても収まらない腹痛に耐えかねた俺は……神装を使った。その神装の名誉のため神装の名は伏せる。
神装のおかげで難を逃れた俺は、メルティを再び背に乗せて、彼女を見ていてくれた村人に礼をした後に、村長を見て回っていた。
「本当に何にもない場所なんだな……」
木と藁でできた家が十数件あるのみで後は馬、鶏、豚などの飼育小屋が多少あるのみで、お店などもなくこんなので生きていけるのかと本気でこの村が心配になった。
「おやおや、旅の御方かの?」
この村を心配していると、杖をついた爺さんがこちらに寄って、話しかけてくる。
「あぁ、そうだよ。俺は全上院立。背負ってる奴はメル‥‥そう、メルって奴だ」
途中メルティと彼女の名前を出そうとしたが、この世界では聖女が相当な地位にいるようなので本名を伏せて偽名を使うことにする。
「やはりそうじゃったか。悪いことは言わん、お主も早く聖女シグレ様の居られるワコクに逃げたほうがよいぞ。まったく、聖女マリアンヌ様とアリスベル様には困ったもんじゃ。こんなことを言うておったら不敬だと言われて、即刻死刑じゃろうが、儂ももう長いこと生きた。この老いぼれの最後の願いと思ってもう暫く愚痴を聞いておくれんかの?」
爺ちゃんっ子だった俺は快く話を聞いてあげた。年寄りには優しくせんとね。
とまぁそんな感じで爺さんの話を聞いた所、どうやら近々この国で大規模な戦争が起こるらしい。妹とその親友が心配だが、何とか乗り切ってくれるだろうと信じることにする。そして戦争の話だが、爺さんの言っていた聖女マリアンヌと聖女アリスベル。この二人が表に立って男を批判し、奴隷化しようなどとほざいてるらしい。対して聖女シグレという奴はそれでは世界が成り立たなくなると彼女らを批判している。そしてシグレはマリアンヌらに滅ぼされたセドラ帝国で活躍していたと云われる六神将と呼ばれる者を二人、ワコクに招き入れているらしい。六神将は現在では三名しか残っておらず、内二人はさっきも言ったとおりワコクにいる。しかし三人目……光の神将と呼ばれていたストレインが行方不明らしい。死んだのではという噂もあるが、もし死んでいたとしたら、彼の身に纏っていた装備品が戦場に落ちていてもおかしくはないのに、それが全く無かったことから、生存扱いとなっているらしい。
いくらなんでも情報持ちすぎだろと思い、この爺さんが何者なのか聞いてみた所、かつてセドラ帝国に住んでいたらしく、町の町長などをやっていたらしい。何とか逃げ延びてこの村で色々とやっているうちに、村長を任せられたとか。
村長の話を聞いたりしてこの世界の情報もかなり集まったので、そろそろ休みたいと思い、村長に宿がないか聞いた所、やはり宿はないらしい。しかしこの爺さんは愚痴を聞いてくれた御礼だと言い、村長宅に一晩泊めてもらうことになった。残念ながらメルティはまだ目覚めないので先に村長宅の寝床で寝てもらうことにして、俺は晩御飯を頂いた。塩味の豆のスープとクッソ固いパン、そして塩辛く固い燻製肉である。くっそ不味かったがそれを口にすることはない。この世界でも美味しいものが食べれるといいなと思いつつも黙々と食事を取り、村長とその奥さんの三人で会話を弾ませ、悪夢のような一日がついに終わる。
何故か主人公がお腹を壊したがります。不思議ですね~。
さてさて、前回から一ヶ月もたったにも関わらずこのようなクオリティで恥ずかしくありますがご勘弁を(汗)
10話まで行きました!正直ここまで投稿できるとは思っても見ませんでした。これも読者様方のおかげです。本当に有難うございます!
これからもがんばりますので応援よろしくお願いします。




