恋?浮気?先輩?
「おい、許諾。お前、どこの高校に行くんだ?」
そう尋ねてきたのは、私のクラスメイトであり、唯一の友達であり、幼なじみでもある――霖嵐青澤だった。
「特に問題がなければ、たぶんまた青澤と同じ学校かな?」
私は俯いた。二つのおさげも、どこか元気がないように見える。けれど、そのおかげで彼に見られたくない恥ずかしそうな表情を、ちょうど隠すことができた。
言い忘れていたけれど、彼――霖嵐青澤は、私の片思いの相手でもある。
幼い頃から、家族や親戚、先生たちにはずっと「勉強好きでおとなしい優等生」だと思われてきた。私自身も、彼らの言うことは間違っていないと思っていた。だから服装も、振る舞いも、話し方も、すべて自分の「キャラ」にぴったり合うようにしてきた。
けれど、そんな私にも例外はある。
本来ならおとなしくて、行儀のいい女の子であるはずの私が、恋を掴み取りたいと思うようになってしまったのだ。
人生のほとんどを共に過ごしてきた幼なじみ。私のキャラと同じくらい長い付き合いの彼を、私は好きになった。
そのおかげで、毎日がとても楽しかった。朝起きるたびに、自分を奮い立たせるのが日課になっていた。
今日こそ、彼に好きになってもらえるよう頑張ろう。
そんなことを考えながら、毎日を過ごしていた。
残念ながら、現実は思いどおりにはいかなかった。そんな日々が二年以上も続いているのに、彼は一向に告白してくれない。
それなら、私から告白してみる?
……やっぱりやめよう。もし振られたら、ものすごく気まずくなる。最悪、今までの関係まで壊れてしまうかもしれない。
そんなのは嫌だ。
「えっ? 許諾、お前の成績なら、もっと別の……」
彼は慌てていた。それなのに、何事もないような真面目な顔を装っている。
そういうところが、ちょっと可愛い。
「あなたに言われなくても分かってる! これは私が自分で選んだことなの。それに、あなたがいなかったら、私には本当に友達が一人もできなかったかもしれないし」
……まあ、実のところ、私も慌てているのに平静を装うタイプなのだけれど。
これが中学時代、彼と交わした最後の会話だった。
彼だけでなく、ほかの誰とも交わした最後の会話だった。
そして私たちは、同じ高校に進学した。
入学初日、私は彼の家の前で待ち伏せし、一緒に登校しようと誘った。
天気は快晴。私は彼に新しい髪型を披露した。
もう、野暮ったい二つのおさげではない。まっすぐで滑らかなローポニーテールだ。
美容師さんに勧められた、私の銀白色の髪に一番似合う髪型だった。
「どう? 可愛いでしょ!」
これまでで一番強気な口調で言ってみた。褒めないわけにはいかない、という雰囲気を全力で出したつもりだ。
「ずいぶん変わったな。俺は好きだよ……」
彼は手で頬を掻きながら、眉間の力を抜いた。どうやら機嫌も悪くないらしい。
「ふん、合格ってことにしてあげる……」
……実は、今にも叫び出してしまいそうなくらい嬉しかった。
………………
ところが、それから数日も経たないうちに。
「ねえ、聞いた? 霖嵐青澤って、三年生の先輩を口説いてるらしいよ」
私とはほとんど面識のない女子が、そんなことを言ってきた。
私は何も答えなかった。否定する気にもなれなかった。
というのも、昨日、昼食を食べる場所を探して校舎の屋上へ行ったとき、あの有名な陳先輩が、二年生の男子と一緒に昼食を食べているところを見てしまったからだ。
「先輩に彼氏がいるって分かったら、青澤も諦めるよね」
私はそうやって自分を慰めた。
「うん、きっとそうだよ」
それは、夜にピンク色のクッションを抱きしめ、十数分間泣いた後に口にした言葉だった。
翌日、目を真っ赤に腫らした私は、一人で学校へ向かった。
そこで初めて、校内の掲示板に部活動の新入部員募集の告知が貼られていることに気づいた。
昨夜はよく眠れなかった。あくびをしながら文学部の告知をめくり、内容をざっと読み流す。寝ぼけた頭に、場所だけはなんとか記憶した。
高校ではイメージチェンジすると決めていたけれど、読書や文学が間違いなく私の趣味であることに変わりはない。
「503号室……うん、503号室ね」
おそらく文学部の部室番号だろう。
少し浮かれていたせいもあって、校門まで戻って確認することはしなかった。
窓の外では、いつの間にか雨が降り始めていた。しかも、雨脚はどんどん強くなっていく。
無数の銀糸が空から垂れ下がり、大地に何かを囁きかけているようだった……。
私は少し不安を感じながら、できるだけ物音を立てないように部屋の前に立った。
視線はドアノブに釘付けだ。
まずは、ほんの少しだけドアを押し開けてみる。扉は十度ほど開いた。
中にいたのは男子生徒が一人。どうやら二年生の先輩らしい。
【まずい! 部屋を間違えた!】
慌ててドアを閉めようとした、そのとき。
私は彼に見覚えがあることに気づいた。
――陳先輩と一緒に昼食を食べていた男子だ。
もしかして、青澤が諦めていないのは、二人がまだ正式に付き合っていないから?
ふと、そんな考えが頭をよぎった。
その瞬間、私の脳裏に「遊び部」という三文字が映画の字幕のように浮かび上がった。
今朝、この部の募集告知はあまりにも簡素だった。そのせいで、かえって強く印象に残っていたのだ。
【もういい! 恋のためなら、どうにでもなれ!】
私は覚悟を決め、深呼吸をした。
そして、全力でドアを押し開けた。手首にズキッと痛みが走る。ぎゅっと目を閉じ、それから自分なりに一番明るく、活発に見える表情で目を開いた。
「先輩! 私を部に入れてください!」
予想どおり、先輩はまだ陳先輩と正式に付き合っていなかった。
私は自称・恋愛軍師を名乗り、ちょっとした小細工を使って、あっさり入部を果たした。
実を言うと、サイコロの目が一か二だった時点で、私はすでに諦めかけていた……。
でも、先輩が呼び戻してくれたおかげで、なんとかなった。
今思えば、あのときは結構いい雰囲気だったよね!
私と霖嵐青澤の誕生日は同じ日、九月三十日だ。
高校に入って初めて迎える誕生日。片思い中の女の子として、いや、幼なじみとして、彼にサプライズを用意してあげたいと思った。
ところが、現実的な問題にぶつかってしまった。
――お金がない。
仕方がない。計画を実現するために、まずやるべきことはアルバイトだ。
しかし、残念ながら、どこにも雇ってもらえなかった。
そこで私は、第二の計画に取りかかることにした。
ひたすら節約するのだ。
急いで買う必要のないものは一切買わない。食事だって、しおれた野菜の根っこを乗せたご飯だけで済ませる。
確かに、ものすごくまずい。
でも、それ以上につらかったのは、周囲の視線だった。
私と、私の昼食を、奇妙な目で見てくる人がしょっちゅういたのだ。
さらに、青澤を驚かせるために、教室で昼食を食べることもやめた。学校中をあちこち歩き回って、時間を潰すようになった。
そのせいで、白髪の女の幽霊が出るという怪談まで生まれてしまった。
しかも、私自身、その怪談の中でもっとも恐ろしいバージョンを聞いて、怖くなったことがある。
そんなある日、校内を歩き回っていた私は、遊び部のドアが開いていることに気づいた。
しかも、きちんと閉まっていない。
これはよくない知らせだ。
つまり、昨日、先輩と陳先輩が喧嘩でもして、陳先輩が来る前に先輩が帰ってしまった可能性が高い。
はあ……先輩って本当に鈍感だよね。
どうして陳先輩が自分を好きだって気づかないんだろう?
私なら、そんなことすぐに分かるのに。
とにかく、私の恋愛軍師計画は、まだまだ前途多難というわけだ。
「ぐううう……」
空腹でお腹が鳴った。
いや、美少女がお腹を空かせるなんてありえない。
私は余計なことを考えるのをやめ、遊び部に足を踏み入れた。
眉をひそめながら、見るからに貧相なお弁当を見つめる。
そのとき。
ガチャリ。
ドアが再び開いた。
結局、この日のお弁当が、私にとって一番おいしい食事になった。
うん、先輩って意外といい人だよね。
えへへ……。
………………
ちょっと、先輩! やっぱり陳先輩を怒らせちゃったじゃないですか!
本当に大バカなんだから!
まあ、いいや。
ちょうど体育祭の練習で使う荷物を預かってもらいたかったし、これを口実に先輩に頼んじゃおう。
だって、霖嵐にはあまり迷惑をかけたくないから。
………………
今、私は霖嵐と話をしていた。
他愛のない会話を交わしている最中だったけれど、私の意識は片思いの相手ではなく、少し離れた場所にいる先輩と、金髪の女の子に向いていた。
その女の子は校内でもかなり有名な人物だ。だから、遠くからでもなんとか見分けることができた。
黎思妙。
もう一人の有名人である柳河川先輩の彼女だ。
ちょっと、先輩の周りには、どうしてこんなに可愛い女の子がたくさんいるの?
ふん……。
そのとき、郭錫先輩が黎先輩に近づき、少しだけ顔を下げた。
二人の頭が、ほとんどくっつきそうな距離になっている。
ただ、こんな薄暗い場所では、二人の姿はあまり目立たなかった。
【えええっ!? キス!? 今、キスしてるよね!? 何これ、浮気現場!?】
黎先輩は柳河川先輩を裏切って、郭錫先輩と人には言えないような関係になっているってこと!?
「許諾……」
霖嵐に名前を呼ばれ、私は仕方なく振り返った。
けれど、心の中ではまだ波が、いや、津波のように荒れ狂っていた。
さっきの光景が気になって、どうしても考えずにはいられない。
「きゃあああっ!!!」
遠くから、黎先輩の大きな悲鳴が聞こえてきた。
私は霖嵐やその場にいたみんなと一緒に、声のした方を振り返った。
しかし、そこにはもう先輩の姿はなかった。
一方、黎先輩の顔は、夜の暗闇でも隠しきれないほど真っ赤になっていた。
これは……浮気の後の、夢中になってしまうような刺激ってやつ?
いや、気持ちは分かる……。
いやいや、分からない! 全然分からないから!
先輩、あなたって人は本当に大バカです!!
それでは、また次回!




