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雷下の改新〜霹靂伯の異世界教育改革〜  作者: 囲魔 美蕾


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第9話 最後の仲魔

 召喚陣から現れた大きな水晶をよく見てみると、中に少女が閉じ込められているようだ。もしかしてこの子封印されてる?




「これは……。アイン様、結晶に手を触れてみていただけますか」


「わかったよ」




 ティアの言葉通りに触れてみようとすると、リエルが




「待ってください。ティア、これが何か知っているなら説明が先です」




 別にティアが言うなら大丈夫だと思うんだけど……。まあリエルの言い分もわからなくもない。危険があるかもしれないものに触れるのは怖いよね。ティアが静かに語り出す。




 この結晶はリエルやレイヌが生まれるよりもっと前の時代に作られたものらしい。その頃、地上の最強種といえば竜であった。とはいえ暴れ回るわけではなく、むしろ争う他種族の仲裁に入る役割を神から与えられていた。


 竜には神竜族と属性竜族がいた。神竜族は竜の王族でフェンリルと同じく神に使えるもの、属性竜は火水地風雷の属性を操る僕竜だ。属性竜でも数匹いれば争いを収められる力があるので、神竜族は更なる力を持ちながらも実働は属性竜に任せていた。


 争いが減り竜の出番もなくなってきた頃、神竜族にある娘が生まれた。その娘はとてつもなく強大な力を秘めており、自分でもコントロールできなかった。平和が訪れ神界に帰ろうとしていた神竜族は、神界に連れ込むわけにもいかず仕方なく少女を封印せざるを得なかった。封印は少女を抑えられる者のみが解けるようにされた。そうして少女を閉じ込めた結晶は誰の目にもつかぬ場所に安置され、今まで見つかることはなかった。




「で、僕が触ると?」


「封印が解けます」


「何でやねん」




 意味がわからない。そんな危ない存在を抑えられるとも思えないしここで解き放つわけにもいかないよ。




「我々の力もアイン様のお力の一部なのです。それに、この契約があれば力のコントロールもできましょう」




 そうか、皆の力を合わせればいいんだ。そもそも独りにならないために召喚しているのに一人で解決しようとしていた自分を恥じた。




「わかった。やってみよう。でも、危なくなったら助けてね」




 皆から応諾の声が聞こえ、僕は水晶に手を触れる。すると、最初からなかったかのように消えてしまい、緑色の髪の少女だけがその場に残される。膝を抱えていた少女が倒れないように支えると、少女が目を覚ました。




「ん……? ここはどこ?」


「はじめまして。僕はアイン。ここは僕たちの家だよ。君は?」


「私はメリュジーヌなの。お兄ちゃんが起こしてくれたの?」


「そうだよ、メリュジーヌ。話はティアから聞いたけど、力は抑えられそう?」


「そうなの! 私の力が溢れたら危ないの! でも、抑えてくれる人が起こしてくれるっておじい様が言ってたんだ。お兄ちゃんがそうなの? お兄ちゃんからも周りの人からもすっごいチカラを感じるよ!」




 今のところ暴走する様子はない……が、早めに契約しておいた方が安全だろう。




「頑張ってみるよ。そのために僕と契約してほしいんだ。何かお願いはある?」


「決まってる! 私のチカラを抑えたいの!」


「わかった。抑えるだけじゃいざというときに困るかもしれないから、抑えたり引き出したりできるようにしようか」


「うん!」




 そうしてメリュジーヌとも契約を交わす。すると、力のコントロールができるようになった感覚があるようで、彼女は喜んでいた。




 こうして六体の仲魔との契約を済ませた僕だけど、この数時間でどれだけ強くなったのだろうか。整理しておこう。


 まずはレイヌ。彼女との契約で保有魔力が格段に増えた。それと何か色のついた球状のものがふよふよと飛んでいるのが見えるようになった。何だろう。




「主人様。それは精霊です。四大魔術の属性と同じく火水地風の精霊がおります。赤が火、青が水、茶色が土、緑が風です。精霊女王と契約しているのですから主人様は精霊の王のようなもの。願えば魔術の行使くらいは協力してくれるでしょう。ただ、精霊たちもまだ主人様に慣れていないようですね。慣れれば姿形もはっきりしてくると思います」




 何と、精霊に力を借りれば四大属性魔術も使えるようになってしまった。一人目で大幅強化である。


 次にアルゴ。僕は【剣術】のスキルも得ているから、それの強化になるのかな? と思っていたら意外なところが強化されたようで、




「剣術はこれから我が教えよう。研鑽に勝る成長法はないぞ。我との契約で上がったのは頑強さだ。主の肌は我が鎧に同じ。並の剣など弾き返すだろう」




 それはまたすごいなあ。というか鎧のような肌ってそれもう人間離れしちゃってるよ……。しかもアルゴの鎧、明らかに鉄とかじゃないじゃん。もっと硬いし魔術も防いじゃいそうな感じがするよ? 僕、生身でそうなるの? 嬉しいけどね。


 三番目はアルテ。こちらは【感覚強化】が関係していそうだけど……。




「私は力と敏捷性、それからいろんなことを察知できるからそれだと思う」




 うん、単純で使いやすそうな能力だ。精霊と合わせれば危険はかなり察知して減らせるだろう。


 四番目はリエル。言うまでもなく【神聖術】の強化なので割愛。リエルの「何でですか!」という声が聞こえたが割愛は割愛である。




「私、弓や槍も得意なんです! 覚えたかったら言ってくださいね!」




 剣、槍、弓と揃えばどんな相手にも対処できそうだ。前向きに検討しよう。


 五番目のティアは何かと思えば【雷属性魔術】の強化らしい。そんなに使うことがなかったから違いがよくわからないな。




「紫電が出せるようになっています。通常の雷よりも強力ですよ」




 紫電。言葉通り紫色の雷のことだ。


 雷も電磁波、つまり光の仲間である。光のエネルギーは波長が短いほど弱く、長いほど強くなる。短い波長の色は赤、長い波長の色は青や紫なので、紫電というのは通常の雷より高いエネルギーを持ち強いのである。ちなみにこの世界の雷属性魔術の雷光は黄色が基本である。つまり赤に割と近いので、そのエネルギー差はかなり開いていると言える。さすがは始祖の悪魔である。


 そして最後、メリュジーヌだが、【封印】と【飛翔】のスキルを取得したらしい。教会で確かめてないから暫定だけど、契約したメリュジーヌが言ってるから本当なんだろう。


 【封印】はまさにメリュジーヌが封印されていたあの結晶のようで、何かヤバいものが出たら封印するのに使おうと思う。


 【飛翔】は魔力の翼を生やして飛べるらしいが種族的に飛んだこともない人間が簡単に飛べるとは思わないなぁ……。要低空飛行での安全な練習だ。




 六体の仲魔と契約した僕は、色々と規格外になってしまったようだ。力の制御のことを考えないといけないな。

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