回想「たぶんデートではない一日」
謝罪。
今回、とてつもなく短いです。
アサヒは、すうすうと寝息を立てている。
さっきは少し心配もしたが、家に帰ってからはいつもの調子に戻り、騒がしかったのに——今は嘘みたいに静かだ。
俺はその寝顔をぼんやり眺めながら、今日のことを思い返していた。
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買い物に行く前、外食するならここ一択と決めて入ったバイキング。
「なにココ?」「タベモノいっぱい!!」
目を輝かせながら店内をキョロキョロと見回す。
「どれでも好きなの食べていいんだぞー」
専用の皿を渡すと、アサヒは迷いなく料理を乗せていく。
山盛りどころじゃない。もはや立派な山脈だ。
「おい……それ、食いきれるのか……?」
「だいじょうぶ!」
元気よく返事した次の瞬間には、もう別の皿に手を伸ばしている。
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結果。
普通に全部食べた。
しかも、
「おいしい……!」
って、めちゃくちゃ幸せそうな顔で。
……見てるこっちが、ちょっと嬉しくなるくらいに。
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ショッピングセンターの中では、突然現れた噴水にびっくりして立ち止まったり、
水しぶきに少し身を引いて、でも気になって近づいたり。
そのたびに表情がころころ変わる。
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たまたま通りかかったステージでは、知らない新人アイドルが歌っていて。
「……なにあれ」
って言いながら、結局最後まで見てた。
手拍子、ちょっとズレてたけど。
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――その後の出来事は(服屋の件)今は記憶の箱に封印しておく。
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……こうしてみると、アサヒって普通の女の子だよな。
ああやって二人で歩いてると、カップルに見えてたりするのかな。
いや、何考えてんだ俺。
素早く、彼女いない歴20数年の煩悩をかき消す。
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「りょう……アレはなに……」
不意に、アサヒが小さくつぶやく。
寝言だ。
何を見てるんだか。
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俺はそっと手を伸ばして、
アサヒの前髪を、さらりと撫でた。
指の間を、柔らかい髪がすり抜ける。
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「……今日は、楽しかったな」
返事はない。
ただ、寝息だけが静かに続いている。
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けど。
それでいい気がした。
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この時間が、
ずっと続けばいいのに、なんて――
思ってしまった。




