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1話:修正依頼の対象が同期なんだが!?

聖闘社⭐️リーマン

セイントリーマンと読みます。


午後2時。

パソコンの画面に映る修正指示は、今日で5回目だった。


「ここ、やっぱり全部変えて」

クソ上司からのメールはいつもクソみたいな指示ばかりだ。

軽く言うなよ。全部ってなんだよ全部って。


「はい、わかりました」


口は勝手にそう動く。

心はとっくに、どこかに置いてきたみたいだ。



トイレに行くついでに自販機で眠気覚ましのブラックコーヒーを買おうとしていたら同期の矢島に話しかけられた。


「なあ……聖川、あの変更修正、終わると思う?」


「終わらせるしかないっしょ」


笑って返す。

笑えてるかは知らない。


矢島は

「だよなぁ、、、」とため息をついて、何か言いたげだったが口をつぐんだ。

どうしたんだ?と聞いてやるべきだったかもしれないけど、俺にはそんな余裕もなく矢島を見送った。

夜9時


「やっぱり終わらないよな。、、、。」


デスクの横には食べ終わったカップラーメンの容器と致死量のコーヒーの空き缶。


パソコンを見る目も霞んでいる。


ふと窓の外を見ると、隣のビルの屋上に人影が見えた。


あれは――


矢島!?


なんであんなところに……。


嫌な予感が、背筋を走る。



俺は弾かれたように立ち上がり、階段を駆け下りた。

エレベーターなんて待ってられない。


外に飛び出し、隣のビルを見上げる。


「おーい!!矢島!!何してるんだ!!」


返事はない。


「やめろ!!早まるな!!」


昼間の、あの妙な様子が頭をよぎる。


――あのとき、ちゃんと話聞いてやればよかった。


「矢島!!聞こえてるか!!」



矢島は、ゆっくりとこちらを見下ろした。


その目は――何も映していなかった。


そして。


その体の周りから、黒い“何か”が滲み出ている。


煙みたいな、でももっと重たい、

触れたら終わりそうな、嫌な気配。



「……なんだよ、それ」


目を擦る。

だが、消えない。


「……見えてるよな、これ」



次の瞬間。


人間の形が、ぐにゃりと崩れた。



「――っ!?」


矢島の体が、ありえない方向にねじれる。


「や、やめろやめろやめろ!!労災案件やぞそれ!!」



スーツが、内側からボコッと膨らんだ。


ビリ、ビリビリッ――


弾けるように裂ける。



黒い“何か”が、どばっと溢れ出した。


煙というか、もうほぼヘドロみたいな感情だ。



「……終わらないんだよなぁ……」


「いや急に重い!!」



「直しても直しても……」


腕がぐにゃっと伸びる。


「仕様が変わって……」


指先がカッターみたいに尖る。


「意味あんのかよぉぉぉ!!」



ドンッ!!



爆発した黒い霧の中から現れたのは――


明らかに"残業の化身”みたいな何か だった。



スーツの切れ端をぶら下げ、

無駄に長い腕、

指は全部カッター。


しかも胸元には、


「修正依頼」って書いてある。



「いやデザイン雑!!」



「修正……修正……」


「やり直し……」


「終わらない……」



「いや言語化すな!!こっちに刺さる!!」



怪人がこちらを向く。



「聖川ぁ……」



「ちょっと戻ってきてるやん!!」


怪人――元・矢島が、ゆっくりと首を持ち上げた。


「修正……」


その濁った視線が、屋上の縁へ向く。



そこに、


少女が立っていた。



「……は?」


ビルの下から見上げた聖川の口から、間の抜けた声が漏れる。



なんでだよ。


なんでそんなとこに、もう一人いるんだよ。



「やり直し……」


ロックオンするみたいに、少女へと向きを変え怪人が、ぎこちない足取りで少女へと近づいていく。



「おい!!やめろ!!」



聖川は叫んだ。


届くはずもない距離で、それでも叫ばずにいられなかった。



「そっちは関係ねぇだろ!!」



怪人は止まらない。



少女は、一歩、後ろへ下がる。




怪人の体が、ぴたりと止まる。


そして、


「やり直し……」



「おい待て待て待て!!やめろぉー!!」



「なんでだよ……なんで今日に限って……!」



聖川は走った。


だがしかし、普段の運動不足がたたり、

足は千鳥足みたいにしか動かない。



「くそっ……!」



「なんでそんなとこいんだよ!!」



屋上。


少女はすでに縁に追い詰められていた。



背後は空。


前には怪人。


逃げ場は、ない。



「やり直し……」


怪人が、腕を振り上げる。



「くそ……どうすりゃいい……!」



頭が回らない。


考えろ。


――無理だ、考えられない。



「どうしたらいいんだよ……!!」



少女が、一歩、一歩と後ろに下がる。


背中が金網に当たり、カシャン、と鈍い音がした。



怪人が、鋭い手を振りかざす。



その瞬間、叫んでいた。



「飛び降りろ!!!」



「俺が受け止めてやる!!」



少女が気づく。


一瞬、目が合った。


(……めっちゃ美人じゃねぇか)


(いやそれどころじゃねぇ!!)



「いいから早く!!俺も意味わかってねぇけど今しかねぇ!!」



一瞬の沈黙。



そして――


少女が、飛んだ。



「うおおおおおお来たあああああ!!」



両手を広げる。


(やばいこれ絶対重い)


(いや待て普通に死ぬんじゃ――)



ドンッ!!



衝撃。


だが――


潰れない。



その代わりに、


光が弾けた。



ぱあああああああああああああああああ――!!



「な、なんだこれ!?」



少女の体が、光に溶ける。


そして、そのまま――


聖川の中へ、流れ込んできた。



頭の中に、声が響く。



『Imagine the change』



「は!?なんだって!!」



スーツが光に包まれる。


ネクタイが、ひとりでに締まり直る。


無駄にキマる。



「え!?なに!?どうなってるの!?」



白いアイロンのかかってないシワの目立つカッターシャツに、紺のスーツ――

見慣れたはずのそれが、次の瞬間、質感ごと変わった。


肩にはやたらゴツい装甲。

腕には無駄に強そうなパワーアーマー。

胸元には、謎に発光する星型コア。


なのに――


「なんで下ハーフパンツなんだよ!!」


機動力重視なのか、ただの設計ミスなのか。

太ももだけやけに風通しがいい。



「いや待て待て情報量多いって!!」



光が体の周りに漲るように収まったとき。


そこに立っていたのは――



「聖なる星の使者――」


(なんだこのワード!?)



「聖闘社⭐️リーマン!!」



「勝手に名乗らされたんだが!?」



キュィーンと体を纏う

光が1箇所に集まり



「……え?」



自分の拳を見る。



軽いっていうか――


力が、溢れてる。



「なにこれ……筋トレ一切してないのに、なんか強そうなんだけど」


頭の中で声が響く

『私の力、あなたと融合してる』


(え!女の子の声!?融合!?)

「なんなんだよこれ!!」


グッと拳に力を入れる。


ギシ、とスーツが鳴る。


力が、明らかに違う。


「……いやすごいぞこれ、」


一歩踏み出す。


アスファルトが、軽く軋む。


俺は身震いしながらゴクっと唾を飲んだ。

「――殴るしかねぇよなぁ!!」





その瞬間。



「修正ぉぉぉぉ!!」



怪人が、飛びかかってきた。



「うおっ!?」



反射的に腕を上げる。



――ドンッ!!



衝撃。


だが、今度は吹っ飛ばない。



「……え、耐えた?」



次の瞬間、体が勝手に動いた。



ドゴッ!!



拳が、怪人の顔面にめり込む。



「えっ、今の俺!?」



怪人が大きくよろける。



「強っ!!俺、強っ!!」


またも頭の中で声が響く

『制御、未熟』



「何!どういうこと?お前の力なの!?」



怪人が再び突っ込んでくる。


腕を振り上げる。



「修正!!」



「うるせぇ!!」



ブンッ!!



聖川も、思い切り拳を振る。



ズガンッ!!



空気が震える。


コンクリートにヒビが入る。



「ちょ、待て待て威力おかしい!!会社ごと壊れる!!」



『出力、調整不能』



「ポンコツ!!」



怪人の腕が、カッターのように迫る。



ギィンッ!!



咄嗟に掴む。



「危なっ!!」



力を込める。



ミシッ。



「……え?」



そのまま、握り潰した。



「え、折れた!?」



怪人が悲鳴を上げる。



「終わらないぃぃぃ!!」



「終わらせるんだよ!!」



踏み込む。



「うおおおおおお!!」



全力で、拳を叩き込む。



ドゴォォォン!!



黒い霧が、弾けた。



静寂。



その場に残ったのは――


倒れた、矢島の姿。



「……はぁ……はぁ……」

俺は荒い息を吐いた。


「……戻った?」



ゆっくりと、近づく。



「おい……矢島……」



矢島は、かすかに息をしていた。



「……聖川……?」



「……よかった……」



思わず、その場に座り込む。



「……終わった、のか……?」



『否』


矢島とは思えない声が響く

ぞくりと身震いし矢島の方をみた。


『人の鬱憤は、尽きない』



「……マジかよ」



その瞬間――


矢島の鼻から、


すぅー……っと黒いモヤが抜けた。



「出口そこ!?」



モヤはそのまま、夜空へと溶けていった。


俺は

夜の街を見上げる。



どこにでもありそうな、普通の風景。



でも。



「……まだ、いるってことか」



ため息をつく。



「はぁ……明日も仕事なんだけど」


ため息をついた瞬間、いつものスーツに戻り、目の前に少女が現れた。


「巻き込んでごめんなさい。

、、、。でもあなたしかいなかった。」



「ブラックすぎるだろ!!」


一話完


読んでいただきありがとうございます。

勢いだけの作品ですが、面白がっていただければ幸いです。

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