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第5話

 真太とアボは、香奈のほとんど死体っぽい体を氷漬けにするために、北極のそれも一番温度の低そうな場所に目星をつけて、やって来た。

「ひゃー。冷えるな。こんなところの氷の中にシンは何百年も入っていたんだろ。気が知れないや。パパもその気になっているけど、大丈夫?心臓麻痺になるんじゃないか。この辺りに居たってママの様子は分かるんじゃないか」

「せっかく戻って来た時に、いやな思いをさせる訳にはいかない。もう時間を無駄にはできないからな。真太、後の事は任せる」

「え、どういう事をだよ」

 そうこう話していると、シンが表れて、真太は『これは、噂をすればカゲってやつだな。気が知れないと言った件の反論かな』と一瞬思ったが、シンがこっちをじろりと見たので思い出した。この間の件の方かなと思い直した。

 しかし、シンは、

「一度凍らせた方が良いようじゃ。体か傷みかけておるから、中に入り辛いと見える。気の知れぬ我が氷漬けにしてみよう」

 やはり、真太の『気が知れない』と言ったことで、御立腹のようだ。

「そうなのか、分かった。だが、それは俺の役だ。俺が氷の中に入るから、真太の言う事は気にするほどの意味はないからな」

 そう言ってアボは香奈を連れて、氷の中に入っていった。真太は大丈夫かなと、様子をうかがった。

「心臓麻痺の兆候はないかな」

「無いようじゃ。アボは以前から、ことさら自分は弱いというふりをする。癖になっておるな。真太は愚か者の振りが癖じゃな」

「別にそんなフリはしていないよ。これが俺の自然体なんだってば」

「しかし、そうは思わぬ輩もおるぞ」

「あ、多分イデの事だろ。由佳の予言では喧嘩になるらしいけど。たしか龍神同士で戦うのは御法度だったよね。でも、まだ俺ら未成年だし」

「ふん、未成年とは言ったものよ。それは人間の法であろうが。龍神にはそういう法はないから、戦えば叱責を受けるであろうな。楽しみにしておけ」

「えー、そうなんだ」

 等と話していると、アボが氷の中から出て来た。真太はママが戻ったと思って、期待して見ると、アボは、

「さぶ~っ」

 と言いながら、ママを連れて出て来ている。案の定と言える結果だ。

 真太は、やっぱりねと思う。

「寒くて出て来たのか。ママはちゃんと凍ったの」

 懸念である。聞いてみると。

「凍っているだろう。こんなに寒いのに」

「シンに任せれば良いものを」

 真太はパパの意地のせいでママが具合が悪くなるのは困るのだがと、顔とか変になっていないか近づいて観察しようとすると、ママが目を覚ました。ぱちくり真太を見ると、

「ひゃー、真太だ。ママ、戻って来たよ。真太だってママの子供なのに、あいつったら、じゃない感じになったから、振ってやった」

「そうかそうか、香奈、よく戻ってくれた。アボはうれしいよ」

「あら、アボ。居たの。まっ、随分冷えているわね、どうしたの。って言うか、ここは随分寒いね、北極みたいじゃないの」

「みたいじゃなくて、本当に北極だよ。香奈が息をしていないから、北極で冷やして体を保管しようとしていたんだよ」

「そうなの、ありがと。でもアボったら、南国の龍神なんだから具合が悪くなったら、あたしが戻って来た時に、アボが終えていたんじゃ元も子もないでしょ。シンに任せておけば良いのに」

「お前たち、シンを当てにしすぎじゃないか。アボだってちゃんと香奈を凍らせたし」

「まっ、まだ凍ってないわよ。でも良いの、戻って来れたんだから。シン、ありがとう。祐市は諦めたようね」

「そのようですね。香奈さんの気持ちを、祐市が察したのでしょう」

 そういう話の流れを聞いたアボは、

「じゃあ、あいつより僕を愛してくれるんだね」

 と確かめると、聞かなければよかったと後悔する答えか返った。

「というよりも、聞いてよアボ。あいつったら、千佳由佳を連れて来て一緒に暮らそうって言って、あたしに変な飲み物を飲めって言うのよ。そして、これを飲んだら、魂があたしと千佳由佳と繋がっているから、こっちに千佳由佳を連れて来れるって言うの。あたし、言う事を聞かされている感じになっていて飲みながら、でも、あの子たちはこっちの暮らしを、どう思うかなって心配になってきていたら、その時になってあいつが、『真太も繋がっているじゃないか、あいつは来なくて良いのに』なんて言い出してね、真太もあたしの産んだ子なんだから、繋がっているに決まっているじゃない。そんな当たり前のことに憤慨しだしてさ。こっちだって、憤慨よ。腹が立ったから、戻りたいって言ったら、『そうはいかない』とか言い出したの。どうやら魔物だか魔王だか知らないけど、そういうのに、命令されていたみたいなの。魔物みたいなのが来たから、まずいとあたしも思って、どこに逃げたら良いか分からなかったけど、あいつらから逃げ回っていたら、シンが来てくれて、魔物やらあいつやらと戦ってくれている間に何となく戻れたの。良かった、ほっとしたわ」

「そうか、良かった、良かった」

 とアボは香奈を抱き寄せながら、話の中に自分が出てこなかったのに気付いた。しかし、子供たちと、魂が繋がっているという話の流れからだと思いたい。どうせ帰って来るのはアボの所なのだから。

「シン、世話になったな。ありがとう」

 アボはシンに礼を言わねばと思って、シンを見ると、にやっと笑っていた。察している。いつもの事だが。

 アボに礼を言われたシンが黄泉に帰ったので、真太は、

「じゃあ、俺らも戻ろうかな。一応、アマズンに」

「あら、どうしたの。一応って」

 アボは、

「アビは俺たちに話す事が、他の人たちとは違ったんだ。それで、香奈たちと行動を別にしたから、香奈にあいつが取り付いたんだ。アビは魔界と繋がっているだろうな。それでこの計画はどういう目的なのかな、という話になりかけている」

「そうよね、変な話よね」

 アボは香奈を抱っこで戻ろうとすると、

「いやん、あたしちゃんと立てるから」

「げほっ」

 まさか真太の前で、いちゃいちゃが始まるのかと、咳をしてみると、気付いてすましている。

「真太、俺らは自分で戻れるのだが。先に帰りたいようなら、帰って良いんだぞ」

「いいや、あんたらと別行動なんかして、もし、魔物が襲いに来たら寝覚めが悪いから一緒に行動するよ」

 ママは小声でパパに、

「真太ったら、最近生意気になってない」

 と話している。瞬間移動で二人を連れて戻り、千佳由佳は大喜びである。真太は実際、何とか解決してよかったと思った。そして急に眠気が来た。イヅ達の家に行き、寝かしてもらおうと思った。

 家に入ると、イヅ、イデ兄弟と、ロバート、悠一がそろっていた。

「眠いからここで寝かせてよ」

 とふらつきながら言うと、イデが、

「良いけど、魔界に言っちまう可能性あるな。香奈さんが変な薬飲んだし」

 そうだったと、真太は必死で目を開ける羽目になった。ところが・・・ママが慌ててやって来た。

「真太、大変よ。千佳由佳が急に倒れて、息してないの。きっと祐市が連れて行ったのよ」


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