第6話
ママが慌ててやって来た。
「真太、大変よ。千佳由佳が急に倒れて、息してないの。きっと祐市が連れて行ったのよ」
「そりゃ大変だ。俺も急に眠気が来ていたんだ。俺が追いかけて連れて戻るから。待っててね。ママ。えーと御神刀、御神刀っと」
真太が本物の方を持ってふらふら行こうとすると、ママは、
「チクリとしないようにしてね」
寝ぼけた感じなので心配している。するとイデが、
「僕も行こうか」
と言い出した。ママは、
「そうしてやって。イデって最近まであっちに居たでしょ。詳しいのよね。実のところ、あいつらは大神様にお願いして、黄泉の片隅に居させてもらっているの。それなのに全くの恩知らずでっ」
「へえ、ふぁー」
真太はあくびをしながら、ママからの情報に首を傾げた。
成り行きで、イデがついてきてくれるそうで、内心『割と良い奴なんだな』と思いながら、千佳由佳を追いかける真太と、付き添いのイデある。
その成り行きを見ながら、後に残ったイヅ。悠一やロバートに、自分の失恋の気持ちは隠して、
「イデは由佳ちゃんが気になる人みたいだな。真太の付き添いというより由佳ちゃんが心配なんだ。千佳ちゃんもね」
と言うと、ロバートは、
「そりゃそうだろ、俺らも能力があれば真太について行きたいよ。だろ、悠一」
と言い、すると悠一は、
「ロバート、前から思っていたけど、お前最近、千佳ちゃんが気になっていないか」
と言い出した。
「へぇ、お前にはそう見えるんだな」
と、ロバートは何気なさそうに言った。内心『彼に感付かれないように気を付けなくては』と思っているような顔つきである。
香奈は千佳由佳が心配ではあったが、この2件の情報を、アボに報告に行こうと、そろそろと後ずさり部屋を出た。
イヅは、ロバートに言っておいた。
「アボに知れたな」
ロバートはしまったと、悠一を睨んだ。
香奈がいそいそと報告に行くと、どうやらアボには聞こえていた感じ。
「あら、最近は耳の聞こえが戻ったのね」
「氷漬けの荒療治が効いたらしい。さっきから調子が良くなっている。こんな事なら、俺が真太について行くべきだった。イデなんかに任せて失敗したな」
「まあ、そうなの。でも無理しないで。あたしとの余生の約束守ってね」
「香奈、能天気なこと言っている場合じゃないぞ。イデは一癖も二癖もある奴だ。アバは子供のころ、あいつのやることをマネして手が付けられなかったんだ。シンが御神刀でやっつけたあの魔王とは、アマズンの古の龍神達も何度も戦っていてな、イデは前世のカカシャの時、御神刀無しで戦っていた。いい勝負だったが。負けて死んだんだ。龍神だから魔力とは言いづらいが、超能力があった。その能力を鉢合わせして戦って、わずかな差で負けたんだ。だが、生まれ変わってきたら、その能力が少なくなったらしい。真太の能力に興味を持っているな。嫌な奴なんだ、気を吸うように格下の龍神の能力を吸い取っていた。魔王に対抗するためだと言っていたが、その吸い取る能力も今はなさそうだけど」
「まっ、真太の能力を吸い取るつもりかしら」
「今、吸い取りたくても、出来なくなっていると言ったよな」
「今はね。でも、アボだって荒療治で復活したのなら、イデも何かの荒療治で復活するかもよ」
「少なくとも北極には行かせられないな。俺の復活はイデには内緒だからな。香奈、頼んだぞ」
「お口にチャックね。でも彼、テレパシー能力はあるみたいよ」
「子供たちがいないことだし、何もかも忘れる一晩を過ごせばいいんじゃないか」
「イヅと以心伝心みたいだから、どうかしら、もう知れていると思うの」
「ここと、黄泉とでもか」
「そうよ、真太が言っていたけど、イヅはイデが黄泉からこっちに来るのが分かったって言ったのよ」
「じゃぁ、あいつはきっと戻ってきたら、北極に漬かりに行くだろうな、ううっ」
「アボ、幸せはみんなで分け合わないと、ねっ」
一方、千佳由佳を追いかけて、霊獣界の黄泉に向かい、千佳由佳の気配で、その片隅というところにたどり着いた。真太とイデ、
「ええっと、ここを通った感じだけど、他の奴の気配が邪魔しているな。隠しているつもりだな、そうはいくものか」
「ふふん、黄泉にしては魔界の奴らの気配に似ている」
「そうだな。こういう片隅ってところは、淀んでいるな。清浄な気配が無くなっている。これじゃあ天国とは言えないな。人間界だけでなくここいらも魔界の奴が入り込んでいる。どうなっているんだろ。霊獣界ってのは」
真太はいつもの様に罰当たり的意見をぶちながら、千佳由佳を探した。まがまがしい気配の中に、千佳由佳の気配を見つけた。
「あ、こっちだな」
急ぎ千佳由佳の所へ行く真太である。急ぐべきだと感じた。
見つけた。かなり遠方の見たこともない形態の霊魂たちに混じっている。どこかへ急いで移動しているらしい。
「おおい、千佳由佳どこに行く気だ」
真太が大声で呼ぶと、二人は立ち止まって振り向いた。周りの妙な形態の奴らも驚いて振り向いた。
『真太―、来てくれたの、良かった』
『あ、イデだ』
テレパシーで真太に言いながら、千佳由佳は戻ろうとしているようだ。そして由佳はじっとイデを見ている。すると、周りの妙な形態の霊魂が千佳由佳をつかんで真太の方に行かせまいとしたが、何かに弾かれたように遠くへ飛んで行ってしまった。どうやら、イデが弾いたようだ。
真太は二人の所へ走りながら、横にいるイデを見た。
「やったね、イデ。あいつらが何か知っているようだね」
「魔人の変化した奴らだ。人ではなくなってきている」
千佳由佳の側まで行くと、由佳は泣き出した。
「真太―、怖かったよう」
千佳は気丈に、
「ちょっと助けが遅い感じしたけど、結果オーライだね。助かって良かった。イデ、ありがとう。弾き飛ばしたんでしょ」
「ああ、どういたしまして。まだ、魔物に成り切れていないから、御神刀だと、元気になりそうだったからね」
真太はイデの言ったことに疑問を感じて、
「どういう事?」
と聞くと、
「その御神刀は霊力で人の病や怪我を治すからね。道を誤った魔人も人の内だから、変化を治してしまうかもしれない」
なおも、真太は疑問を感じた。
「治ったらダメな訳?」
「魔物にそそのかされた奴が元の形態になったら、そそのかされていない奴との区別がつかなくなって、大神様が困るんじゃないかな」
真太はそれを聞いてまた、不敬罪的なことを言ってしまう。
「監督が行き届いていないんだから、困っても仕方ないんじゃないかな。魔物にそそのかされたっていう事は、魔物がここに来たって事と違うか?」
「そういう事さ、ははは。困らせとけってか」
「・・・長居は千佳由佳には危険だな、さっさと戻った方がよさそうだ」
真太が瞬間移動しようとすると、千佳が、
「ちょっと待って、あたし達、ママが飲んだ変な薬でここと繋がっているらしいよ。それを浄化しないと、すぐまた連れて来られるらしいよ。そういう事周りの奴が言っていたけど」
「ええっ、どうする、それじゃあ」
真太が困惑気味になると、イデは、
「真太やお嬢さんたちは香奈さんと魂が繋がっているから、魔界の薬でこっちに来させられている。香奈さんは意志の力で関係を切ったから、香奈さんの結界を張るやり方で、切れるんじゃないかと思うけど」
「ふうん、じゃあ戻ったら、ママが結界を張ればいいってことだね」
「おそらくね」
千佳は、
「でもイデ、はっきり断言しないよね、またさらわれるのは嫌だな」
真太は、
「つまり、千佳はあいつらをやっちまえって言っている訳?でも、ここ一応大神様の縄張りだけど、殺生とかできるかな」
イデは笑いながら、
「出来るわけ無いだろ。千佳ちゃんは意外と過激な人だね。でも無理だから、もう帰ろうよ」




