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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第3章エルフの里編
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収束

「なんだ・・なんだその力は!」


 "暴食の王"の黒き極光を纏ったアワリティアが叫ぶ。


「さあな。強奪してみたらどうだ?」


 俺はそう言って腕を振るい、白き極光を放った。


「たとえどんな力だろうと、"暴食"の力が負けるか!」


 アワリティアは黒き極光を俺の放った白き極光に向けて放った。

 全てを喰い荒らす()()黒き極光は、白き極光に触れたところから()()()()()()()()()()()()()()()()()


 白き極光はそれだけに留まらず、アワリティアの左腕にも触れ、アワリティアの左腕は消失した。

 更に、その左腕は再生する事もなかった。


「馬鹿な!馬鹿な馬鹿なぁ!」


「じゃあな。強欲の王アワリティア」


 俺は白き極光をアワリティアに放った。

 狼狽するアワリティアを白き極光は簡単に呑み込み、その存在を消し去った。

 そしてカラーン、と中心に漆黒の残る純白の宝玉が地面に落ちた。


 ヤマトからはこの"魂の宝玉"を集めるように言われている。

 なんとか白き極光を制御し、この"宝玉"だけは消さない事に成功したようだ。


 宝玉を拾うが、今回は何のメッセージも無かった。

 やはり傲慢の王スペルビアを倒すまでは新たにわかる事は無いのかもしれない。

 俺は宝玉を無限収納にしまった。

 これで"魂の宝玉"は2つだ。

 残り4つ集めなければならない。


 "鎧"を解除すると、途端に激痛の波が襲ってきた。

 そういえば、右足の骨がバキバキに折れているのだった。

 戦闘に集中していて気が付かなかった。

 よくよく考えると、この世界に来てからまともな怪我を負ったのはこれが初めてだった。


 それと同時に、"暴食の王(グラトニー)"が帰ってきたのを感じた。

 アワリティアが死に、"所有権"が戻ったのだろう。


 周囲の木々や草、"魔王の鎧(サタンメイル)"の余波にあたったものは全て消え失せてしまった。

 この周囲だけが大きな広場になってしまっている。


 この力はやはり危険すぎる。

 もう少ししっかりと訓練して制御の練習をした方が良さそうだ。

 かと言って地下訓練場でもこの力を使うわけにはいかない。

 いっそ次からこの場所で訓練をしてしまおうか。

 どうせ不毛地帯となってしまったわけだからな。


 俺は早くララに足を直して貰おうと思いながら、"エア・フライト"の魔法を使い、宙に浮きながらエルフの里へと戻った。


 里を襲っていた無数のアンデッド達はその姿を消していた。

 恐らくララ達がやってくれたのだろう。

 里の人々は全員が聖樹ユグドラシルのもとに集まっていた。


「サタン!」


 リーラが俺を見付けて誰よりも先に駆け寄ってきた。

 そして勢いそのままに俺に抱き付いてきた。


「サタンが私達を助けてくれたのね!」


「リーラ」


「なに?」


「痛いんだが」


 俺の右足はバキバキに折れたままだ、今の状態で抱き付かれると、大変な痛みを伴う。


「ディスター様!その足!」


 俺の右足の骨がバキバキに折れている事が分かったのか、ララがすぐさま駆け寄ってきた。

 エミリアとエルザも俺が怪我を負っている事に対して酷く驚いた様子だった。


「ひ、酷い・・ごめんなさい、あたし気付かなくて」


 そして俺に抱き付いていたリーラが顔を青ざめさせながら離れた。


「すぐに治します!"エクストラ・ヒール"」


 ララが治癒魔法を使ってくれたので、俺の右足が治っていった。

 これで普通に歩く事が出来る。


「助かった。ありがとうララ」


 俺は治癒魔法だけは何故か使えないからな。


「いえ、それは良いんですが・・」


「貴方がそんな怪我を負うだなんて。一体どんな敵だったの?」


 エミリアが心配そうに俺を見ながら言った。


「敵は七つの大罪である強欲の王だった。エルフ達を操っていた犯人がそいつだ」


「敵は倒したのね?」


「ああ。強欲の王は倒した。だが、同じく七つの大罪の嫉妬の王インウィディアは逃がしてしまった」


 詳しい事は後で話そう。

 今はそれより肝心な事がある。


「リーラ、聖樹ユグドラシルはどうだ?」


「ダメよ。魔力が全然足りないみたい」


 聞けば、聖樹ユグドラシルは足りない分の魔力をいま地脈から大量に吸い取っているらしい。

 このままでは地脈の魔力のバランスが変わり、大災害が起きてしまう。


「問題は、魔力不足なんだな?」


「うん、そうよ」


 リーラは俺の問いに対して頷いた。


「今は里のみんなが交代で魔力を聖樹に流し込んでいるの。でも、全然足りなくて」


「わかった。俺をユグドラシルのところへ連れて行ってくれ」


 聖樹ユグドラシルには里の者でなければ近づく事は許されない。

 先程俺がユグドラシルのもとに近付いたのは緊急事態であったからだ。

 いまユグドラシルに近づくには里の人間であるリーラの許しがいる。


「うん、もちろんよ。今すぐ行きましょう」


 俺はリーラに案内され、聖樹ユグドラシルのもとを訪れた。

 聖樹ユグドラシルの幹では何人ものエルフ達が手をつき、魔力を送り込んでいた。


「近くにいるエルフ達を離れさせてくれ」


「わかったわ!」


 リーラが声掛けを行い、エルフ達が離れていった。


 何度もアワリティアを"暴食の王"で喰った為、俺の魔力は9割ほどまで貯まっていた。

 俺はその莫大な魔力を一気に解放し、聖樹ユグドラシルの幹に手をついた。


 一気に魔力がユグドラシルに持っていかれた。

 これは、まずい。

 このままでは俺の中の魔力を全て持っていかれてしまう。

 そんな予感があった。


 俺は"暴食の王(グラトニー)"を解放し、空気中の魔力を喰い漁り始めた。

 この場所は魔力が非常に濃いので、かなりの魔力をそれで回収する事ができる。

 しかし、それでもユグドラシルに持っていかれる魔力量の方が多い。


 残り魔力残量が3割を切った。

 頭上の枝葉を見ると、俺が魔力を送り始めた時よりもかなり葉に力が戻り、青々とし始めていた。


 これなら、もう少しだ。

 やり切ってやる。

 俺は最後の力を込めて魔力を全て注ぎ込んだ。


 俺の中にある全ての魔力を聖樹ユグドラシルに注ぎ込むと、俺の意識はだんだん遠くなっていった。


 生き生きと葉を茂らせた聖樹ユグドラシルと、俺に駆け寄ってくるリーラの姿を最後に、目の前が真っ暗になった。

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