結婚初夜〜エルザ〜
更に翌日。
ルーガート達を王都に送った後、エルザが街を案内してくれる事になった。
俺は正直ワクワクしていた。
この世界に来てすぐのシスの授業で、俺はアルメイダ公国の鍛治と酒以外のもう1つの"売り"を学んでいたからだ。
「見なさいララ。ディスターが珍しくはしゃいでるわよ」
「本当に好きですねぇ」
エミリアとララはそんな俺に苦笑気味であった。
普段娯楽が少ないのだ、これくらいの事は許されて然るべきだろう。
「・・そんなに楽しみにして貰えると、案内するこっちも嬉しい」
エルザはいつもの無表情ながらどこか楽しそうな様子で言った。
俺達はいまアルメイダの街をウルグ火山に向かって歩いている。
街はすっかり平穏を取り戻し、落ち着いた雰囲気となっていた。
アルメイダ公国の建物はウルグ火山付近に鉱脈が多数あるため、全体的に石造りが多い。
ウルグ火山には炎神ウルグがいるため魔力が普通の場所よりも濃く、希少な金属も出来やすいのだ。
エルザに案内されたのはこの国では珍しく木造の趣深い建物であった。
建物の正面には見覚えのある湯気のマークもあった。
「・・着いた。アルメイダ公国名物ウルグ火山温泉」
そう、アルメイダ公国のもう1つの売りとは温泉であった。
ここは火山地帯なので地下水が温められ、温泉が沸いてるのだ。
「・・ここは今日は私達の貸切。好きに使って良い」
「よし、早速行こう」
エントランスで靴を脱いで、靴箱に入れる。
この靴を脱ぐ、という習慣もこの国にヤマトが伝えたそうだ。
温泉ではそうするのが礼儀なのだと。
この国に温泉を伝えたのも彼であるので、この国の温泉文化にはヤマトが多大なる影響を与えている。
だが、温泉好きの彼が絶賛したという温泉だ。
これは大変楽しみであった。
受付のドワーフに挨拶をして男湯に向かう。
今日は貸切なので、全員が男湯に入るのだ。
さて我が家の人口温泉も中々の湯心地であったが、天然温泉は如何なものだろうか。
会話も早々に素早く服を脱いで温泉に向かう。
「そんなに焦らないでも温泉は逃げないわよ」
エミリアがやはり苦笑気味に言うがこればかりは仕方ない。
脱衣場から浴室への扉を開けると、ツンと鼻にくる匂いを感じた。
これは硫黄というものの匂いで、アルメイダ公国の温泉の特徴なのだそうだ。
この匂いが苦手な人もいると聞くが、俺は気にならないな。
「エミリア達はこの匂いは平気か?」
「私は大丈夫よ」
「私はちょっと苦手かもです」
「・・案外すぐに慣れるから安心していい」
掛け湯をしてから温泉に入る。
お湯は白濁しており、少しぬるりとしていた。
「うわ、本当にお湯がぬるぬるしているのね。身体に悪くないのかしら」
「・・このぬるぬるが身体に良い。肌がすべすべになる」
「お肌のためならこの匂いも我慢できますね」
そう言ってララはお湯を肌に塗りたくっていた。
極楽だ。
俺はこの身体の芯まで温まるような温泉特有の感覚が好きなのだ。
それがこの温泉はピカイチである。
我が家の人口温泉を超えている。
流石は天然温泉。この為にこの国に通うまである。
「それにしても・・」
エミリアはそう言ってエルザの胸を忌々しそうに見た。
エルザの胸はお湯に浮いていた。
対してエミリアの胸は浮くほど無いからな。
「何を食べたらこんなに大きくなるのかしら」
エミリアはエルザの後ろに回ってエルザの胸を揉みしだいた。
エミリアは、柔らかいわね・・などと言いながら難しい顔をしていた。
「・・えっち」
そう言って俺を見るエルザ。揉んでいるのはエミリアだ。俺を見るのは筋違いだろうに。
「エミリアも揉めば大きくなるかもしれませんよ?」
そう言ってララは笑顔でエミリアの胸を揉み始めた。
なんだこの状況。
「私はお母様も胸が小さかったから・・厳しいかも」
エミリアはエルザの胸を揉むのを止めると、深い溜息を吐いた。
そして鬱陶しそうに自分の胸に伸びるララの手を払う。
「・・ディスターに揉んで貰えば大きくなる」
「そうね。お願いしようかしら」
エミリアは自身の胸を突き出しながら俺を見た。
「・・また今度な」
今は温泉を楽しませてくれ。
「うう・・ディスターが私よりも温泉を取ったわ・・」
エミリアがよよよ、と涙を拭く仕草をした。
嘘泣きだろうに。
「ディスター様酷いです」
「・・さいてー」
ララとエルザがエミリアの味方についた。
女性陣が増えて俺の立場が弱くなってしまっていた。
結局その後エミリアの胸を揉んでやり、更にせがまれたララとエルザの胸も揉むというよくわからない状況になった。
温泉でゆっくり身体を温めた後は、これもヤマトが広めたという卓球というスポーツをやる。
俺とエミリア対エルザとララというダブルスだ。
卓球は横長のテーブルの中央にネットを置き、手くらいの大きさのラケットでボールを相手陣地に入れるスポーツだ。
これを温泉後にやるのがウルグ火山温泉の伝統なのだそうだ。
汗を流した後に汗を流すのは理解に苦しむが、伝統なのでは仕方ない。
俺達が本気で身体強化まで使って卓球をやってしまうとボールやらラケットやらテーブルやらが大変なことになってしまうので、あくまで身体強化魔法無しのお遊びとして行う。
「あっ!」
「チャンス!ここでスマッシュよ!」
「・・甘い」
エミリア渾身のスマッシュをエルザがカットしてボールの勢いを殺す。
卓球だが、エルザが半端じゃなく上手い。
上回転と下回転を器用に使い分け、ララのミスを見事にカバーしていた。
そして次に俺が打った球は見事にエルザの上を飛び越えていった。
「あー!負けちゃったじゃない!何してるのよディスター!」
「・・すまん」
俺は繊細な力加減というものが苦手なのだ。
こういったスポーツといったものは加減が難しく、全般的に苦手であった。
これが魔力を用いたものなら繊細な力加減だろうがなんだろうがお手の物なのだが。
「ディスター様にも意外な弱点がありましたね」
ララが楽しそうにくすくすと笑っていた。
「・・少しくらい弱点がある方がいい」
エルザも無表情ながらどこか楽しそうであった。
卓球が終わった後はこの温泉宿の料理に舌鼓をうつ。
アルメイダ公国の料理はその気質がよく出ているのか、どれも豪快な物が多く、そしてどれも酒によく合う。
「んー!どれも美味しいですねぇ!」
ララが頰に手を当てながら上機嫌で言った。
その顔は既に酒気で真っ赤に染まっている。
「本当ね。この国の料理は本当にお酒によく合うわ」
エミリアは持参したニホン酒をぐいぐい飲みながら言った。
エミリアはニホン酒が大の好物であった。
わざわざアルメイダ公国に来ているというのに特産品の火酒ではなくニホン酒を飲むあたり筋金入りである。
とはいえ、俺もニホン酒は好物なのでエミリアから注いで貰って飲んでいるのだが。
エルザもニホン酒をいたく気に入ったようで無表情でくぴくぴと飲んでいた。
その夜。
今日は結婚後初めてという事で、エルザの日となった。
エミリアとララは別室で就寝する。
「・・私、正直結婚できるなんて思ってなかった」
エルザは俺にぴったりとくっつきながら話し始めた。
「・・父上は、私の結婚相手に条件をつけていた」
「どんな条件だ?」
「・・父上よりも強いこと」
それは、たしかに厳しいだろう。
ザダはこの世界で出会った人族の中でもトップクラスに強い。それより強いとなると、それこそ位階序列上位者くらいしか居ないのではなかろうか。
「・・だから、ディスターが現れてくれてよかった」
そう言ってエルザは俺にキスをした。
エルザは無表情であったが、その頰は真っ赤に紅潮していた。
「・・ディスターが、私が吸血鬼に拐われそうになったところを助けてくれて。炎神ウルグ様の怒りを鎮めてくれて。あの時、私は貴方のような強く何にも揺るがない人と結婚したいと思った。そんな貴方がアルメイダの軍を止めてくれて。父上にも勝って。結婚しようと言ってくれて・・我が国を救ってくれて」
そう言って、エルザはニコリと微笑んだ。
「・・貴方に出会えて、私は幸せ。大好き」
エルザは笑いながら涙を流し、俺に抱きついてきた。
俺もエルザの背中に腕を回す。
エルザの涙を拭ってやり、キスを落とす。
そして、エルザをゆっくり押し倒した。




