勇者公女と結婚する
ここから第3章です!これからもどうぞよろしくお願いします!
その日。
アルメイダ城の玉座の間では宴が行われていた。
玉座の間は床や天井、壁など其処彼処が穴が開いていたり砕けたりと、ボロボロの様相であったが、そこにいる人間達の表情は明るかった。
わずか数日の支配ではあったが、それでも吸血鬼達による支配は彼らドワーフに絶望を与えるには十分だった。
それがヤマト王国の勇者達の働きにより吸血鬼達は打倒され、国は解放されたのだ。
だが、それでも一部には友や家族を失った者がいる。吸血鬼に血を吸われすぎたり、吸血鬼に無残にも殺されたドワーフ達がいたのだ。
だからこそザダは1つのイベントを企画した。
「・・それではこれより我が娘エルザ・ガザンとヤマト王国の勇者ディスアスター・サタン・ヤマトの結婚式を執り行う!」
ザダがそう声高々に宣言すると、ドワーフ達から歓声が上がった。
ザダは国が解放された時、2つの事を国民に発表した。
1つはもちろん吸血鬼打倒の報だ。
この知らせにアルメイダ公国の国民達は喜びを露わにした。
そしてもう1つは15年前の事件が魔族の策略だった事、ヤマト王国との国交を回復すること、そしてエルザと俺が結婚することだ。
この発表の前に、先んじてエミリアが通話のピアスでルーガート王に国交回復とエルザとの結婚について報告、両方について正式に許可を貰い、この知らせを国民にする事となった。
国交回復にあたって、細かい条件などは明日ルーガート王とノーチス宰相を俺が転移で連れてくる事になっている。
通話のピアスがあるお陰でこういった相談を密に行うことが出来、転移があるお陰で遠く離れた国との会談等も簡単に行う事ができるとエミリアは改めて喜んでいた。
さて、急遽執り行う事となった俺とエルザの結婚式である。
とはいえ、ドワーフ式の結婚式はヤマト王国の結婚式ほど準備が必要なものではなかった。
ドワーフ式の結婚式はこういった宴の席で新郎が火酒を一気飲みし、炎神ウルグに自分の言葉で誓いをするのだ。
「・・妻エルザ・ガザン。ディスアスター・サタン・ヤマトを一生支える事を炎神ウルグ様に誓う」
「・・よし!次はお前の番だディスター」
エルザが誓いの言葉を言うと、ザダは火酒の入った瓶を俺に手渡してきた。
俺はその火酒を一気に呷った。
その様子に再びドワーフ達から歓声が湧く。
「夫ディスアスター・サタン・ヤマト。エルザ・ガザンを一生愛し、守っていく事を炎神ウルグに誓う」
俺が誓いの言葉を言い切った瞬間。
俺の隣に白い炎の火柱が立ち昇った。
そしてその火柱から頭に白い炎を轟々と燃やしながら揺らめく炎神ウルグが現れた。
ドワーフ達からどよめきが起こった。
『その誓い、しかとこの炎神ウルグが聞き取った。2人の新たな門出を祝福しよう』
その瞬間、歓声が爆発した。
確かにめでたい事ではあるが、それにしてもドワーフ達のこの喜び様は異常である。
そう思ってエルザに耳元で聞いてみると。
「・・炎神ウルグ様が街に降りてくる事は滅多にない。結婚式の場で炎神ウルグ様に直接祝福される事は歴史に残るとても名誉なこと」
「・・なるほどな」
そんな話をしていると。
『ヤマト王国の勇者よ』
炎神ウルグが俺に話し掛けてきた。
「なんだ」
『言葉通り、見事魔族を打ち滅ぼしたようだな』
「ああ」
『貴様は約定を守った。だからこそ、この私も約定を守ろうぞ』
そう言って炎神ウルグはニヤリとした笑みを浮かべると、続いてエルザを見た。
『エルザ・ガザン。いや、エルザ・ヤマトよ』
「・・はい」
『奉納打ち。楽しみにしておるぞ』
「・・はい!」
エルザの返答を聞き、炎神ウルグは満足そうに笑い、ふわりとその姿を消した。
その夜。
玉座の間での宴は相変わらず続いていた。
ドワーフ達は酒好きで酒に強く、更に宴も大好きであるのでこういった宴は夜通し続くのが通例だそうだ。
俺は玉座の間を少し離れ、そこに隣接したテラスで夜風に当たっていた。
酒には弱いわけではないが、俺はドワーフではないので流石に何度も火酒を一気飲みさせられれば酒も回るというものだ。
俺と同じようにドワーフ達に酒を飲まされ続けたエミリアとララも既に城内の一室でダウンしている。
リシルは吸血鬼であるので、ドワーフ達の恐怖を呼び起こすかもしれないと王都の屋敷へと宴の前に帰っている。
リシルには何か土産を買っていってやろう。
エルザを怪我1つなくしっかり守ってくれたからな。
「・・ディスター」
「エルザか」
テラスから月を見ていると、俺の横にエルザがとことことやってきた。
そしてぴたりと俺にくっつくとその手に持った火酒を無表情に両手でくぴくぴと飲み始めた。
やはり彼女は小動物を連想させるな。
「・・ディスター。私頑張る」
彼女の戦いの事はリシルから聞いている。
彼女は敵の吸血鬼に対し、手も足も出なかったと聞いていた。
逆に言えば今まで戦闘に関わりのなかった少女がいきなり戦場に出て活躍しろという方が無理であろう。
だが、それでもエルザが俺の役に立ちたがっている事は知っている。
エルザは鍛治師だ。普通なら俺に武器を作って貰うなどで役に立つ事は出来るのだが、残念ながら俺は武器を使えない。
俺の力に耐えられる武器がないからだ。
それを知っているエルザはやはり戦闘で役に立とうとしているのだ。
「一緒に最高の"専用機"を作ろう」
「・・うん!」
エルザやザダという腕の良い鍛治師がおり、更に俺という魔法陣の技術に長けた魔導技術者がいるならば、この世界で最高の魔導鎧が出来るだろう。
そしてそれを使用するエルザも戦闘経験こそ無いものの、魔力量に関してはこの世界でもトップクラスに高い。
きっとなんとかなるだろう。
エルザの笑顔を見ながら、その日の夜は更けていった。




