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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第2章アルメイダ公国編
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開戦

 いよいよアルメイダ城に向かう事となった。

 メンバーは俺とエミリア、ララ、エルザ、リシル、ザダの6名だ。

 更に街はガゼルに守らせている。

 恐らく敵の首魁達は玉座の間に居ると思われる。

 それ以外は屋内になるので、エルザの魔導鎧は玉座の間で装着する手筈となっていた。

 城の前に護衛は居なかった。

 城正面の大きな木製の扉の前で、俺達は立ち止まった。


「全員準備はいいか」


 この扉を開けたら、戦闘が始まるであろう。

 全員が無言で頷いた。

 それを確認して、俺は扉を両手で引き開けた。


 扉を開けた先はだだっ広いエントランスホールであった。

 そこに吸血鬼達が所狭しと並んでいた。

 1人の吸血鬼がその中から1歩前に出てきた。


「ようこそ勇者御一行様。勇者はそのまま通せという命令を受けておりますのでどうぞお通りを。ですがそれ以外の方はここに残っていただきます」


 そんな吸血鬼の言葉に、俺達は顔を見合わせた。

 吸血鬼達は数えるのが面倒なほどの人数がここには居る。

 だが、()()()()()()()()()()()俺以外の人間を本当に止める気なのだろうか。

 そんな事を思っていると、ザダが1歩前に進み出た。


「・・ここは俺1人で十分だ。先に進め」


「なら遠慮なくお願いするわ」


 エミリアがそう言うと、吸血鬼達が全て巨大な結界に囲われた。

 吸血鬼達は焦って結界に魔法をぶつけるが、エミリアの結界はそんなものでは破れはしない。

 俺達は魔法の光が飛び交う結界を横目に見ながら、エントランスホールを抜けた。

 そしてエミリアはエントランスホールと俺たちの間に結界を張ると、吸血鬼達を囲っていた結界を解除した。


「・・あの王女も恐ろしい程の実力者だな。ディスターの嫁はアレくらいじゃないと務まらない訳か」


 ザダはそう言うと、吸血鬼達を見た。

 吸血鬼達は全員がザダを血走った目で睨み付けていた。

 ザダは魔力を急激に高めると、身体に"衝撃の鎧(ショックアーマー)"を纏った。


「・・さぁ、かかってこい」


 ◇


 エルザの案内で俺達は城内を進む。

 玉座の間までの道中に吸血鬼は居なかった。

 そしてひときわ大きな扉の前に到着した。

 この扉の向こうに莫大な、そして濃密で禍々しい"瘴気"の反応を感じる。

 間違いなくこの先に憤怒の王イラがいる。


「エルザ。魔導鎧を装備しろ」


 俺は無限収納から"汎用機"の魔導鎧を取り出した。


「・・わかった」


 エルザは胴体前面のハッチを開き、魔導鎧を装着した。魔導鎧がエルザの意思に従い駆動を開始する。


「いくぞ」


 扉を開くと、玉座に足を組んで座っている1人の男がいた。

 髪の毛先は赤色で、根元は黒色という特徴的な髪色をした男だ。

 その口元は不敵に歪んでおり、こちらを愉快そうに見ていた。

 奴が、憤怒の王イラ。


「漸く来たか勇者よ!待ちわびておったぞ!」


 憤怒の王イラは声を高々と上げた。


「だが、人数が多いな!ふむ、勇者を入れて5人か。どれ、お前たち」


 イラの呼び声と同時に3つの巨大な魔力反応が現れた。

 そして影の中からずぶずぶと3人の吸血鬼が現れた。

 一番左にいるのは2メートルを超える大柄な男。上半身には服を着ておらず、その鍛え抜かれた筋肉が隆起していた。

 真ん中にいるのは妖艶な女。胸元の大きくあいた漆黒のドレスを着ており、真っ赤な唇が映える。

 最後の男は漆黒の燕尾服に身を包んでいた。その腰には一振りの剣が差されている。


「残り4人を止めろ。俺様のところに通すな」


「「「はっ!」」」


 イラの命令を受け、3人の吸血鬼達がギラリとこちらを睨み付けた。


「私は真ん中の女を貰うわね」


「・・じゃあ私は燕尾服の男」


「ええ!じゃあ私があの筋肉ですか!?」


 凄く嫌そうにララが言った。

 たしかに今も何故か筋肉を強調するポーズを取っているあの男は暑苦しくて、俺も戦いたくない。


「じゃ、そういう事で」


「・・ララ。ふぁいと」


 エミリアとエルザ、そしてエルザの護衛であるリシルはさっさと自分の担当の吸血鬼のところへ歩いていった。


「うう・・。貧乏くじです」


 ララは凄く嫌そうに筋肉男のところへ歩いていった。

 これで各々の戦う相手は決まった。


 俺は未だ玉座に座り高いところから俺を見下ろす憤怒の王イラのもとへ歩み寄った。


「勇者よ。何故俺がこの国をこの手で滅ぼさなかったと思う」


 それは俺も思っていたことだ。

 ザダを下すほどの実力を持つこいつならば、その気になれば1人で容易にこの国を滅ぼせただろう。


「あのスペルビアが逃げ帰ったという今代の勇者というものと闘ってみたくてな。炎神の怒りを買い噴火させる策略が潰えてもこの国を滅ぼさなかったのだ。この城に居れば貴様は来るだろうからな」


 なるほど。

 こいつも自分の力を振るいたくて仕方がない人種というわけだ。

 イラはそう言うと、玉座から立ち上がった。


「さあ、やろうか!」

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