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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第2章アルメイダ公国編
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決戦準備

 翌朝。

 俺達はアルメイダ公国へ向かった。

 そこで俺達は驚きを得た。

 アルメイダ公国の、夜が明けていた。

 それはつまり、"束の間の闇夜(モメントダークナイト)"の魔法が解除された事に他ならない。

 更に驚くべき事に、城に囚われていた女衆達もある程度血を抜かれて解放されたという。

 もちろん女衆達の命に別状はない。

 良いところ軽い貧血といったところであった。

 それも、ララの治癒魔法で全快した。


 アルメイダ公国の中には、吸血鬼は1匹たりとも見つからなかった。

 それは街の中に入っても変わらず。

 まぁそれはそうだろう。

 吸血鬼は日光が苦手なのだから、外に出ているわけがない。

 では吸血鬼達はどこに消えてしまったのか。


「十中八九アルメイダ城でしょうね」


 エミリアはアルメイダ城を見据えながら言った。

 十中八九というか、それに間違いないだろう。

 アルメイダ城からは禍々しい魔力の反応が多数感じ取れた。

 前に訪れた時にはここまで多くの魔力反応はアルメイダ城内には感じなかった。

 つまり、散っていた吸血鬼達を一箇所に集めたわけだ。

 そして"束の間の闇夜(モメントダークナイト)"の魔法を解除したのは。

 それの制御に回していた魔法制御能力を、それ以外の何かに使うため。

 そしてそれは"戦闘"の為であろう事は容易に想像できた。

 恐らくではあるが、俺が来ている事を敵の首魁は既に知り得ているのではなかろうか。

 その上で言っているのだ。

 全力で迎え撃つと。

 いい度胸だ。ならばこちらも正面から打って出てやろう。


 ドワーフの男たちは家に帰した。

 これからの戦いに、彼らは付いてこれないだろう。


「エルザ。本当に付いてくるのか」


「・・ここで逃げるようではきっと貴方の妻は務まらないと思う。だから私は逃げない」


 本音を言えば、彼女は置いていきたかった。

 まだ"専用機"はない。彼女は"汎用機"でこの戦いに参加するつもりなのだ。

 "汎用機"では俺やザダレベルの身体強化魔法の使い手であれば装甲を破れてしまう。

 敵の首魁は俺が抑えるとはいえ、ほかにそのレベルの使い手が居ないとは限らない。

 むしろいる可能性が高いだろう。

 敵の首魁である憤怒の王イラがインウィディアと共に火山に行ったというならば、"束の間の闇夜"の使い手は憤怒の王イラではない。

 この魔法を使えるレベルの使い手だ、身体強化魔法もそれ相応であると考えるべきだろう。

 例え装甲を貫かれたとしても、障壁の魔道具がエルザを守る。

 しかし、それもザダレベルの空間干渉力があれば、破れてしまう。

 俺は、エルザを失いたくない。


「わかった。エルザも連れて行こう。だが、条件がある」


「・・条件?」


「リシル」


「はい、サタン様」


 俺の影からずぶずぶとリシルの本体が現れた。

 リシルは驚くエルザ達に微笑みを向けると、メイド服のスカートの裾をつまみ優雅に一礼した。


「リシル。今回は"本気"を出す事を許す。必ずこのエルザを守れ」


「かしこまりました、サタン様。失礼致します」


 そう言ってリシルは俺の首元に腕を回すと、かぷりと俺の首筋に噛み付いた。

 そしてごく、ごく、と喉を鳴らしてとても美味しそうに俺の血を飲んでいく。


「・・ああ。ありがとうございます、サタン様」


 そうして艶やかに微笑んで、熱い吐息を零すと、リシルはゆっくりと俺から離れた。

 かなりの血を飲まれた俺はふらりと身体が揺れるのを感じた。


「ララ。俺に"ハイ・ヒール"を」


「わかりました。"ハイ・ヒール"」


 ララの治癒魔法を受けて、貧血特有の症状が消えていくのを感じた。


「ありがとう、ララ」


「・・いえ。お力になれて嬉しいです」


 そう言ってララはふわりと微笑んだ。


「エルザ。このリシルは俺の従者だ。リシルから絶対に離れない事を約束できるなら、連れていく」


「・・わかった。約束する」


 リシルは無表情ながら決意の篭った瞳を俺に向け力強く頷いた。


「・・リシル。よろしく」


「はい、エルザ様。どうぞよろしくお願い致します」


 リシルならそれこそヤマトクラスでもない限り、どんな相手だろうがエルザを守り切ってくれるだろう。これでエルザの身は安心だ。


 後はこの国の住人達だ。

 今のところ魔力の反応は城の中からしか感じないが、万が一がある。念には念を入れよう。


 俺は魔力を高め、左手を掲げた。

 左の手の甲に魔法陣が浮かび上がり、その魔法陣に魔力が集中していく。


「ガゼル」


 俺がガゼルの名を呼ぶと光の柱が立ち上がり、そこから幼竜形態のガゼルの姿が現れた。

 俺は"暴食の王(グラトニー)"が大人しくなったお陰で、魔法陣無しでも己の使い魔を召喚できるようになっていた。


『何用だ、ディスターよ』


 幼竜が喋った事に再び驚くエルザ達。

 だが気にするまい。


「ガゼル。この国に危害を加えようとする者からこの国の住人達を守れ」


『ふむ。・・なるほど、敵は吸血鬼か。承知した』


 そう言ってガゼルは成竜形態に戻り、空高く飛び上がった。


「・・お前は竜の王すら従えるのか。それに、そこのリシルとやらも随分濃密な魔力を漂わせていやがる。ここにいる戦力だけで国と戦争できそうだな」


 ザダは苦笑混じりに言った。

 国と戦争するだけなら俺1人で十分だがな。


 とにかく、これで戦う準備は整った。

 いよいよ、アルメイダの城に攻め込もう。

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