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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第2章アルメイダ公国編
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決戦前夜

 俺達は万が一の事を考えてドワーフの男達と共にアルメイダ公国に戻った。

 俺達だけ先に戻ってアルメイダ軍が吸血鬼達に全滅させられていました、などという事があってはまずいからだ。

 更に言えばこの国は俺の嫁の国となったのだ。

 余計に気を遣わなければならない。


 もう夕方に差し掛かっていたので、今日は夜営をして明日の朝アルメイダ公国に入る事となった。

 夜営ではドワーフの男達が見張りに立っていてくれているので、少しは気が楽でいられた。

 とはいえ、リシルの影をいくつか呼び寄せて見張りをしてもらっている辺り、俺も警戒心が消えていないと言えた。


 俺はと言えば、エミリア達と共に豊富に買い込んできたガイアスの街の屋台の温かい食事をエルザやザダなどに振る舞っていた。


「・・そうか。15年前の事件も魔族の策略である可能性が高いのか」


「ああ。まだわからないがな。少なくとも事件の時姿を見られたヒューズ元伯爵に関しては当日は自領内に居たそうだ」


「それは複数の人間が確認しているとの事で信憑性は高いそうです」


 俺達は15年前の事件の事を話した。

 俺達の予想が正しければ、15年前の事件も今回のように魔族の策略であった可能性が高い。

 ライボルト・ヒューズは亡き父の無念を晴らしたいと言っていた。

 これで憤怒の王イラを問い詰め、15年前の事件が魔族による策略だという答えを聞けたとしたら、アルメイダ公国としても正式にそれを認めてくれるだろう。

 ならば、シーボルト・ヒューズの無念も少しは晴らせるのではないだろうか。


 俺達の話を聞いたザダ・ガザンはふん、と鼻を鳴らした。


「・・俺たちドワーフは15年前も今回も魔族にしてやられていたわけだ」


「・・それもこれで終わり。ディスターが魔族を倒してくれる」


 エルザは俺の事を勇者ではなくディスターと呼ぶようになっていた。

 なんでも、


「・・父上がディスターと呼ぶのに私がディスターと呼ばないのはおかしい」


 だそうだ。

 まぁ呼び方なぞ変な呼び名でない限り何でも良いのだが。


「・・15年前の事件が本当にあの貴族がやったのか、それとも魔族の策略だったのかなぞ、今となってはどうでも良い事だ」


 ヒューズ家からすればどうでもいい事では無いのだが、ドワーフ達からすれば確かにどうでも良いのだろう。

 ドワーフ達からすれば確かに"神の炎"は盗まれ。

 ヤマト王国はそれを認め。

 国交は断絶されたのだから。


「・・それに、俺の娘がヤマト王国の王族へ嫁ぐわけだ。国交を回復させない訳にはいくまいよ」


 そう。俺は正式にヤマト王国の王族へ婿入りしている。

 その俺の嫁になるというのだから、確かに国交を回復しない訳にはいかないだろう。

 図らずして目的の1つを達成できた事になる。

 これがエミリアが言っていた外交的にも、という意味だろう。


「・・お前は魔王を倒す為にこの世界に召喚されたそうだな」


 唐突にザダが話を切り出した。


「そうだ」


「・・魔王を倒せるのか」


「倒すさ」


 奴を倒さない限り、本当の意味での安息は生まれないだろう。

 そんなのは御免だ。


「・・魔王が倒されれば、幸せな未来が待っているんだな?」


「知らん。幸せな未来とやらを作るのは本人達の努力じゃないのか?」


「・・誤魔化すな。そういう話をしてるんじゃねぇ」


 そう言って俺を睨み付けてくるザダ。

 本当に目つきの悪い男だな。


「少なくとも。俺の身内くらいは幸せにしてやるつもりだ」


「・・その身内に、エルザは入ってるんだな?」


「当然だ」


「・・ならば良い」


 ザダは満足気に頷いた。


「・・エルザ」


「・・なに?」


 ザダは神妙な顔でエルザに向き直った。


「・・お前は本気でこの男を支える覚悟はあんのか?」


「・・無ければディスターの妻にはならない」


「・・この男を支えるってことはつまり、戦いの中に身を置くって事だ。その覚悟はあんのか?」


「・・ある」


「・・お前は戦闘は苦手なはずだろう。どうするつもりだ?」


 エルザも無表情ながら、その瞳には真剣な色が見て取れた。


「・・"専用機"を作る」


「・・よし。それでこそ俺の娘だ」


 エルザの答えに、ザダはやはり満足気な表情で頷いた。


「・・ディスター。今回の戦いではエルザはとりあえず"量産機"に乗らせる。このエルザは俺の固有魔法こそ受け継がなかったが、俺の魔力量だけは受け継いでんだ。戦力にはなるはずだ」


「その"専用機"と"量産機"ってのは何だ?」


 まぁ恐らく魔導鎧の事であろうことはわかるが。


「・・"量産機"というのはディスターも今日戦ったあの魔導鎧のこと。尖った性能はない代わりに、誰にでも使える性能になってる。対して"専用機"は特定の個人専用に設計された魔導鎧。私用に設計するなら、私は魔力量だけは父上譲りだから、かなりの大出力でも耐えられるはず。凶悪な武装も付けられる」


 なるほど。魔導鎧はあの"量産機"でもかなりの性能を誇っていた。

 あの魔導鎧がエルザ用に設計されるなら、かなりの戦力が期待できるだろう。

 エルザは魔力量だけならザダにも劣らないからな。エミリアよりも魔力量だけなら上だ。

 エルザはそうやって俺の力になるつもりなのだ。

 そこまでの覚悟をして、俺の妻となってくれたのだ。


「ならば、その設計には俺も加わろう。魔法陣を刻み込む技術なら恐らく、この世界の誰にも負けないはずだからな」


「・・そりゃ頼もしいな。どんな化物みたいな"専用機"が出来るか楽しみだ」


 そう言ってザダは声を出して笑った。


「・・とにかくまずは明日の戦いに勝つこと」


「ああ、そうだな」


 そうしてこの日の夜は更けていった。

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