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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第2章アルメイダ公国編
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勇者作戦会議をする

 ウルグ火山で炎神ウルグの怒りを鎮めた俺達は一度坑道に転移した。

 更にエミリアとララに連絡して、2人にもこちら側に一度来てもらう事にした。

 飛空挺の方は国境付近であえて待機してもらった。留守番にリシルの影を置いているので安心である。

 4人で集まると、再びシェルターを訪れた。

 炎神ウルグの怒りを鎮めた今ならもう少し詳しい話を聞けるかもしれない。


「・・勇者。早く行く」


 エルザが俺の腕に抱き付きながら引っ張ってきた。

 そうするとエルザのかなり大きな胸が腕に当たる。


「そう急かすな」


 それに、後ろでジト目を向けながらヒソヒソと話している2人の視線が痛い。


「・・絶対に仲良くなってますよ」


「・・怪しいわね」


 俺に疚しいことは無いんだがな。

 だが怪しまれているのならそれ相応の行動をしなければならない。


「エルザ。腕を離してくれ」


 そう言うとエルザは無表情ながら不本意そうに俺の腕を離した。

 なぜ無表情なのになんとなく表情を察せてしまうのかはやはり謎だが、後ろの嫁2人を心配させるわけにはいかないのだ。


「邪魔をしたかしら?」


「そうでもないさ」


 エミリアは悪びれた様子もなく言った。

 その後はエミリアとララが俺の両腕に抱き付き、それをエルザがジト目で見ているという謎の構図のままシェルターへの道を歩いた。


 シェルターに辿り着くと、やはりそこはドワーフ達でひしめき合っていた。

 さすがにエミリアとララはシェルターに入る前には腕から離れていた。

 扉を開けて俺達が入ってきた事に気が付いたユユ・リュヘルが前に躍り出てきた。


「ああ!エルザ・ガザン!先程は本当に申し訳ない事を言ってしまいました!炎神ウルグの怒りが静まっています!これでこの国は助かるかもしれません!貴女のお陰です!」


 ユユ・リュヘルは湧き上がった感情をエルザにぶつけるように捲し立てた。

 この場所でも加護を受けているドワーフ達は炎神ウルグの状態を把握できるのであろう。

 炎神ウルグの怒りを鎮めた事を既に彼女達は知っていた。


「・・吸血鬼達を倒して初めてこの国は救われる。吸血鬼達を倒すために少しでも情報が欲しい。協力して」


 エルザがそう言うと、人々から次々と情報が集まった。

 人々の表情は諦観に支配されていた先程訪れた時とは違い、僅かながら希望の色が見えていた。


 彼女達から集めた情報を整理するとこうだ。

 まず、吸血鬼達は統率された様子はあまりなく、アルメイダ城近くの住民を気のままに襲い、血を吸っているらしい。これは本当に血を吸われるだけで、命に別状はないとのこと。

 次に、"神の炎"は全て吸血鬼の王によって破壊されてしまったということ。

 これはエルザの事前の予想通りであった。

 来週の火の日の奉納打ちさえ成功させれば復活すると炎神ウルグにお墨付きを貰えているので、これは大丈夫であろう。

 次からが問題だ。

 定期的に城にドワーフの女達が連れて行かれ、その女達は戻ってこないらしい。

 更に、男達はガイアスの街を攻め滅ぼせばこの国を返すという吸血鬼の王との約定のもと、昨日の深夜に完全武装で既に出立したとのこと。

 到着予想は普通にいけば明日の朝だそうだ。

 行軍スピードが速いのは、自動車を使っているかららしい。

 これらを踏まえて、俺達は作戦会議をする事となった。

 一度シェルターを離れ、坑道にテーブルと椅子を出し、食事をとりながら話す。


「次の優先順位は何かしら」


「まずはガイアスの街に攻め込みに行ってる男達を止める事じゃないですか?」


「そうだな。ガイアスの街に攻め込んだ後ではもう遅い。例え止めても外交問題になるからな」


「・・それに、城に連れて行かれて戻ってこない女衆達も気になる」


 それには1つ心当たりがあった。


「この"束の間の闇夜(モメントダークナイト)"だが。一体誰が行使してるんだ?」


「それは、吸血鬼じゃないの?」


 エミリアが首を傾げながら言った。


「この魔法は辺り一帯を闇夜に閉ざす大魔法だが。さて、そんな大魔法をずっと維持し続ける魔力はどこから補充してるんだ?」


「・・そういう事ですか」


 ララは気付いたようだ。


「・・なに?」


「吸血鬼は人間の血から魔力を得ると言われています。ならば城に定期的に連れて行かれる人達はこの魔法を使っている吸血鬼に血を吸われているのではないですか?」


「恐らく正解だろうな」


「そんな、酷い・・」


 エミリアが口元を押さえながら言った。


「だが、吸血鬼は少量の血からも多量の魔力を生成できる。すぐさま命に関わるような量の血液は抜かれはしないだろう」


「そうなると、優先順位はやはり男達を止める事ですか?」


「そうなるな。ゼロニアの森に入る前に止めよう」


 それに、例え先に城に囚われている女衆達を救ったとしても、すぐに別の女衆が捕まるだけであろう。

 それでは解決にならない。

 やはり先に男達の行軍を止め、後顧の憂いを無くしてから城に攻め入るのだ。

 それが一番良いだろう。


「・・わかった。街の人たちはなるべくシェルターに隠れてやり過ごしてもらう」


 だが、シェルターもいずれは餌を求めた吸血鬼に見つかるだろう。

 奉納打ちの日にまではまだ時間があるとしても、今回の件の解決はやはり急いだ方が良いだろう。


「だが、エルザ。1つ問題がある」


「・・なに?」


「奉納打ちだが、"神の炎"は全て破壊されてしまったんだよな。ならどうやって奉納打ちをするんだ?」


 奉納打ちには"神の炎"が必要だったはずだ。

 だが、山頂の"神の炎"は壊されていたし、街にある"神の炎"も全て破壊されているのだ。


「・・父上が城にある万が一のための"神の炎"の隠し場所を知っている。城と父上さえ無事ならなんとかなる」


 なるほど。

 それを知っているからエルザは自信を持って奉納打ちをすると言い切れたのだ。


「そうか。頑張れよ」


「・・うん。頑張る」


 そう言ってエルザは微笑んだ。

 やはり普段無表情のエルザの笑みは破壊力がある。


「・・卑怯ですよね」


「・・卑怯ね」


 何やらまたエミリアとララがヒソヒソ話しているが、もう気にするまい。

 これで方針は決まった。

 次はガイアスの街へ向けて出兵した男達を止めるのだ。

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