勇者吸血鬼に遭遇する
「眼下で馬車が襲われているらしい。助けに行ってくる」
「わかったわ」
「手助けは必要ですか?」
「必要だったら連絡するさ」
急いで甲板に出た。
『お急ぎください。馬車の中の人族が引き摺り出されました』
『ああ!』
俺からも目視できた。
重厚な作りの馬車だ。しかし馬が居ないのに馬車が走っているのには疑問が残るが、今はそんなことを言っている場合ではない。
俺は飛空挺から飛び降りると、空中で身体強化の魔法を使い、轟音を立てて地面に着地した。
"暴食の王"が大人しくなってくれたお陰で俺の身体強化魔法は更に洗練されている。
馬車からは肌が白く、耳が尖った男が気を失った少女を抱え上げていた。
その周囲には死体が散乱していた。
「何者だ!」
耳の尖った男は突然現れた俺に警戒心を露わにしていた。
この男の特徴を、俺はよく知っていた。
俺は即座に通話のピアスを起動した。
『エミリア!この世界で"吸血鬼"は魔族か!?』
『"吸血鬼"?魔族かはわからないけれど、少なくとも人族ではないわ!』
『了解した!』
その男の特徴はうちのメイドと同じ"吸血鬼"そのものであった。
俺はとりあえず状況が読めないが、吸血鬼の男が味方という事はなかろうと、ひとまず吸血鬼の男を昏倒させ話を聞くことにした。
「何者だと聞いている!」
耳の尖った男はその鋭く尖った犬歯を剥き出しにして叫んだ。
「人族の勇者だ」
「勇者だと!?ちっ!」
吸血鬼の男は勇者という言葉を聞いた瞬間抱えていた少女を手放して踵を返して猛スピードで逃走を開始した。
俺は足に力を込め、ドンッ、という音を立てて地面を蹴ると、一瞬で男の前に立ちはだかった。
「ここは行き止まりだ」
そう言って俺は男の顔を蹴り飛ばした。
男の顔が蹴りをモロに受けて爆散する。
だが、間も無く再生を開始した。
「無駄だ!我ら吸血鬼は再生する!」
「知ってるよ」
何せうちの優秀なメイドが吸血鬼だからな。
「"重力の檻"」
俺は重力魔法を唱え、重力の檻を発生させ、吸血鬼の男の動きを奪った。
「が・・!くそ・・!」
吸血鬼の男は最初こそ抵抗していたが、すぐに地面に這い蹲ってしまった。
今吸血鬼の男には何十倍もの重力が掛かっている。俺が魔法を解除しない限り脱出は不可能であろう。
「かくなる・・上は・・!」
吸血鬼の男はそう言うと、急激に魔力が高まっていった。
間違いなく何かをするつもりだ。
「"暴食王の鎧"」
俺は即座に吸血鬼の男から距離を取り、"暴食王の鎧"を発動、地に倒れ伏している少女を"暴食王の鎧"で半球状に覆った。
次の瞬間、吸血鬼の男は大爆発を起こした。
火炎が俺や少女のところにまで襲い掛かってくるが、"暴食王の鎧"が火炎から身を守った。
『ちょっと!大丈夫!?』
エミリアから焦った様子で通信が来た。
辺り一面は焼け焦げており、森の木々にも轟々と燃え盛っているが、俺と少女は無事だ。
吸血鬼の男は完全に焼け焦げて絶命していた。
馬車とその周囲の死体に関しても完全に焼け焦げてしまっていた。
まぁ、概ね問題ないだろう。
『ああ、大丈夫だ。そちらは大丈夫か?』
『咄嗟に縛式を張ったから大丈夫よ!』
『そうか』
さすがはエミリアだ。
『今から飛空挺に帰投する』
俺は"暴食王の鎧"を解除し、少女を抱き上げた。
「"レビテーション"」
浮遊魔法を発動し、浮かび上がるとある程度上空にまで浮遊した。
「"ウォーターボール"」
燃え盛っている木々に特大の水の砲弾を落とした。これで火事の方は大丈夫であろう。
そうして俺は少女とともに飛空挺へと戻った。




