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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第2章アルメイダ公国編
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勇者15年前の事件の話を聞く

 次の日。

 ガイアス家の馬車がサタン邸に来た。

 俺はエミリアとララを連れてガイアス家の馬車に乗り、王都のガイアス伯爵邸へと向かった。

 ガイアス伯爵邸は南東に位置していた。

 俺たちは馬車を降り屋敷の中へと入った。

 ガイアス伯爵邸は思ったより豪奢な印象ではなかった。調度品などは飾られているが、それはあくまで嫌味にならない程度のもので、その質も素人の俺が見ても良いものだとわかる物ばかりであった。

 俺たちが侍女に案内された先は食堂であった。

 そこではガイアス伯爵と1人の男が待っていた。

 男は茶髪を短く刈り上げており、その茶色い瞳は鋭くこちらを捉えていた。


「やあ勇者殿にエミリア王女殿下、聖女ララ殿!よく来てくれた!」


 そう言ってガイアス伯爵は俺たち1人1人に握手を求めた。


「今日はいい牛肉が手に入ってな!細やかではあるが心づくしを用意させてもらった!ぜひ堪能して欲しい!」


 そうして俺たちは出てきた料理に舌鼓を打った。

 俺が一番気に入ったのはローストビーフという料理であった。これは本当に美味い。

 料理が美味いのは良いが、今のところ主にエミリアとガイアス伯爵が世間話をするのみだ。

 俺たちはこの場に世間話をしにきたわけではない。そう思っていると、ガイアス伯爵が話を切り出した。


「今日貴殿らを呼ばせて貰ったのはな。ここにおるライボルト・ヒューズが貴殿らに話があるというからだ」


 そうしてガイアスは茶髪の男を見た。


「俺はライボルト・ヒューズ。今日はご足労いただき感謝します。どうか俺の話を聞いては貰えませんか」


 そうして彼は15年前の事を語り始めた。

 発端はアルメイダ公国が抗議をしてきた事だったと言う。


「彼らは俺の父上、シーボルト・ヒューズが"神の炎"を自領に持ち出したいと訴えてきたと抗議をしてきました。ですが、父上は確かにその時別件でアルメイダ公国を訪れていましたが、本人はそんな訴えはしていないと言っていました」


 ライボルトは淡々と語った。


「そして事件は起こりました。アルメイダ公国内のある鍛冶場から神の炎が盗まれたのです。その事件の犯人は父上だと断定されました。何故ならアルメイダ公国は神の炎が盗まれた時、父上の姿を直接見たからだと言いました。ですが、それはあり得ません。何故なら、事件の時父上は自領のヒューズの街に居たからです」


 そう言って、ライボルトは拳を握りしめた。


「その時自領でお前の父の姿を見た者は居なかったのか?」


「はい、その日は父上はヒューズの街に繰り出していましたので、目撃証言は多数ありました。ですが、それは金を握らせて虚言を吐かせているだけだと取り合って貰えず、ヒューズ家は取り潰しとなりました」


「ふむ。その話をしたかったのか?」


 これだけなら、真実がどうであれ、既に終わってしまった話だ。不幸な話だとは思うが、俺たちに何か出来るとは思えないが。


「いえ、話はここからです。今回の魔族による王都の襲撃で姿を変える能力を持つ魔族が居たと聞きました。更に、15年前の事件で調査を担当し、沙汰を決定したのは第1王子のスーガードだったそうです。これを聞いて私は思いました。もしや15年前の事件はヤマト王国とアルメイダ公国の国交を断絶する為の策略だったのではないかと」


 なるほど、彼はこう言いたいわけだ。

 15年前の事件は姿を変えたあのインウィディアという魔族が引き起こし、スーガードが証拠を握り潰し国交断絶まで持っていったと。

 確かにエミリアもそこは疑問に思っていたらしい。

 普通ならそんな事件が起きてしまい、かつヤマト王国が非を認めたのであれば容疑者の首を差し出して謝罪するなり何なりすると。

 それを家を取り潰しにだけして、国交回復の努力を行わなかった。そこにスーガードが関わっているならば話は別だ。確かに可能性はあるだろう。


「それに、父上の死にも疑問があります。父上の死因は毒によるものでした。ですが父上は自殺するような人間ではありませんでした。姿を変える魔族は毒を使うそうですね。今回奴が化けていた宮廷魔法師の方も自室で毒殺されているのを発見されたと聞きました。ならば、父上も口封じで奴に毒殺されたのではないでしょうか」


 確かに今回インウィディアが化けていた宮廷魔法師は毒殺されている姿が自室で発見されたそうだ。彼の屋敷の住人達は宮廷魔法師の姿をとったインウィディアに自室には入らないように厳命されており、入れ替わってる事に全く気付けなかったらしい。

 奴は記憶や癖すらも模倣していると考えるべきであろう。ユーリの話では魔法も同じように使っていたというから、魔法すらも模倣できるのかもしれない。

 更に、インウィディアは式典当日は王都の結界の魔道具の警備を担当していたらしく、結界の魔道具は毒でドロドロに溶かされていた。


「・・私もそれは当時同じ疑問を抱いていた。シーボルトは自殺するような男ではなかった。奴は最後まで、自身の無実を訴えておった」


 ライボルトの意見に、ガイアス伯爵も同調した。

 ガイアス伯爵の瞳には悲しみがありありと浮かんでいた。


「妄言と切って捨てていただいても構いません。ですが、もし少しでもこの話を信じていただけるのでしたら、頼みがあります」


 そう言うと、ライボルトは俺の所まで歩み寄ってきて、そして膝をつくとひれ伏して頭を下げた。

 ヤマトが広めたというヤマト王国最大級の礼である土下座だ。


「もし姿を変える魔族に出会った時は、どうかこの話を問い詰めていただけませんか。父上の無実を証明したいのです。父上の無念を晴らしたいのです。どうか、よろしくお願いします」


「私からも頼む。報酬なら幾らでも払おう。シーボルトの謂れなき罪を晴らしてやりたいのだ」


 ガイアス伯爵も席を立ち、頭を下げた。


「・・頭を上げてくれ」


 俺はそう言って2人の頭を上げさせた。


「報酬はいらない。奴はエミリアの母親の仇でもあるしな。聞くことが一つ増えるだけの話だ」


「ありがとう、ございます」


「勇者殿、感謝する」


 ライボルトは涙を零しながら礼を言った。

 余程父親のことが無念なのだろう。あのインウィディアという魔族は許しておくわけにはいかない。

 今日はいい話が聞けた。来て良かったな。

 また1つ俺に戦う理由が増えた。


 こうして俺たちはガイアス伯爵邸を後にした。

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