式典直前
3の月2の週の休息日。
ついに式典の当日となった。
式典は2部構成だ。
第1部は勇者である俺を全国民に紹介する事。それにより魔族に負けない事をアピールするのだ。
そして第2部は俺達の結婚式。こちらも大々的に行う事で、異世界の人間である俺がヤマト王国に対して友好的であるとアピールするのだ。
今日のみは、普段は入場に許可が必要な内街に許可なく皆が入ることが出来る。
それにより普段は内街に入れない荒くれ者達も入ってくる為、貴族達は皆自身の邸宅に護衛を雇っていた。
ちなみに我が魔王邸には強力な番犬と番竜がいるので問題はない。
また、東街商業街から王城前庭までの大通りには屋台が立ち並び、様々な匂いが漂っていた。
王城の前庭には普段はない木造の高い壇が組まれ、更に映像の魔道具によりその壇の上の模様はピンと張った白い布に投影される事になっていた。
朝に一緒に王城に行ってから、俺はエミリアとララに会っていない。
何でも婚前にウエディングドレス姿を新郎に見られるのは縁起が悪いとかなんとか。まぁ彼女達のウエディングドレス姿は楽しみにしておこう。
「今日の式典では何が起こるかわからない!絶対に気を緩めず、厳戒態勢で臨むのだ!」
カーチス達近衛騎士団を始め、衛兵達は本日に向けて総動員で警備に当たっている。
「カーチス、よろしく頼む」
「勿論だ!妹の結婚式に野暮な邪魔などさせてたまるか!」
カーチスは頼もしい言葉をくれた。
式典当日になってもやはりスーガードは姿を現さない。このまま杞憂で終わると良いのだが、そんなに甘い事は無いだろう。
俺は次にルーガート王のもとを訪れた。
「今日の式が終われば貴様を息子と呼ぶ事になるわけだ」
「俺はお前を義父と呼ぶわけか」
俺がそう言うと、ルーガートはひとしきり笑い、そして表情を険しくした。
「・・来ると思うか?」
「来るだろうな」
誰が、とは言わなかった。
「余は今日で息子を1人得て息子を1人失うわけか」
ルーガートはふん、と鼻を鳴らした。
「躊躇するなよ、ディスアスター。奴が我らが敵だと知れた暁には息の根を止めろ。首さえ残れば他はどうでも構わん」
「首すら残らなかったら済まないな」
「その時はその時よ」
次に俺が訪れたのはユーリの所であった。
「"切り札"の準備は全て整っています」
「そうか」
ルーガートは信頼できる者として唯一ユーリには"切り札"の詳細を教え、その準備を一任していた。
「私は王国の最終兵器なんて大層に呼ばれていますが、その王国の護りを貴方に任せざるを得ないとは、心苦しいですよ」
「気にするな。お前はしっかり準備をしてくれたからな。お互いにやれる事をやれば良いんだ」
「そうですね」
ユーリはそう言うと、次は面白そうに笑った。
「でも、今回の"切り札"は是非見てみたいものですね。何せ世紀の大魔法ですから」
「使わないに越した事は無いがな」
"切り札"を使う時は、俺がどうにもならないと判断した時だ。その時王都がどうなるかは分かったものではない。
「ええ、ですので諸々度外視した興味だけで話すなら、ですよ」
使わなかったらぜひその魔法を教えて下さいね、とユーリは言った。
最後に、俺は王城の窓から外の前庭を見た。
前庭には人が所狭しと詰め掛けており、誰もが式典の開始を今か今かと待っていた。
いよいよ式典が、始まる。




