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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第1章ヤマト王国編
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魔王パーティを組む

「おめでとうララ」


 戦いの模様を見守っていたエミリアが訓練場の中に入ってきながら言った。


「ありがとうエミリア」


 嬉しそうに微笑むララ。

 ララと分裂したオウラはそんなララを見てにこりと笑った後、光の玉となってララのペンダントに宿った。


「それじゃ、行くか」


 ◇


「決まったか」


 先程同様執務室のデスクに座るマチスはそう問うた。


「ああ。俺たちは今回の依頼はここにいる3人で挑む」


「つまりパーティだな。パーティ名は何にする」


 パーティ名は既に考えてある。


「パーティ名は"サタン"で頼む」


 向こうの世界でサタンとは魔王を指す。

 この世界で堂々と魔王を名乗るわけにはいかないが、これくらいなら許されるだろう。


「サタンだな。了解した。お前たちの健闘を祈る」


 そうして俺たちは王城の飛空挺発着場へ向かい、飛空挺に乗ってゼロニア草原に繰り出した。


 ゼロニア草原は酷い有様であった。

 あちらこちらに地竜が歩き回っている。これでは飛空挺も着陸させられない。


「いっそ飛び降りるか」


「え?」


 操船していたリシルの影を俺の影にしまい、エミリアとララをそれぞれ腕で抱く。

 そして、飛空挺を無限収納に収納した。

 当然足場が無くなった俺たちは自由落下を始める。


「きゃああああ!?」


「いやああああ!?」


「はははは!」


 エミリアとララが悲鳴を上げてるが気にするまい。

 地面が近付いてくる。


「全力で身体強化魔法を掛けろ!」


「あんた後でぶっ殺す!」


「この恨み忘れません!」


 そう言って身体強化をかける2人。

 なんだ、喋る余裕があるじゃないか。

 エミリアとララを抱えたまま地面にズダンッ、と着地した。

 その音に反応して、草原を歩いていた地竜達が一斉にこちらを向いた。


「さあ、やるか」


「・・死ぬかと思った」


「・・生きてて良かったです」


 エミリアもララも涙目になっていた。

 これは後が怖そうだ。

 そんな事を考えながら、黒き極光の鎧を身に纏った。


 ◇


「"黒灼の槍"」


 槍を投擲し、最後の地竜を貫いた。

 草原には多数の地竜が地に伏していた。


「これで最後か」


 無限収納を所持しているエミリアと手分けして、地竜の死体を回収していく。

 これだけ多いと地竜の価値が値崩れしそうだ。


「もう!本当に死ぬかと思ったんだからね!」


「反省してください!」


 先程の突然の自由落下について怒る2人。

 エミリアは俺の脳天にチョップをかまし、ララは俺をじとーっとした目で睨んでくる。


「すまん。次から気を付ける」


 次はちゃんとやる前に言ってからやろう。


「・・次があるんですか?」


「それは状況次第だな」


 着陸できない状況ならああするのが手っ取り早いからな。

 そんな俺に、ララとエミリアは深い溜息を吐いた。


「さて、草原の地竜は全て狩った訳だが。森の方に原因を調査しにいくか」


 地竜が森から逃げ出した原因が森の中にあるなら、それを調査、場合によっては排除しなければならない。


「ええ、行きましょう」


「ゼロニアの森に入るなんて、緊張しますね」


 普段は地竜の巣だからな。地竜を狩るつもりが無ければ入る機会は無いだろう。


 俺たちは深いゼロニアの森に足を踏み入れた。

 森の中は濃い魔力に満ちていた。

 前に訪れた時にはこんなに魔力は濃くなかったと思ったが。

 更に、森は静寂に包まれていた。

 獣の鳴き声や、小鳥の囀りすら聞こえない。


「これは異常ね。生き物の気配がしないわ」


「不気味ですね・・」


 聞こえるのは俺たちの声と、足音のみだ。彼女達の息遣いすら聞こえる。

 しばらく歩いていると、バキバキと木を倒す音が近付いてきた。

 その音はどんどん近付いてきている。


「気を付けろ。何かくるぞ」


 そして姿を現したのは、地竜であった。しかしその眼には濁った光があり、鱗は灼け爛れ、所々腐敗していた。

 辺り一帯に腐敗臭が漂う。


「何よこれ!」


「地竜がアンデット化してます!"ピュリフィケーション"」


 ララが浄化魔法を放つが、アンデット化した地竜に効いた様子はなかった。


「"黒灼大砲"」


 黒い極光が迸り、アンデット化した地竜に大穴が開くと、その地竜は倒れ伏した。


「"精霊化"」


 ララは精霊化すると、アンデット化した地竜に近付いた。


「"ピュリフィケーション"」


 精霊化して強力になった浄化魔法によって、アンデット化した地竜の身体は浄化されていった。

 その後もアンデット化した地竜に襲われながら、俺達は森の奥へと進んだ。

 奥に進むにつれて明らかに魔力が濃くなっていっている。これだけ魔力が濃ければ、地竜の死体がアンデット化してしまうのもわかる。

 そして俺達は魔力が一際濃い、拓けた場所に出た。

 そこには木は無く、500メートル程の巨大なクレーターが出来ていた。


「ここで何があったの?」


「わからない。だがこれは強力な魔法の後だな」


 濃厚な魔力の残滓が感じられる。

 この魔法が今回の事態の直接的な原因かもしれない。だが、当事者はもういないように感じた。


 その後もクレーターの周囲を探したが、何も手掛かりは見つからなかった。

 魔力の感知範囲を最大にしてアンデット化した地竜も残っていないか探したが、見つける事は出来なかった。

 夕方にも差し掛かったいたし、これ以上の調査は不要と判断、俺達は帰路についた。


 冒険者ギルドに戻った俺達は冒険者ギルド本部長のマチスに顛末を報告した。


「そうか。やはり森の奥で何かが起きた訳か」


「ああ。もう居ないだろうが、万が一でアンデット化した地竜が出てくる可能性もある」


「しばらくは注意奮起をするしか無いな」


 そう言ってマチスは溜息を吐いた。


「地竜を売りたいんだが、どこに素材を出せばいい」


「リサに声を掛けて訓練場の方で出してくれ。査定に時間が掛かるだろうから、精算はまた今度で頼む」


「わかった」


 そうして俺たちが執務室を出ようとすると、マチスが、


「まぁ、待て」


 と、俺達を呼び止めた。


「今回の件で国と冒険者ギルド両方から推薦する。今日からエミリア王女殿下と勇者はSランク、聖女はBランクだ」


「了解した」


 昇格した俺たちはそのまま兎人族の受付嬢リサに声を掛けて訓練場に向かった。

 どさどさと地竜を出していった俺たちであったが、最初はニコニコしていたリサは最後の方では口をあんぐりと開けて呆けてしまっていた。


「計算が終了しましたらご連絡に伺います」


 そう言うリサを残し、俺達は魔王邸へと帰宅した。

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