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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第1章ヤマト王国編
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魔王技術を伝える

 3の月4の週土の日。

 昼過ぎにユーリが魔王邸を訪ねてきた。


「やぁ。来ましたよ」


「よく来た」


 ユーリと握手する。


「今日は魔道具の技術を魔道具ギルドに提供してくれるとの事で。楽しみですね」


 そう、今日はユーリと魔道具ギルドを訪れる予定なのだ。

 1つは元々技術提供する予定であった通話のピアス。

 そしてもう1つは"切り札"の準備である。


「ああ。楽しみにしててくれ」


 何せこの世界、通信の魔道具は大型の物しか存在しない。それでは特定の場所に固定して使うしか利用できないであろう。

 通話のピアス、すなわち通信の魔道具の小型化はさぞ大きな波紋を呼ぶはずだ。


「それでは魔道具ギルドにご案内します」


「行ってくる」


「いってらっしゃいませ」


 リシルが見送りに来てくれた。

 ちなみにエミリアとララは今日はウェディングドレスの採寸と選定をしに服飾屋に出向いている。

 魔道具ギルドは東街、商業街の一角にあった。

 3階建の立派な煉瓦造りの建物だ。

 ユーリが受付で用件を伝えると、内部の隅にあった魔導エレベーターで白衣を着た茶髪に白髪混じりの老年の人物が降りてきた。


「貴殿が勇者殿か!私はこの魔道具ギルド本部の本部長をしているユニ・ガイアスだ!どうぞよろしく!」


「ああ、ディスアスター・サタンだ。よろしく頼む」


 ユニと握手をする。


「ささ、早く魔道具の話をしよう。こちらへ」


 ユニに案内され、魔導エレベーターに乗る。

 この世界では魔導エレベーターに乗るのは初めてだ。

 向こうの世界では高層の建物には必ず魔導エレベーターが付いていたものだが。

 魔道エレベーターで降りた先は最上階であった。

 そのまま廊下を歩き、一番奥にあった本部長の執務室に案内される。

 俺とユーリは部屋の中央にあるソファに腰掛けた。


「コーヒーは飲むかね?」


「私はコーヒーは遠慮しておきます」


 ユーリが首を横に振りながら言った。


「俺は貰おう」


 コーヒーは好きだ。何か作業をしている時に飲むと捗るからな。


「ミルクと砂糖は?」


「ミルクだけでいい」


 ミルクの入ったコーヒーを手渡され、さっそくコーヒーに口を付ける。


「美味いな」


「ははは。我が魔道具ギルドはコーヒーが美味い事で有名だぞ」


「ならば喫茶店を始めれば良い」


「冗談が上手いな」


 ユニが対面のソファに腰掛けた。


「さて、商談をしよう。まずは物を見せてくれるかな」


「ああ、これだ」


 1対の通話のピアスを無限収納から取り出した。

 ユニは首を傾げた。

 当然だろう。この世界にはまだこれほどの小ささの物を魔道具にする技術は普及していない。


「これは通話のピアスだ」


「通話のピアスだと・・馬鹿な、これほど小さな物が魔道具だと言うのか」


「そうだ。試しに使ってみると良い。仕組みだが、片方のピアスに魔力を流すともう片方のピアスと会話ができるようになっている」

 

「さっそく使ってみましょう!私が外に出ます」


 ユーリは興奮した様子で片方のピアスを持つと、部屋を飛び出した。

 すかさずユニがもう片方のピアスを持った。

 そしてしばらく通話のピアスの試運転をする2人。

 会話の内容は魔力を流した本人しか聞き取れないので、何を話しているのかはわからないが、とりあえず興奮してる様子なのはよく伝わる。

 しばらくするとユーリが部屋の中に戻ってきた。


「これは・・技術革命が起きますね。これがあるだけで、どれだけの物に影響があるか」


 ユーリは戦慄した様子で言った。


「これを、この技術を提供して貰えるのか」


 ユニは重々しく言った。


「その通りだ。俺から提供するのはこの通話のピアスの作り方と、魔法陣の小型化の技術の2つだ。さて、いくら出す?」


 挑発的な笑みを浮かべて言った。

 魔族との戦争において通信技術の向上は大きな力となるだろう。

 本音を言えばこの技術提供ではそんなに稼ぐ気は無かったりする。

 なので向こうの言い値で売ろうかな、ぐらいの気持ちである。


「通話のピアスは言うに及ばず、魔法陣の小型化の技術も一体どれだけの魔道具に影響を与えるか。生半可な金額ではいかんな」


 そう言ってユニは腕を組んで黙り込んだ。


「・・通話のピアスに関しては売り上げの2割を、魔法陣の小型化の技術に関しては白金貨100枚でどうかな」


 俺は驚愕した。

 まさかこの技術がそんな高額になるとは。

 向こうの世界では常識みたいなものだったのだが。

 いや、逆に常識になるような技術だからこそ価値が高いのか。


「わかった。それで頼む」


「よし!商談成立だ!」


 思わぬほどの臨時収入だ。これから稼ぐ機会が減りそうなので助かる。


「では技術を教えて貰う前にもう1つの話を先にしようか」


 そう言ってユニは()()を取り出した。


()()に細工をするんだったね。どうすればいいかな?」


 俺は無限収納からスクロールを取り出した。


「この魔法陣を刻んで欲しい」


 スクロールにはある魔法陣が描かれていた。


「ふむ。何に使うのかは知らないが、問題はなさそうだね。よし、請け負った!」


「ああ、よろしく頼む」


 これで"切り札"の準備がまた1つ進んだ。


「ではさっそくレクチャーの方頼むよ!」


「楽しみですね」


 ユニもユーリもそわそわとしていた。まるで欲しいおもちゃを目前にした子供のようだ。


「教えるのは構わないが、他の人間にも伝えるなら一度に教えた方が良いのではないか?」


「それもそうだね。移動しよう!」


 逸るユニに連れられ魔導エレベーターに乗り込む。

 次に降りたのは地下1階であった。

 地下1階は研究室のようで、端には壁一面に黒板があり、テーブルが多数規則正しく設置されている。

 そのテーブルにはユニと同じように白衣に身を包んだ人間が数多く点在していた。


「これより勇者殿による魔道具の新しい技術の講義を行う!しっかりと拝聴するように!」


 ユニが号令をかけると、点在していた白衣の人間達がわらわらと集まってきた。

 その瞳には皆一様に期待の色が浮かんでいる。


「それではまずは魔法陣の小型化について教えようと思う」


 周りを見回す。全員がしっかりと俺を見ていた。


「どうやって魔法陣を小型化するのか。誰かわかるか?」


 1人の白衣の人間が挙手した。


「最初から小さく魔法陣を描けば良いのでは?」


 周囲の人間も同調するように頷いた。

 なるほど。この考えがこの世界には蔓延しているわけか。


「それだと複雑な魔法陣を描こうとしたらある程度までの小型化が限度になるな。さて正解だが」


 そう言って俺は空中にある程度の大きさで魔力で魔法陣を描いた。

 すると、俺の声が大きくなった。


「これは拡声の魔法陣だが。この魔法陣に、小型化の魔法陣で小型化の魔法を掛けるんだ」


 拡声の魔法陣に小型化の魔法陣を掛けると、拡声の魔法陣がしゅるしゅる、と小さくなった。

 それでも問題なく拡声の魔法陣は機能している。


「すると、このように小型化をした上で魔法陣の機能を損なわずに発動する事が出来る訳だ」


「なるほど・・確かにそれは盲点であった」


 ユニが唸った。


「これはそんなに難しい技術ではない。コツさえ覚えればすぐにでも使えるだろう。そしてその汎用性は非常に高い」


 俺はまだ何の付与もしていないクリスタルのピアスを無限収納から取り出した。


「通話のピアスを作成する際には小型化の技術を使用する。付与する魔法は"集音""発声""隠蔽""送信"受信""同期"の6つだ」


 俺はそれらの魔法陣を空中に描き、まとめて小型化の魔法陣により縮小すると、クリスタルのピアスに付与した。


「ユーリ。ここにもう1つクリスタルのピアスがある。やってみてくれ」


「わかりました」


 ユーリが俺がした事と同じように魔力で空中に魔法陣を描き、縮小するとクリスタルのピアスに魔法陣を付与した。


「これで通話のピアス完成だ。わかったか?」


「ああ、もちろんだとも。皆も理解できたな?」


 白衣の人間達も熱のこもった瞳をしながら頷いた。


「さて、これから忙しくなるぞ!何せ既存の魔道具全てに流用できる技術だからな!」


 これでこの世界の魔道具は飛躍的に進歩するだろう。

 俺は満足して笑った。

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