魔王家の夕食
湯浴みを終えた俺は研究室に来ていた。
王城で貰ってきた王都の詳細な地図を広げる。
王都は地図で見ると王城を中心として綺麗な円で構成されているのがわかる。
ヤマトはこの円形を利用して魔族の侵入を阻止する結界を展開したのだ。
さて、作業を開始しよう。
しばらく作業を進めていると、ノックが聞こえた。
どうぞ、と言うとシスが入ってきた。
「旦那様。お食事の用意が出来ました」
「ああ、わかった」
作業を中断し、席を立つ。
シスに案内され食堂に行くと、そこには既にエミリアとララ、そしてリシルの姿があった。
エミリアとララも寝間着姿であるので、湯浴みを終えたようだ。
我が家では従者も同じ席に座って同じ食事を取る。
貴族達は時間と場所を分けて食事を取るそうだが、彼女たちも大切な家族だ、当然同じように扱う。
俺とシスが席につくと、皆でいただきます、と言って食事を始めた。
この食べる前の挨拶は食事を作った人、そして食材を育てた人に対する感謝なのだそうだ。この挨拶もヤマトが広めたものらしい。
そういえば向こうの世界で彼と食事を取った際にも彼はそのような事を言っていた気がする。
いい挨拶だと思うので、我が家でも取り入れている次第だ。
俺の分の食事は他の人の約2倍ほど用意されている。昔から、と言うより"暴食の王"の魔法が発現してから俺はよく食べるようになった。
大変よく食べるので作っているこちらも気持ちが良いとはシスの談である。
我が家の、というよりこの国の主食は米だ。
米は何にでも合う。一度これを食べ始めてからは向こうの世界で米が欲しいと叫んでいたヤマトの気持ちがよく理解できた。
さて、俺はいつものようにリシルに白米のおかわりをよそってもらいながら、話を切り出した。
「ララとエミリアは既に知っているが、改めて話しておこうと思う」
そう言ってリシルとシスを見た。
「まず、俺の使い魔に風竜王のガゼルが追加された。ガゼルの食事は・・そう言えばあいつは何を食べるんだ?」
疑問に思ったのでリシルの影にガゼルを連れてきて貰った。
『我は基本肉食よ。この姿の時はそんなに量は食べないがな』
「肉は生で良いのか?」
『そうだな。焼いて食す時もあるが基本生だ』
「だそうだ。食事の量や回数は直接相談してくれ」
「かしこまりました」
『あいわかった』
さて、次の話題だ。
「次の話だが。敵に洗脳魔法を使う魔族がいる。もうエミリアとララは持っているが、使い魔も含め全員に精神系統魔法に対する防護の魔道具を渡すからそのつもりでいてくれ。また、身近な人物が操られている可能性もあるので、信用しすぎないように。リシルは洗脳魔法を受けた相手の識別はできるな?」
「はい、魔王さま」
「エミリアとララはあのシジマという男の感覚は覚えているか?」
「うーん、私は正直わからないかも」
「私も魔眼を使わないとわかりませんね」
ふむ。エミリアでも厳しいか。
まあ精神系統の魔法に馴染みが薄いなら仕方ない。
「そうか。とりあえず洗脳魔法にはブレイクマジックが効くから、怪しかったら使ってみるといい」
「ブレイクマジック?」
「知らない魔法ですね」
「・・そんなに難しい魔法じゃないから、食後に教えよう」
最悪使い捨ての魔道具でも用意すれば良いしな。
「さて、次に式典当日の動きだが・・」
こうして魔王一家の夜は更けていった。




