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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第1章ヤマト王国編
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魔王家を手に入れる

 それから3の週の土の日までは大きな問題もなく、穏やかに日々が過ぎ去っていった。

 エミリアとララは訓練に勤しんでいたが、俺は家が出来たと同時にやってみたいことがあったので、必要な物を購入し、その準備をしていた。


 そしていよいよ土の日。

 俺はエミリアとララより先に王城を出て、ホーキンスの元へ向かっていた。

 ホーキンスは前と同じく店の前に居た。


「よう!勇者の坊主!注文の品は出来ているぜ!中に入りな!」


 ホーキンスに連れられ前と同じようにテーブルにつく。

 間髪入れずにサラが緑茶を持ってきてくれた。


「ごゆっくり」


 サラはにこりと笑うとそのまま奥へと戻っていった。今日は親子ゲンカを見ずに済みそうだ。


「これが依頼の品だ」


 自分の分の緑茶をぐいっと一息に飲み干したホーキンスは2つのペンダントを取り出した。

 それはとても丁寧に細工のされたペンダントであった。デザインは前に描いてもらった物を、更に洗練したようなイメージだった。それぞれに金色の魔石と、白色の魔石が5つずつ台座にハマっている。台座の部分は注文通りミスリル銀だった。

 文句の付け所のない、完璧な出来であった。


「久し振りにいい仕事したぜ。どうだ?」


「ああ。満足のいく素晴らしい出来だ」


「おう!そう言ってもらえると嬉しいね!」


 そして俺は白金貨4枚と、果実酒の瓶を取り出し、ホーキンスに渡した。この果実酒は先日王族の御用商人から買い付けた高級果実酒だ。


「これは礼の品だ。明日は休息日だろう。ぜひ飲んでくれ」


「気が利くね!頑張った甲斐があったってもんよ!ありがたく飲ませて貰うぜ!」


 がははと笑うホーキンス。

 俺はペンダントを受け取り無限収納にしまうと、ホーキンスの元を後にした。


 さて、いよいよ我が家のお披露目である。

 エミリアとララとは屋敷の前で待ち合わせをしている。

 エミリア達は既に屋敷の前で待っていた。


「あ、きたきた。お疲れ様、ディスター。ペンダントは受け取れた?」


「ああ。いい出来だった。後で見せる」


「そう、楽しみね」


 そう言って笑うエミリア。気に入って貰えると良いのだが。


「さあ、それでは屋敷に入りましょう!」


 わくわくした様子のララに言われ、無限収納から昨日修繕を終えた屋敷の新しい鍵を取り出す。

 屋敷には既にエミリア達が注文した家具も設置されているはずである。

 雑草が生え、荒れ放題であった庭も、雑草が綺麗に刈り取られ、更地になっていた。

 これならガーデニングなんかもできるはずである。

 門を開き、更地になった庭を通り、玄関に着く。

 玄関扉は新品の木製扉に付け替えられていた。

 鍵を差し込み鍵を開けると、両手で扉を引き、開いた。

 そこはエントランスホールであった。

 屋敷は2階建であるが、天井は高く作られており、このエントランスホールは2階部分の天井まで吹き抜けとなっており、訪れた人間に開放感を与えてくれる。

 正面には二階への階段が二股に分かれている。

 まず、2階から見ていく事になった。

 2階には各々の私室、寝室、そして俺の研究室がある。それぞれの部屋には注文しておいた家具がしっかりと置かれていた。

 また、2階部分には空き部屋がいくつもあるので、それはひとまず客室として同じ家具を入れておいた。更に2階部分中央の一番奥には家族が団欒できるよう、カーペットやソファの置かれた居間もある。

 屋敷全体として陽の光が自然と入るように窓が作られており、全体的に暖かな印象を受けた。


 次に見るのは1階部分だ。

 二股の階段を降り、玄関から正面に見て左手の通路を進むと、そこは広々とした食堂であった。

 ここには多くの人を招いた時に使えるホールも兼ねており、かなり広々とした造りになっている。

 食堂の奥にはこれまた広々としたキッチンがある。キッチンには最新の調理用魔道具が設置され、水や火も魔道具で自由に扱う事ができる。

 棚の中には調理器具も既に完備されていた。

 食堂の横にはこれまた大きな応接室もある。

 基本的にはここで客人を迎える事になるだろう。


 エントランスホールに戻り、今度は玄関から見て右手の通路を進む。

 するとまずあるのは脱衣室であり、こちらも人が訪れても良いようにとても広く作られている。

 そしてその先にあるのはこだわりの浴室である。

 浴室は広々としており、浴槽には何人でも同時に入る事が出来る。

 そして、最新の温泉用魔道具を設置している。

 なんでもヤマトは温泉が大好きで、この魔道具を開発していたのだとか。王城には初代王妃が温泉の匂いが苦手だったとかで設置されていなかったが、俺はこれを自宅に設置したのだ。

 温泉は王都の内街の共同浴場で設置しており、一度入って試してみて3人共虜になってしまったので、急遽魔道具を購入し設置する事となったのだ。今日の夜に入るのが楽しみである。


 さて、最後は地下室だ。

 これは元々無かったが、俺が修繕をするにあたって大工職人に注文した物である。

 大工職人の中には土魔法の使い手も居たので、地下室を増設する事が叶った。

 地下室には部屋は2つ。

 1つは転移用の部屋。外部からこっそり転移で帰宅する際にはこの部屋を使用するのだ。

 後でこの部屋に全受信用の汎用転移魔法陣を描く予定だ。

 もう1つは地下室の大部分。訓練スペースだ。

 俺はこの訓練スペースに城と同様の結界を設ける事に成功した。俺はこの数日の間に城の結界を張っている魔道具を解析させてもらい、複製を行なっていたのだ。

 流石に空間拡張の魔法まではヤマトの創造魔法ありきの設計だったので再現出来なかったが、死亡回避の魔法は再現出来た。

 これで王城と同様に訓練を行うことができる。


 以上が我が邸宅の全容である。

 全体的に満足のいくものであった。

 これであれば次期王女の邸宅としても格としては問題ないらしい。


「良い屋敷ね!良い買い物だったじゃない!」


「本当ですね。家具も良い品ばかりのようです。ベットなんてふかふかでした!」


 まぁララはベッドに思いっきり飛び込んでいたしな。


「そうだな、良い屋敷だ」


 俺としても満足である。

 さて、では次はペンダントだな。


「さっそく訓練場を使ってみよう」


「あ、もしかしてペンダントの実験ですか?」


「そうだ」


「楽しみね。ディスターが"強力な"って言うくらいの魔道具ですもの。またどんな魔道具になるのかしら」


 人聞きが悪いな。まぁこの魔道具には全力を注ぐ気であるが。

 収納からペンダントを取り出すと、2人が歓声を上げた。


「うわぁ!綺麗ね!」


「綺麗です!」


 2人はきゃっきゃと嬉しそうにはしゃいでいる。

 それを横目で見ながら付与を続けた。

 今回付与する魔法は計6つである。

 今回の魔道具はいわゆる"自律式"障壁発生装置である。

 まず魔法に対する障壁の魔法と物理に対する障壁の魔法で2つ。次にそれぞれ物理と魔法の対象への接近を察知する魔法で2つ。これが十字型にはめられた魔石計4つに付与される。更に中央の魔石にはこれらの魔法を正しい状況で使用できるよう、思考回路を魔法陣に組み込み。最後に台座に術式強化の魔法陣を組み込めば完成だ。


「つまり、自動で攻撃に対する物理障壁と魔法障壁を貼ってくれる魔道具って事?」


「そういうことだな」


 そう言って付与を終えたペンダントを2人に手渡す。


「試してみよう」


 身体強化の魔法は掛けずにペンダントを首から下げたエミリアに蹴りを飛ばす。するとガキンッという硬質な音を立ててエミリアから50センチほど手前で弾かれた。


「このように物理攻撃は弾かれる」


「ちょっと!やるならやるって先に言ってよ!」


「お前ならこれくらい反応できるだろ」


「そういう問題じゃないのよ!」


 そう言ってエミリアに頭に手刀を叩き込まれた。


「よし。では次に魔法の方を試そう」


 言ってララを見る。


「ララ。エミリアに初級魔法からぶつけてみてくれ」


「・・また私なのね、まぁいいけど」


 エミリアは溜息を吐いた。


「貴方の作った魔道具を疑うわけじゃないけれど、身体に薄く縛式を張ってもいいかしら」


「ああ。構わない」


「よし、ララ。いつでもどうぞ」


「行きます。"レイ"」


 ララが魔法を唱え、光の光線が放たれた。

 "レイ"は光属性の初級魔法だ。

 光属性は基本の4属性と違い、適性がないと全く使う事が出来ない。そして光属性は浄化魔法が使えるので、教会に所属する人間に多い。

 光線は先程同様展開された障壁によって弾かれた。

 問題無さそうだな。ならば威力を上げよう。


「次は中級魔法を使ってくれ」


「え?あ、はい。エミリア、良いですか?」


「良いわよ」


「行きます。"ホーリー・レイ"」


 先程の数倍の太さになった光線がエミリアを襲った。しかし、エミリアは障壁に守られている。

 障壁に弾かれた光線が壁のあちこちに激突した。


「大丈夫そうだな」


「ええ、凄いわねこれ」


 エミリアがペンダントを手で持ち上げながら言った。

 では仕上げだ。


「じゃあ、最後に上級魔法いってみようか」


「「え」」


 エミリアとララが同時に声を上げた。そして俺を見ながら呆れた様子を見せている。


「これ、上級魔法にも耐えられるの?」


「勿論だ。じゃないと作る意味が無いからな」


「本当に大丈夫なんですよね?」


「ああ。特級クラスは場合によってはわからんが、上級クラスなら問題なく防げる」


 そもそも俺たちレベルの戦闘で上級すら防げない障壁に意味があるとは思えないからな。

 作るからにはちゃんとした物を作るさ。


「よし。ディスターのやる事だものね。いちいち驚いてたらキリがないわ」


 この切り替えの早さは流石のエミリアである。


「じゃあ、最後上級、いきますよ?」


「ええ、いいわよ!ドンと来なさい!」


 上級は範囲も広い。俺も防御を固めないと怪我をするだろう。魔法陣を魔力で空中に描き、障壁を張った。


「いきます!"シャイニング・レイ"」


 ララが魔法を唱えると、光の奔流がエミリアに襲いかかった。範囲も質も先程の"ホーリー・レイ"の比ではない。

 光の奔流は勿論エミリアだけに留まらず、地下訓練場のあちこちに激突し、反射していた。

 勿論俺の方にも光の奔流は襲いかかって来ていたが、障壁が防いでいた。

 訓練場の結界の強度もついでに試せたな、なんて思っていながらその光景を障壁の中から眺めていると、やがて光の奔流はおさまった。


「本当に耐えちゃったわね!」


 エミリアは勿論無事であった。

 魔道具の試運転は成功である。


「これ、国宝級の魔道具ですね」


 ララが笑いながら言った。


「まぁこんな感じの魔道具だ。使ってくれ」


「ありがとうございます!大切にしますね!」


「大切にするわ」


 これで彼女達の安全もある程度は確保できた。

 安心して王都の危機とやらに臨める。


 後はもう1つ2つ保険を掛けようか。

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