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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第1章ヤマト王国編
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魔王テンプレに巻き込まれる

 次の日の朝。

 俺は1人で冒険者ギルドへと向かっていた。

 もちろん、昨日話の出た地竜討伐の依頼を受けるためである。

 今日の俺はいつもの街人相応の服装ではなく、全身黒のスーツに身を包んでいた。

 中に着た黒いシャツは第二ボタンまで開けている。

 これは昨日俺に付いていかず、城内で不穏な動きを調査すると決めたエミリアが、ピアスのお礼にとコーディネートしてくれたものだ。

 本当はもっと派手な物をエミリアが選んだが、俺が黒が良いと言ったので、こうなった。

 俺に防御系統の魔法付与は必要無いので、これらの服には"再生"の魔法のみ付与してある。

 これでボロボロになっても自動的に修復してくれるはずだ。

 防具も武器も何も身につけていないので「冒険者には見えないわね」とエミリアは苦笑していたが、俺はこれで満足していた。


 東側の城壁の門を通り、外街へと出る。

 しばらく歩いていると、アルカ神殿が目に入った。

 その神殿の奥にはアルカディア神の石像があることだろう。

 王都の災厄とやらはいつ来るのか。

 エミリアはようやく一ヶ月後の三の月の2週目の休息日に開催する事に決まった式典の時ならば、貴族達や人々が王都に集中しているので、自分が襲撃者ならこのタイミングを狙うと予想していたが、どうなるかはわからない。

 念の為エミリアには何かあればすぐに通話のピアスで連絡するように言い含めておいたので大丈夫だろう。

 最悪転移でひとっ飛びだ。

 そんな事を考えていると、通話のピアスにコールがあった。


『ディスター?いま大丈夫?』


『ああ。どうした?』


『いえ、今日は挨拶をまだしていなかったと思って』


 なんだそれは。こっちは何かあったのかと心配したのだが。


『そうか』


『気をつけて行ってきてね』


『ああ』


 そう言って通話は切れた。

 まぁ、いいか。

 目の前には既にギルド本部があった。

 さっきよりも少しだけ増えたやる気を胸に、ギルド本部へ足を踏み入れた。


 ギルド内は酒場の方には人がおらず、カウンターや依頼掲示板の周囲が混雑していた。

 冒険者達は誰も彼も鎧に身を包んでおり、腰には自慢の武器を下げていた。

 鎧を着ていない物も大半は恐らく防御魔法が込められているであろうローブを羽織っていた。

 俺のような服装の者は1人も居ない。

 カウンターに出来た長蛇の列を見ながら、これに並ぶのかと辟易しながら歩いていると、正面から赤い顔をした4人組の冒険者が歩いてきた。

 4人組は俺の姿を見るなり何やらひそひそと話した後、にたにたと汚い笑みを浮かべながら、わざわざ俺の前に立ちはだかった。


「おいおい坊ちゃん。そんな格好でこんなところに何の用だい?」


「・・依頼を受けに来たんだが」


 誰が坊ちゃんだ。

 少なくともお前よりは長く生きていると思うがな。


「ははは。冗談よせよ。ここは冒険者が依頼を受けにくるところだぜぇ?」


 そう言って肩を掴み、顔を近づけてくる男。

 こいつ朝っぱらから酒を飲んでいるのか。

 息が臭くて鼻が曲がりそうだ。


「口を閉じろ。息が臭いんだよ」


 そう言って掴まれていた手をパシリと弾いた。


「あん!?なんだとてめぇ!」


 そう言って弾かれた拳をそのまま突き出してくる男。

 男の拳を半身になって避けると男の頭を掴み、そのまま地面に叩きつけた。

 周りがざわざわとこちらに視線を向けてくる。

 カウンターの方を見ると、受付嬢のリサがパタパタとカウンターの奥に走っていくのが見えた。


「ジース!?てめえよくも!」


 残った3人のうち1人が殴りかかってきた。

 後の二人は目を丸くしていて、特に行動を起こす様子がない。

 向かってきた拳を今度は片手で受け止めると、そのまま捻って地面に倒れる男の上に投げ飛ばしてやった。


「さて、急にいちゃもん付けて殴りかかってきたんだが、何か言い分はあるか?」


 俺は残った二人に目を向けながら言った。

 二人は倒れた男達を見て顔を青くすると、ぶんぶんと横に首を振った。


「おい!お前ら何をしてやが・・ってよりによってお前か・・」


 そう言いながら人混みを掻き分けてきた大男はギルド本部長のマチスであった。

 俺の姿と倒れた男達の姿を見とめて大きく溜息を吐いている。


「まぁお前のナリ見りゃ粋がった冒険者は絡みたくもなるかもしれないが・・」


「何を着ようが俺の勝手だろう」


「それにお前らも。少しは喧嘩売る相手は選べ。こいつは喧嘩売るには最悪の相手だぞ」


 呆れた様子で残った二人にマチスが言うと、男達は今度はぶんぶんと首を縦に振った。


「ここは良いからお前たちはさっさとどっか行け。で、ディスターは俺と一緒に来い」


 残った男達は地面で呻いている男二人を担ぐと、さっさとギルドから出て行った。


「おい。先に手を出したのはあいつらの方だ。なぜ俺だけ呼び出しを食らう?」


「ああもうちげーよ。お前は指名依頼を受けにきたんだろう?早くこっちに来い」


 マチスは頭をガシガシと掻くと、俺の腕を掴んで歩き出した。


 連れて行かれたのは執務室であった。

 昨日と同じ手順で茶を入れたマチスが湯呑みを俺の前にドンと置いた。


「で、さっきの騒ぎはなんだ?」


「あぁ、お前みたいな坊ちゃんがなんでここにいるのかと絡まれてな。息が臭いと言ったら殴りかかってきたから叩き潰したんだ」


 正当防衛だ正当防衛。


「まぁ言いたいことはあるが、向こうから絡んできたんなら良しとするか。それより依頼だ」


 そう言ってマチスは一枚の紙を取りだした。

 そこには指名依頼ディスアスター・サタンと書かれている。


「国からの依頼だな。内容はゼロニア草原に出没する地竜の討伐だ。受けるか?」


「もちろんだ」


「よし、現地までの足はどうするつもりだ?」


「ああ。現地までは走っていくつもりだ」


「そうか、走って・・なに?走っていくだと?」


 もう1枚依頼書を取り出したマチスが言葉の途中で止まった。


「ああ。地図は貰ってるし、これくらいの距離間なら少し走れば着くだろう」


 そう答えるとマチスは頭を抱えた。

 一体その反応はなんだ。


「俺はまだまだお前の事を見誤っていたらしいな・・もういい、好きにしろ。この依頼は他のやつに受けさせる」


 その依頼書はガイアス伯領への護衛依頼であった。なるほど、地竜はガイアス伯領に行くまでの道中のゼロニア草原に出没する。

 護衛ついでに狩って来いとでも言うつもりだったのだろう。

 それではどれくらいの時間拘束されるか分かったものではない。

 しかも護衛中に確実に地竜が出現するかもわからないのだ。

 どちらにせよ受けられる依頼ではなかったな。


「ではな。いってくる」


「ああ、気をつけてな」


 出された緑茶を飲み干し、俺は執務室を出た。


 ギルドを出ると、先程絡んできた男達が待っていた。


「ああ、来た来た!」


 そう言って俺の姿を見つけると走り寄ってくる。

 なんだ、まだ何か文句でもあるのか。

 そう思って少し身構えると、先程無事だった方の男達が焦った様子で止めた。


「もう俺たちにお前と事を構える気はない!警戒をといてくれ!」


 なら一体何の用だ。

 訝しげに見ていると男達は話し始めた。


「あの後仲間に聞いたんだ。あんた、あの本部長を叩きのめすほどの腕らしいな」


 正確には本部長ではなく本部長の魔法を、だが。


「悪かったよ。酔って朝まで飲んでて、気が大きくなってたんだ。ほら、お前らも早く謝れ!」


 そう言うと叩きのめされた方の男達がすごすごと前に出てきた。


「わ、悪かった。お前にはもう絡まねぇって約束するよ」


「あ、ああ。俺もだ」


「そうか、ならいい」


 俺はもうこいつらと話す気もないしな。


「俺たちは"草原の風"っていうCランクパーティなんだ。お前の名前は」


「じゃあな。もう会わないと思うが」


 何やら自己紹介をしていたが、それを無視してさっさとここを去る事にした。

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