第88話 魔法怪盗vsハーネイト 後編
「やったか! 流石ですなハーネイトさん」
隠れていたウェコムも現れ、3人の姿を確認した。
「おとなしく捕まりやがれ。お縄頂戴いたすぜ!」
「悪いけど、これ以上教え子の悪行を見逃せないのだ」
「それはどういうことだハーネイト。聞いていないぞ」
「隙あり!」
ウェコムがハーネイトの言葉に戸惑っているわずかな隙を見計らい、エフィリーネは瞬時に魔法を唱え煙幕を展開し視界を遮る。そして素早くある魔法を3人は唱える。
「ミニムライズ!」
「なっ、その魔法は!」
3人は詠唱するとみるみる小さくなり、鎖をするっと抜けた。それをハーネイトはすかさず煙幕のなか魔眼を使いスキャンする。
「このまま逃げる気か、本当に魔法を変に使いやがって! そういうところが厄介だ! 弟子から魔法を習う羽目になるとは思わなかったが、便利だから余計に!」
ハーネイトは煙幕を軽い風魔法で消し飛ばし、せき込むウェコムと共に3人を追いかける。
3人が使った魔法は分類外の魔法である自身の姿を小さくするものであり、リリーも得意としているが怪盗3人組のは特に強力で長く持続する代物であったため彼は少し焦っていた。
「小さくなる魔法まで使うとは。そして3重結界すら意味がないか。あいつらの成長力を甘く見ていた。最初から大魔法でも使っておくべきだったな。しかし建物は壊せないし、ああ、むかつく」
「急ぎましょう」
ハーネイトたちが2階から1階に下りる階段を駆け下りていたころ、一階まで来ていたアーディンたち。ポプルも監視カメラの異変に既に気づき、一回の玄関前で警棒を片手に構えていた。しかし小さくなった3人に気づかず外に逃してしまう。
「くそっ、師匠また隠し球かよ。魔力反応を消しても引っかかるとは」
「あれはもしかすると、古代人の使う創金術かもしれないな。だがそれにしても空中から鎖が飛んでくるのは理由がつかん」
「参ったわね。計算違いも甚だしいわ。先生はまだ隠し玉をいくつも持っているのね、流石だわ」
3人は外に出てすぐに変身を解除する。しかしそれが仇となった。
「お前らか! あの手紙を送ったやつらは。喰らえ、菌壁陣」
「本当に怪盗がいるなんて面白いわ。ただ、私たちの邪魔をしないで! 結束万布!」
伯爵のバクテリアウォールに阻まれ動きを封じられたところに、事前詠唱した大魔法1号の結束万布により、足を捕らわれた3人は慌てていた。てっきりハーネイトの性格上1人で来るかと思った3人は、ハーネイトの仲間たちのことを知らず策にはまったわけである。
「まだ仲間がいたのか!」
「うごけない、何なのよ! てかこれ結束万布! 大魔法を使えるのは限られているはず、ってあの子は」
そのとき、博物館から数百メートル離れたビルの屋上にリシェルがいた。実はあのあと彼はみんなに気がつかれないようすぐさま飛び出し、博物館の遠くから麻酔弾でその怪盗たちを捕らえようと考えていた。しかしタイミング悪く、狙撃ポジションに到着したときには3人は屋内に侵入していた。
「はあ……。いとこたち、何をしているんだ本当に。こっちはヤバイやつ相手に戦ってるんだぜ。あっ、ヴァンさんとリリーちゃんナイス! はーっ、!」
リシェルは強風吹くビルの屋上から、素早く高速連射ライフル「シムナグ」の引き金を三回引き、強力な麻酔薬の入ったアンプル弾を三人の腕に的確に打ち込む。
「ぐっ……!」
「いて!」
「きゃあ! これは、もしやっ……」
リシェルの麻酔弾を打たれた三人は薬が回り、立てなくなりその場に崩れた。そこにハーネイトとウェコムが外に出る。
「ヴァンとリリー!」
「もう、私たちいなかったら逃げられてたわよ。本当にハーネイトすら手玉に取るとか怖いわね。噂には聞いていたけど、マジ者の怪盗だったのね」
「すまないリリー。不意を突かれ特殊魔法を使われた。大魔法を事前に張っておくべきだった。私の計算違いだ。しかし、リシェル。お前まで!」
ハーネイトはリシェルがビルから降りてこちらに来ているのを確認した。
「すみません、あの手紙たまたま落ちていたのを見てしまいまして。そいつら俺のいとこたちなんですよ」
「は、はああああああ?」
リシェルの言葉に、ハーネイトは思わず高い声で驚きながら叫んだ。一体どこで繋がりがあるのか彼には見当がつかなかったからである。
「な、なに驚いているんすか師匠」
「なありシェル、アルシャイーン3兄妹たちといとこなのは本当か?」
「そうです。小さい頃は一緒に遊んでもらってましたし。全員年上のお兄さんお姉さんたちですが」
「そういうことか。しかし、バイザーカーニアで学んだことをこういう風に使って、幾つもの強奪事件を引き起こすとは。機士国王も相当憤慨していた。こっちの管轄外で相当被害が出ているのも知っているぞ。この馬鹿弟子が。ジルバッド師匠が聞いたらさぞ嘆いているだろうな」
ハーネイトは3人の悪行について深くため息をつきながら3人を見ていた。
「まさか、リシェルまでいたなんて」
「なぜその解決屋と今いるんだ?」
「軍人をやめたんだな、リシェル」
アーディンはリシェルにそう言葉をかける。以前彼はリシェルから、伝説の解決屋を目指していると聞いていた。そしてその夢を順調に追いかけていることにやや嫉妬交じりに言いつつも祝福していたのであった。
「そうですよ。しかし兄貴たち、今この星では大変なことばかり起きているのわかっています? 」
「そうだ、クーデター事件や機士国の侵略を見てこなかったのか? 怪盗などしている場合ではないのだぞ」
2人は今起きていることと、遊撃隊の結成について小一時間話をした。その中でハーネイトは他の大陸でも不穏な動きをしているものがいること。そして忍者たちやエージェントたちから得た情報と照合しながら、敵の規模と進軍速度を再度計算しなおしていた。
「道理で連絡がこなかったわけか。ふうむ」
「ハーネイトはせわしないほど働いておるな。性格面で変化は起きつつも、まだまだ変わらないところもありますな」
外野の2人、ポプルとウェコムも話を聞いていた。長年調査で行動を共にしていたポプルはハーネイトの変化に気づいていた。
「そうよ、そのホミルドというハーネイトの師匠さんも、やつらに脅されているに違いないわ」
「めんどくせえが、相棒の頼みならやってやる。邪魔する奴ら全員醸して食ってやる」
「というわけで、兄貴たち。悪いけど師匠の邪魔しないでくれ。ホミルドおじさんのことは俺らで助けるから」
リリーと伯爵はそれぞれ救出に向けて動くといい、そしてリシェルのその言葉に、3人は目の色を変えて叫ぶように訴えたのだ。それは、今回の出来事と彼らの過去に関係があった。




