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第2話 待ち受けていた災厄

薄暗い階段には窓がないから、光が差し込まない。そして長い間使われていなかったからか、埃っぽい匂いがする。

しんと静まった空間に、あたしが階段を登る音だけがやけに大きく響く。

「そういえば、旧校舎の四階ってきたことなかったな……」

あたしの通う朝比奈中の旧校舎は、ほとんど倉庫状態だ。昔は普通に使われてたらしいけど、なんせ築七十年。壁にはそこらじゅうに亀裂が走っていて、塗装はほとんど剥がれてるという見事なボロボロっぷり。もういっそある種の風格さえ醸し出している。今あたしたちが生活してるのは、築二十年くらいのまあまあ綺麗な新校舎だ。

物の出し入れとかで下の方の階は何回か入ったことあるけど、上の方はない。

なんか廃校舎のホラー映画とかに出てきそう。その辺からお化けがゆらゆらぁ……って。

あたしはぶるりと身震いをする。

まさか、いくらなんでもそんなはずはない……はず。

手紙をくれた人、なんでこんなとこを選んだんだろ。そりゃ、絶対誰も見てないとは思うけど、ロマンティック要素がゼロだよ。もうちょっとマシな場所、いっぱいあると思うんだけど……。

そんなことを考えつつも、あたしの足は前に進み続けていた。

階段の壁にかかれた、薄くて消えそうな「4」の文字。四階についたんだ。

一歩、足を踏み出した瞬間に、背中を悪寒が駆け上った。

なんだか、誰かにじっと、みられている気がして。

……ううん。そんなはずないよね。多分、ただの気のせいだ。

左から、四番目の教室。

引き戸の前で、大きく深呼吸をする。

そしたら、いまさらのように気づいた。

あたし、何て答えるか考えてなかったっ!

ま、まあ、誰なのかもわかんないしそそそれは告白されてからでいいよねっ!?

心の中で言い訳をして、あたしは引き戸に手をかける。

空いてる方の手で、無意識にネックレスを掴んでいた。

ガラガラガラガラ、と鈍い音を立てて、戸が開いていく。

──ハル!! ダメだ!!

頭の中で、誰かの絶叫が鳴り響いた。

心はギョッとするけれど、体は止まらない。

戸が完全に開け放たれた。

心臓がはち切れんばかりに鳴っているのを感じながら、あたしはそっと中に入る。

「……あれ?」

そこには、誰も、いなかった。

転がった段ボールに、黒ずんだ木の板。ただ見放された寂しい景色が広がっているだけ。

あたしは手のひらの紙に目を落として、

「……いたずら……だったのかな……」

そう呟いた途端、一気に肩の力が抜けた。

怒りっていうより、肩透かしを食らったっていうか。

まあ、そうかもね。あたしに興味ある人なんているはずないもん。

だけど、やっぱり悲しい。

「あーあ、変な勘違いしちゃった。早くかーえろ」

誰が聞いているわけでもないのにわざとらしくそう言って、あたしは教室を去ろうとした。

その瞬間。


視界が、闇に包まれた。


暗い。黒い。深い。

あたしが今までにみたどんな闇よりも。

逃げなきゃって思うのに、冷や汗が吹き出してるのに、あたしの意識は催眠術をかけられたみたいに朦朧としてくる。

知らない人の笑い声が聞こえる。

そのまま、あたしはゆっくりと、下に倒れ込んでいく。

脳裏に浮かぶ、泣きそうに顔を歪ませた誰か。その瞳に映るあたし。

キラキラ飛び散って舞う、光の破片だけが、最後に見えた。

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