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第28話『聖剣ちゃんと魔剣ちゃんの勘』

「ごちそう様でした」


 食事を終えた俺たちは、移動をせず休憩に入る。


「骨もバッキバキに食べられるの凄すぎ」

「わたし的には、驚きを通り越して豪快な感じが見ていて気持ちいいわ」


 本当に、胃袋もどうなっているのかわからないが、味覚もどうなっているのかわからない。

 生の状態でも食べられるようだし、間違いなく俺たちとは――え、もしかして流れ的に俺も生で食べられちゃったりするの?


「さて、それはさておき。どうするの?」

「主様のご命令とあらば、いつでも対応できます!」

「まあ放置しておいていいんじゃないか」

「ん? なんの話をしているの?」

「さっきの問いに対する答えみたいなもんだな」


 まあ、セリナの目配りとメノウがそわそわし始めてから気が付いた俺は、完全に遅れていたわけだけど。


()が近くに居て、こちらの様子を窺っている」

「えっ!?」

「しかも彼だけではなく、小型モンスターも」

「そんなまさか……」

「数が多い。このまま普通に話をしている感じを保とう。動くときはこっちからだ」

「わ、わかったわ」


 察知できるのは少なくとも30体。

 小型モンスターと言えど、ここまで多いと並大抵の冒険者では対応が厳しいものになるだろう。

 しかも不意の奇襲というカタチになれば、命を落とす可能性も十分にありえる。


 まあ、俺たちには該当しない話ではあるが。


「逆に不意打ちをしよう。たぶんあいつは、俺を標的として定めている可能性が高い」

「お任せください主様。顔の形がわかる程度であれば問題ありませんか?」

「メノウ、それはさすがにやりすぎよ。腕一本切り落とすぐらいがちょうどいいの」

「やっぱり俺が行った方がいいかな」

「いいえ主様お任せください」

「今のアレンが行ったら、頭だけになってしまうわよ」

「俺をなんだと思っているんだ。街中でやった程度には力加減はできるぞ。た、たぶん」


 いや、怖くなってきた。

 あのときは奇跡的に成功しただけで、「動き出そうとした瞬間に勝利は確定した」的なことを言われていたし、本当に運がよかっただけなのかもしれない……。


「剣があったら、わたしも何かできたのに。ごめんなさい」

「気にすることはない。やることも決まったことだし、さっさと終わらせるか」

「いざっ」


 メノウが動き出したかと思えば、セリナもほぼ同じく動き出し――いつものかわいらしい掛け声はなく、響き渡ったのは断末魔のみ。

 すぐに終わることはわかっているから、俺たちも立ち上がる。


「う、うわぁああああああああああ!? な、なんだお前たち!? ぐはっ――」


 と、モンスターの声は1つも聞こえてこなかった。

 そしてぶっ飛ばされて体が地面を擦りながら俺たちの前に来た例の男。


「へっ?」

「俺、しつこい男は嫌われるぞって忠告したよな」

「は、はい――って素直に従うわけがないだろぉ!」

「想像以上に元気だな」

「いてぇええええええええええっ」


 状況が状況だというのに、強情な態度を示したまま立ち上がろうとした男は殴られたであろう患部を抑えている。

 悲痛な叫びと歪んだ顔から痛みを予想するが、たぶん折れてるだろうな。


「ねえ、本当にもう終わりにしましょう。もうパーティですらないのよ、わたしたち」

「たかがパーティだろ。それで関係が断たれるなんて理不尽すぎる」

「そっちのパーティだってもう解散したのでしょ? それに、ちゃんと言葉にして断ったじゃない」

「い、1回だけで諦めるはずがない。諦められるはずがない。なあフローラ、俺はキミのことが好きなんだ」

「だから、その気持ちには応えられない」

「や、やっぱり、その男が悪いんだ! そうだろフローラ!? そそのかされているだけなんだ!」


 あまりにも聞き分けが悪い男だ。

 軽い助言のつもりだったが、ここまで明確な言葉にされても引き下がるどころか他人のせいとは。


「俺が守ってやっていたんだから、これからも俺の傍に居てくれたらいいんだ。それに、あのときは俺を守ろうとして庇ってくれたんだろ?」


 もはや恋心を通り越して、フローラに対して抱く気持ちは所有欲だな。

 フローラがどんな志を抱き、自分が信じる正義を貫く強さを持っているのかも理解しようとしていない様子だ。


 だからこそ、今の苦しんでいる表情を見たらわかる。


 フローラはこの男を含み、パーティの仲間と過ごす時間が心の底から楽しかったんだろう。

 大型個体との戦闘時に何が起きたかはわからないが、そんな大切な仲間だったからこそ、自分と盾にして逃がしただろうに。

 それすらも考えようとせず、自分の良い様に変換し、考えを押し付けるなんて……本当に救いようがない。


「あなたがやっていることは、もう全てわかっているの」

「はぁ……?」

「魔法を扱えるんでしょ?」

「な、なんでそれを!? い、いや違う! お、俺がそんな大罪を犯すはずがないだろ! 変な考えをこじつけるのはやめろ!」


 男が身振り手振りに胡散臭い演技をしている最中、俺はふと左腕に見えた模様みたいなものを発見した。


「なあ、じゃあ左腕を見せてくれないか」

「はぁ? なんでお前なんかの指示に従わないといけないんだよ」

「……あのときも左腕を庇っていた。もしかして」

「うるさいうるさいうるさい!」

『セリナ、左腕の布だけを切り落とすことはできるか』

『お任せください主様!』


 完全な不意打ちになるが、そもそも仕掛けようとしていた人間にとやかく言われる筋合いはない。


「へっ?」

「……言い逃れはできないな」

「い、いつの間に!?」


 はらりと切れた布の後から姿を現したのは、歪に描かれた黒色の模様。

 何が書いてあるのか、何を意味しているのかはわからないが、異様で異質な雰囲気だけは感じ取れる。


「魔の者に施された呪いみたいなものね。代償を何にしたのかは疑問だけど」

「ど、どうしてそれを……」

「まあ、知っているから知っているのよ」

「大罪どころか禁忌とされているものじゃない……」

「そ、そんなわけがないだろう。口から出まかせに決まってる」

「そう? だったら、騎士団に突き出したら答えがわかるというものね」

「や、やめてくれ! 死刑になっちまう!」


 口は禍の元とはよく言ったものだ。


「ああ、もうやってられるか! 全部めちゃくちゃにしてやる! 来い!」


 男は右腕を突き上げたかと思えば、遠くから鳴き声のような遠吠えのようなものが響き渡ってきた。


「もうおしまいだ。全部、全部! お前が悪いんだ!」


 そういう男は俺を指さす。


「はいはい、全部俺のせいね」

『シィーッ!』

『ワオーン!』

「ふはは、ははははははははははっ!」

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