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第26話『心の整理がついたようなので』

「可能性があるとしたら――食べ物事態に含まれる毒素を解毒浄化か体内を侵食する毒素を解毒浄化――かな」

「聞いただけだと俺はできる気がしないな」

「1つ目は外部の人間ができたらいいけど……2つ目は食べる本人ができないといけないよ。そうなると――」


 フローラは罰が悪いように申し訳なさそうな雰囲気を漂わせつつ、メノウへ目線を向ける。


「わ、わたくし!?」

「少なくとも、効果を確認できるのはわたしとメノウだけになる、かな」


 もはや言葉を発することはなく。

 メノウは「まさか、そんな酷いことはさせないですよね!?」、という意味が込められた情けない顔と泣きそうな目が訴えかけてきている。


「ここは、わたしがやるしかない」

「もう少し思い止まっても――」

「いいの。これぐらいでしか役に立てないのなら、やるしかない。それに、嫌がるメノウにやらせるわけにはいかないから」


 大丈夫かよ、と心配する気持ちは絶えない。

 しかしフローラの正義心に火が点いたのだろう、見るからに握る拳を出してやる気がみなぎっている様子が伺える。

 止めたい気持ちも山々だが、これが成功したら食糧問題が多少は緩くなるし、何より本人が自分の仕事を見つけたとやる気満々だから止めにくい。


「じゃあやってみるね」


 固唾を呑む感じに始めるなら、また別の機会に……とは言いにくいな。


「こうやって――まずは食べる」


 ちゃんと焼けているモンスター肉に白い光がフローラの手から注がれ、それ以外の変化はなく口へ運ばれた。

 外観的には問題なさそうではあるが、問題は人間の体に害がある魔力がどうなっているのか。

 今は肉だけに働きかけているから、体がどう反応するかによって自身の体にも聖法を施すのだと思う。


「味は――うん、ちゃんと食べられる。風味も大丈夫だし、ハーブの風味も感じられる」

「おぉ」

「歯ごたえもいいし、舌触りもいいし噛み切れるし――飲み込める」

「口の中が解けたりしてない? 歯が砕けてたりしない?」

「全然大丈夫よ」


 フローラの試みを、表情を歪めながら観ていたメノウが不吉な質問を投げかける。

 注意しようと思ったが、自分が嫌悪する状況を前に、気になって気になって仕方がないのだろう。

 あのなんとも言えない、顔が歪むほど見たくないのについ見ちゃうみたいな現象みたいに。


「うっ!」

「ど、どうした!?」

「やっぱり――自分の体にも浄化させないとダメそう」


 フローラは腕でお腹を覆っていたそうに顔を歪めていたが、その色が薄れていっていることから強がりではなく本当に大丈夫になったのだろう。


「本当に吐き出さなくても大丈夫そうなのか……?」

「ええ、思っていた以上に大丈夫みたい」

「思っていた以上って。やっぱりかなり覚悟のうえで臨んでいたんだな」

「まあ、それなりには。だって、誰でも知っているでしょ、モンスターという存在が害であり毒だって」


 肝が据わっているというか、正義感に駆り立てられすぎだろ、と思う。

 でもそのおかげで、聖法を使用することによって食材を統一できることがわかった。

 体を張りすぎな検証だが、大いに成果があったと言える。


「よくやったフローラ。これで、もしものときは食料を統一できるようになった。ありがとう」

「今のわたしにできる精一杯で力になれてよかったわ」

「じゃあメノウに関しては、もはや無意識に浄化できるってことだから心配無用ってことか。それとも聖法の威力? によっては食材だけに発動させたらよかったり?」

「主様、本当にやらないとダメですか……?」

「いやまあ、メノウの気分が乗らないなら時が来たらにしよう」


 無理強いしてもよくないしな。


「はぁ~。でも、なんだか緊張の糸が緩んだ感じがする」

「まあな。人類で初めての試みだったろうし、成果を世界に発表してもいいぐらいの功績を上げたわけだからな」

「それはそうかもだけど。別の意味よ」

「別?」


 フローラは「ふぅ~」と息を抜いて、少しだけ背伸びをした。


「心の整理がついたから、元々のパーティについて話すね」


 続いてコホンッと一呼吸置いたフローラは、姿勢を変えて膝を曲げて抱え込んだ。


「みんなとは冒険者登録してからの付き合いで、全員が新米冒険者だったの。成績も良好で、連携も日々向上していて。でも、ある日を境に――痴情のもつれというのかしらね。いろいろとギクシャクするようになっちゃったの」

「戦いの最中では避けたいことが起きたってことか」

「うん。あの人はわたしを優先的に守ったり、前衛なのに突撃することを止められたり」


 職場恋愛はするものじゃない、とはよく聞く話。

 しかし命の駆け引きを常に行う冒険者が、危機管理を怠り、1人だけをひいきする行為はパーティ全体を危険に晒す。


「そんな日が続けば、嫌でも自分に好意を向けれ来られるのは気づいたけど……言葉にされるまでは何もできなかった」

「勘違いや別の理由だったと気が面倒だろうからな」

「他のメンバーは気を遣ってくれたりもしたけど、怪我が増えたりとかいろいろあって1人、また1人と我慢の限界が来ちゃって。最後に狩りをしてパーティを解散することになったの」

「だとすれば運が悪いとしか言いようがないな」

「ええそうね。毎日ワクワクして楽しかったのに、あんな最後になっちゃうなんて……」


 あのとき、間違いなくフローラは逃げることができなかった。

 しかもトラウマとなっているだろう、悪夢の再現みたいな状況で。

 本来の力を発揮することができず、仲間を逃がすという大義と正義に命を散らす――。


「話の流れを止めてしまってごめんなさい。少しいいかしら」

「どうしたんだセリナ」

「この広大な森には様々なモンスターが生息していて、それぞれ生息域なんかもあったりする」

「まあそうだな」

「事前調査をしたり情報を買ったり、いろいろあるけど――移動型のモンスターが居るのは、冒険者を2年もやっていたのなら知っていたわよね?」

「ええ、もちろん」

「そして、特に厄介なのが戦った狼種」

「嗅覚に長け、狩りに対する感覚や勘が他の種族と比べて秀でていいることが、何かあるのか?」


 会話の途中で、深呼吸をするセリナ。

 まさに重要もしくは言いにくいことを口に出す前の、ソレだ。


「その件、もしかしたら仕組まれたものかもしれない」

「――え」

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