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THE TRICK TRAP HUNTERS  作者: 水原翔(みずはら・しょう)
TRICK3 「Junction」
9/23

TRICK 3-4

 情報庁、庁舎内。緊急事態を知らせるベルが鳴り響く。

 ガーディアンが次々とパソコンから登場し、職員を襲い始める。

 泣き叫ぶ者もいれば、逃げ惑う者もいて、庁舎内は大パニックになっていた。

『警告。警告。庁舎内にバージョン1クラスのガーディアンが多数出現。職員は直ちに避難して下さい。出現に伴い、隔壁を閉鎖します。ご注意下さい。』

「水無さん!! 逃げないんですか!?」

 研究員の一人が、水無努も気にかける。

 努は、逃げるどころか、あるデータの無事を心配していた。

「……コアデータのバックアップが取れているか、確認をしなければ」

「確かにそれも大事ですけど、水無さんの命はどうなるんです!?」

「構わん! 君は先に逃げてくれ!」

「け、けど」

「良いから行け!!」

「は、はい!!」

「……高速道路上と情報庁にガーディアン。まるで示し合わせたかのように出現したな」

「はい。どこかで私達の情報を盗み見ている奴がいるんでしょうか」

 二ノ宮は、誰もいない高速道路を飛ばし、情報庁へと車を急がせていた。

 黒崎も、赤く染まった車のディスプレイを横目に、前方の状況を確認しつつ二ノ宮の運転をサポートしている。

「あの、ずっと気になってたんですけど、ガーディアンが出現すると、周囲の人間がいなくなるのって、何故なんです?」

 ミヤビは、二ノ宮に疑問をぶつける。品川駅の時といい、病院の時といい、ガーディアンが出現すれば、自分とガーディアンだけの存在になってしまう。一体これは、どういうことなのだろか。

「これは最近努さんから聞いた話なんだが、ガーディアンに“認知”されること。その条件によって、俺達はガーディアンから、強制的にこの空間に引きずりこまれる。認知した人間のみ、この空間に存在しているんだ。だから正式には、周囲の人間がいなくなっているわけではなく、逆に俺達が現実の空間から引き離されている。聞いていた話どおりだが、実際この空間にいるのは初めてだ。今回みたいな例は異常だろうな」

「ガーディアンに、認知……」

「つまり、ガーディアンが殺意を向ける人間というのが、予め決まっているということですか?」

 藍沢は二ノ宮に尋ねる。

「この状況を見ると、恐らくそうだろうな。ガーディナイザーは予め、殺害対象を決めて、ガーディアンを出現させる」

「なるほど」

「急ぐぞ。水無、準備をしておけ」

「了解しました」

《最近空振りばっかでイライラしてんだ。ぶっ倒そうぜガーディアン!!》

「ああ」


 ――進むのか?


 突然だった。ミヤビの脳裏に、声が聞こえる。

 火炎の時と同じ、誰かの声。

「ん?……火炎、何か言ったか?」

《ぶっ倒そうぜって言ったぜ》

 明らかに違う。

 そういえば、俺を呼べ。とミヤビを呼んだ声は、果たして火炎だったのかと、ミヤビは思い返す。

 

 ――進めば、もう取り返しがつかなくなる。それでも進むのか?


 この声は、何を言っているのだろうか。取り返しがつかないとは、どういうことだろうか。

 そんなことよりも、情報庁が……父が、ガーディアンの危機にさらされているのだ。

 助けない訳にはいかないし、ここで立ち止まるわけにも行かない。


「……意味がわからないけど、進むしかないよ」


 ――承知した。契約の準備は果たされた。


「契約? 何のことだ?」

 声は、しなくなった。

《どしたミヤビ?》

「やっぱり火炎じゃないのか?」

《質問を質問で返すなよ……意味わかんねーよ》

「どういうことだ……」

「つくぞ、水無!!」

 二ノ宮がそう言うと、車は情報庁の庁舎にドリフトする。

 ものすごい衝撃が来たが、シートベルトをしていたからなんとかなった。

 やっぱりシートベルトは大事である。

 庁舎の前には、数体のガーディアンが待ち構えていた。

「先行します!! 火炎、いくぞ」

《ああ……蹴散らしてやろうぜ》

「水無君!!」

「藍沢はここにいて」

[ハンターセレクト画面を起動します]

 さっきブレイクアウトしたおかげか、画面はすぐに起動した。

 藍沢を車に待機させ、扉を締める。

《Select of Hunter!!》

 ミヤビは、五芒星の右上の火アイコンをタップする。

《Flame Blade Ready!!》

 ハードロック調のサウンドが鳴り響く。

 ミヤビは、即座にハンターフォンを垂直に投げ落とし、叫んだ。

「ブレイクアウト!!」

《BREAK OUT!! Flame Blade!!》

《Flame Blade Version1!! 燃エル・ココロ・叫ブ・アッツイタマ~シイ!!》

 歌が鳴り響く瞬間、爆炎で周囲のガーディアンをひるませる。出現した瞬間、火炎は庁舎の前にいたガーディアンを次々となぎ倒す。

《火炎……旋風陣ッ!!》

 その勢いで、ガーディアンは次々と倒れ、携帯に戻っていく。

「……凄いな」

《へへん、どんなもんよ》

「急ぐぞ。火炎」

《おうよ!!》

 情報庁。庁舎は新しく、電子ロックのような扉が閉められている跡がある。

 しかし、その壁をガーディアンが破ったのか、真ん中に大きな穴が出来ていた。

「水無、俺も向かう」

「二ノ宮さん!? 大丈夫なんですか?」

「ブレイクアウト能力こそないが、特殊な銃を携帯していてな。完全ではないが、ガーディアンをひるませることが出来る。運転は黒崎に任せた。庁舎から一旦離れてもらって情報収集にあたってもらっている」

 二ノ宮は、ジャケットに隠し持っていた銃を取り出す。一体そんなものどこで手に入れたんだとミヤビはつっこみたくなったが、この非常事態だ。助けがあるのはありがたい。

「わかりました」

「ついてこい。ここの構造は俺のほうが理解しているだろう。まずは中央制御室に向かうぞ」

 二ノ宮の言うとおり、ミヤビはそのまま付いていくいことにした。

 周囲を見渡すと、人は殆どいない。たまに逃げていく庁舎内の研究員と遭遇するぐらいだ。

 ほとんどの人間は、避難できたのだろう。

「……しかし、この研究所そのものを“認知”したか。どこで情報が漏れたんだ」

「そんなことは後で考えましょう」

「だな。水無、後ろ!!」

 二ノ宮が、ミヤビの背後にいるガーディアンに気づき、銃撃する。

「火炎ッ!」

《任せろ、火炎斬ッ!!》

 その反動で怯んだガーディアンを、火炎は真っ二つに切り裂いた。

 ガーディアンは消滅し、携帯に戻る。

「一体いくついるんだ……水無、先を急ぐぞ」

「はい!!」

 階段を駆け上がり、迫り来るガーディアンを火炎がなぎ倒していく。幸い、どのガーディアンもVersion1のようで、火炎の力のみでなんとか切り抜けることができそうだ。

「あったぞ、中央制御室だ。恐らく努さんはそこにいる」

「父さんが……行きましょう」

「ああ。しかし隔壁が」

《任せろ。火炎斬ッ!!》

 火炎は扉を切り刻む。すると亀裂が入り、先に進むことが出来た。

「……こんなに簡単に破壊できるとは。ブレイクアバターの力は恐ろしいな」

 破壊された扉を先に進む。するとそこには、コンピュータ相手に作業している、水無努の姿が合った。

 直接会うのは、本当に数カ月ぶりだ。東京に来て、一度も合ったことがないのに。

「父さんッ!」

「ミヤビか!? 何故ここにきた!?」

「そんなことはどうでもいい!! 早く逃げるんだ!!」

 ミヤビがそう叫んでいる間にも、入り口から多数のガーディアンが押し寄せてくる。火炎と二ノ宮がなんとか切り抜けているが、時間の問題だろう。

 一体、自分の親父はここで何をしているのだろうか。

「……逃げたかったさ。けど、自分で決めたことだからな」

「何を言ってるんだよ!?」

「ミヤビ。ここから先はよく考えろ。お前に一時的に預けたSimを、どうするかをだ」

「今はそんな話どうでもいいだろ!? 早く逃げるんだよ!!」

「……ミヤビ。情報はお前の端末に送信した。全てはそれを見ると良い」

「どういうことだよ親父!?」

 ミヤビは、これまでにないくらい叫ぶ。

 勝手に東京に転校させて、ガーディアンっていうわけのわからない怪物に襲われて。

 そしてブレイクアバターってのを召喚する力を手に入れて。

 そのガーディアンが押し寄せて、とても危ない状況だってのに、自分の親父は何を考えているのだろうか。ミヤビは心配を通り越して、怒りを覚えてきた。

 何のために、ここへ来たんだ。

 何のために、これまで我慢していたんだ。

 何のために。何のために。

「……いつもそうだ。勝手に消えて。今回の東京だって」

「勝手なのは分かっている。全てはお前を守るためだった」

「意味わかんねーよ!! 何なんだよ!! ブレイクアバターって、ガーディアンって!!」

 自分でも、叫んだことがないくらいの声量で叫んでいる。

 こうして助けに来たのに、微動だにしない親父は、何を考えているのだろうか。

 どうして、動こうとせずに機械に触れているのだろうか。

「……マズイ。ミヤビ、ここを離れろ」

「離れるのは親父もだろ!? さっさといくぞ!!」

「そうはいかない」

 寒気。

 とんでもない寒気がした。

 努がいじる背後の機械が、レッドスクリーンから、ホワイトスクリーンに切り替わる。

 火炎と二ノ宮が戦っていた、ガーディアンの動きが、一時的に止まる。

 何か、嫌な予感がする。

 脳に、直接響くような大きな雄叫び。これまでに聞いたことないくらい、大音量。

 そして、巨大なホワイトディスプレイから、這いずり出るように、ゆっくりと、奴は現れる。

 手が出て、フレームに触れるだけで、大きな振動。

 身動きが取れず、ミヤビは地面に叩きつけられる。

 それは、白。

 肉体が純白の、ガーディアン。

 白い、巨大なガーディアンが、ミヤビたちの目の前に現れた。

 10mくらいはある、巨大なガーディアン。

「ミヤビ、逃げろ!!」

「親父はどうするんだよ!!!」

「こいつを食い止める!!」

 それが無理なことがミヤビには直感でわかっていた。

 ブレイクアバターがどうとか、そういう次元じゃない。

 こいつは、本当の、本物の。怪物だ。

 今まで見たガーディアンの、何倍も、何百倍も、恐怖を感じる。

 目を合わせてはいけないと思った。

 戦うよりも、一刻も早く逃げなければいけないと思った。

 その恐怖が、このガーディアンから感じる。

 恐怖のあまり、汗と呼吸がかなり荒くなっているのが分かる。

 けど、今一番大事なのは。

「親父!! こんなの無理だよ!! 逃げるぞ!!」

「……ミヤビ。本当に、本当に、すまなかった」

「そんなことどうでもいい!! 早くこっちへ!!」

 努は、壁にある赤いスイッチを押すと、ガーディアンの足元にリングのようなものが現れ、一時的に白いガーディアンの足を止める。

「ミヤビ。いいか、ちゃんと聞くんだ。このガーディアンはVersion FINAL。今のVersionじゃ到底倒せない。我々は、ガーディアン事件を追う時に、この白いガーディアンを倒さなければいけないという結論に至った」

「そんなこと……!!」

「いいから聞け!! ここからはお前の選択だ。普通に日常に戻るか。それとも今の火炎をVersionアップして、倒すか。お前が決めろ。父さんは、お前に危ない思いはさせたくない」

「意味わかんねえよ!! 既に危ない思いしてるし!!」

「……それは十分承知だった。父さんには、やらなければならないことがあった。いや、父さんはそういう選択をしてしまったんだ。だからここにいて、こうして役割をこなそうとしている」

 意味がわからない。

 自分の命を投げ捨ててまで、役割をこなそうなんて。

 気が動転しているせいか、ミヤビは親父の、水無努の言っていることが、全く理解できなかった。

「もし、もしだ。このまま戦うという選択肢をお前が選ぶならば。このガーディアンを倒して欲しい。それまでこいつは……くはっ」

 貫通。一撃だった。

 白いガーディアンの指先が、親父の、水無努の、心臓を貫いた。

 貫いた指先を見て、白いガーディアンは笑う。ミヤビには笑っているように見えた。

 純白のガーディアンの指先が、真っ赤に染まる。

《時間か。しかし目的は、達成した》

 初めて、その声を聞く。多数の人間が当時に喋っているような、奇妙な低い声。

 その瞬間、砂嵐の音が響き、白いガーディアンは一瞬にして、消え去る。

「は……?」

 ミヤビには、状況が理解できなかった。

 今一体、何が起きたのか?

 二ノ宮が、急いで努のもとへ。

「努さん!!」

「ミヤビ、お前はお前の人生を生きろ。俺にもう、囚われるな」

「は? は? ……は?」

 そう、最後の言葉を残して。

 久しぶりに再開した親父は、血を吐きながら、地面に横たわった。


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