1-7 出想エリア
新世界の世界六国中を結ぶリニアモーターカー――通称・エクスプレス。一時間程揺られて辿り着いた先には、余りにも美しい光景が広がっていた。
「着きましたよ、せつくん。こちらが〈出想エリア〉です」
「おぉ……圧巻だな……」
最初に視界を奪ったのは、白だった。ただの白ではない。雪のようで、光のようで、祈りそのものが地表へ降り積もったみたいな白。
頬を撫でる風は柔らかく、鼻先を擽る土の匂いにも、どこか花の甘さが混じっている。目を細めながら、ゆっくりとその景色を見渡したとき、思わず息を呑んだ。
そこには、白銀の海が広がっていた。無数の星を地上に零したような、一面のエーデルワイス。高山に咲く筈のその花が、何処までも――地平線の向こうまでも続いている。柔らかな風が吹き抜ける度、花々は波のように畝り、静かに煌めいた。
「この花は……エーデルワイスか。綺麗だな」
「はい。私も大好きな花です」
耳を澄ませば、遠くで鈴の音のような鳥の声がする。疑問より先に、胸の奥から溢れたのは歓喜にも似た震えだった。現実では有り得ない景色。けれど夢にしては余りに鮮明で、風の温度も、花弁の触れる音すらも感じ取れる。
足下のエーデルワイスの花弁を一つ、指先でそっと摘む。淡く透き通った白が、陽に炙られ、ほんのりと金色を帯びた。
花畑の奥へ歩みを進めると、いつからか──遠い筈の音が近付いてきた。人の声。笑い声。そして、誰かが風を切る音。
花々の隙間から姿を覗かせたのは、小さな村だった。エーデルワイスの海を割るように土の道が伸び、その中央に少年達が集まっており、剣を打ち合わせていた。粗末な木剣ではあるが、空気を裂く音は鋭い。土の上には踏み込みの跡が幾重にも刻まれ、掛け声は低く、まだ幼い喉からは似合わぬ熱が迸っている。
「足が甘い!」
「どこ見てんだよ!構え直せ!」
剣の先が僅かに摺れるだけで、風向きが変わる。全身の体重を乗せた踏み込みには、兵士のそれと同じ覚悟が宿っていた。エーデルワイスの静謐は、その一角だけ熱によって歪められ、模擬戦の気配が地面から立ち上っている。
「せつくん、この村に私の住まいがございます」
「ああ、行ってみるか」
俺は足元の花を踏まぬよう注意しながら、そっと村の方へ歩き出した。
――村の通りに敷き詰められた石畳は午前の陽を柔らかく返し、まるで温もりそのものが道となって村を包んでいるかのようだった。白壁と木枠で組まれた家々は古い伝統を守りながらも何処か軽やかで、花壇のエーデルワイスが風に揺れては、色とりどりの影を地面へ落とす。
「いらっしゃい!焼き立てのパンだよ!」
「一つくださーい!」
通りにはハーブの香りと焼き菓子の甘い匂いが混じり、商人達が陽気に声を張り上げる。並べられた籠には素朴な木の実や野菜が山のように積まれ、小さな露店の天幕は緑と白の縞模様で、村の穏やかな色彩に溶け込んでいた。通りを行き交う人々は、旅人にもよそよそしさを見せず、一様に柔らかな微笑みを浮かべている。
ふと、建物の窓硝子に見慣れた姿が映り込んだ。白黒の豹柄シャツ。金縁の色付き眼鏡。赤いニット帽。ボサボサの白髪。ギザギザの歯。
「……浮いてるなあ」
鏡像のように動く自分を見つめ、胸の内で苦笑する。
「ふふ、私は好きですよ」
「はは、ありがとう」
Aがそう言うと、不思議と少しだけ救われた。この村の空気に俺だけが馴染んでいない気がしていたが、少なくともAはそれを否定しない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
村の端に聳えるAの家は、質素ながら柔らかな空気に満ちていた。木の香りが残るダイニングには、焼きたてのパンや彩り豊かなサラダ、温かなスープが並べられている。
キッチンから戻ったAが、にこやかな笑みを浮かべながら、俺の正面の椅子に腰を下ろした。
「お味は如何でしょう。せつくん」
「美味しいよ、ありがとう。……正直、久しぶりにちゃんとした飯を食べた気がする」
「ふふ、良かったです」
そう言って微笑む顔を見ていると、この家の空気そのものがAに似ている気がした。派手さはない。だが、人を少しずつ安堵させる温度がある。
「ところで……Aはなんでメイド服を着てるんだ?」
問い掛けると、彼女はぱっと顔を輝かせ、そのまま一気に捲し立てた。
「私、世話好きなんです。色々な方のお世話をしているうちに、村の方々が『メイド服なんて似合うんじゃないか』なんて仰るものですから、試しに着てみましたら『やっぱりAちゃんにはメイド服が似合うわね』ということになりまして――」
「お、おう」
「それから、『だったら普段から出来る限りメイド服を着るようにしてみよう』ということで、メイド服を着ている次第です」
早口で説明するその様子は、少し年相応で、どこか可笑しかった。八十五年という重たい時間を背負っている筈なのに、こういうところだけ妙に愛らしい。
「そうか、似合ってるよ」
「ふふ、お上手ですね。せつくん」
「本心だよ」
Aは気恥ずかしそうに目を伏せ、頬をほんのり赤く染めた。その細やかな仕草一つで、この世界に流れる時間が、少しだけ優しく感じられる。
「さて、ちょっと散歩に行ってくるよ」
「かしこまりました。せつくん」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エーデル村の通りを歩く。人の声と笑い声が溶け合い、村のあちこちに活気が満ちていた。傾き始めた西日が、エーデルワイスの花弁を淡く照らす。
「わぁ……綺麗なお花畑……!」
「エーデルワイスのアロマオイル、いかがですか?」
「早くお花見に行こう!お花!」
「――へんなかっこうのお兄ちゃん!その虫さんつかまえて!」
背後から、無邪気な少年の声が飛んできた。彼の視線の先では、ピョンピョンと跳ねるバッタが石畳の上を逃げ回っている。
俺は赤いニット帽を脱ぎ、その上からふわりと被せて捕まえた。帽子の中からバッタを掴み上げ、少年に差し出す。
「コイツか?」
「うん!へんなかっこうのお兄ちゃん、ありがとう!」
「すみません、ウチの子が……」
少年の背後から現れたのは、母親らしき女性だった。彼女は少し恐縮したように、丁寧に頭を下げる。
「いえ、構いませんよ」
「わー!」
少年が駆け出す。その足がエーデルワイスの花壇を踏み荒らし掛けた瞬間――母親が慌ててその背中を掴んだ。
「――ダメよ!花壇を踏んじゃ!あの子が悲しむでしょ!」
「わぁ!ごめんなさい!ママ!」
その言葉に、俺は思わず口を挟んだ。
「エーデルワイス、綺麗ですね」
問い掛けると、母親は嬉しそうに微笑む。
「そうなんです。このエーデルワイスのこと、ご存知ありませんか?」
「いえ……」
「昔、ある女の子に大好きな男の子がいたのです。ですけど、大好きだった幼馴染の男の子と急に離れ離れになってしまったんですって。それで、遠くにいても気付いてもらえるように、とエーデルワイスを植えたんですよ。こんなに一面の花畑になるまでもう何十年も昔の、御伽噺のような話ですけどね」
――じゃあ、その女の子はもう亡くなっているのか。
一礼する母親と別れ、俺は再び夕暮れの村を歩き出す。
「旅の方ですかな?」
声を掛けてきたのは、立派な白髭を貯えた老人だった。
「まあ、そんなところです」
「儂は、エーデル村の村長ですじゃ」
「村長さん、ですか」
「ゆっくり休んで行きなはれ。この村の自慢であるエーデルワイスが、度の疲れを癒してくれますじゃ」
「エーデルワイス、綺麗ですよね」
「あの方はエーデルワイスの下で何十年も想い人を待ち続けておられますじゃ。あの方が想い人に会えるのが、この村の悲願ですじゃ」
想い人。待ち続ける。何十年。
話は少しずつ同じ輪郭を持ち始めていた。
「会えるといいですね……」
村長は意味ありげに花畑の方へ視線を向けると、にこりと笑って立ち去っていった。
視線を西日に染まる花壇へ向ける。そこでは、一人の男がキャンバスに向かっていた。筆先で描かれているのは、白く可憐なエーデルワイス。
「お上手ですね」
思わず声を掛けると、男性は照れ臭そうに笑った。
「ありがとうございます。でも、僕なんてまだまだですよ。あの方の心の美しさに比べれば」
「あの方?」
「このエーデルワイスの花畑を作った方ですよ」
「ああ、例の女の子ですか。でも、もう亡くなってしまわれたんですよね?」
男がきょとんとする。
「え?ご存命ですよ?」
「え?でも何十年も前の話って……」
「ご存知ない……ってことはもしかして旅の方ですか?あの方、回復のユニークスキルをお持ちなんですよ。老化のダメージを相殺し続けて、大好きだった男の子に会うために待ち続けられているんです」
「ユニークスキル……!そう、だったんですか……」
「あちらの民家にお住まいですよ」
そう、画家の男が指し示したのは――Aの家だった。
「Aが……!?」
「なんだ、ご存知なんじゃないですか」
――そうか。全部、繋がった。
長命を齎す回復スキル。想い人を待つ女の子。エーデルワイス。八十年以上。
美人に成長していたから気付かなかった。性格が変わっていたから気付かなかった。八十五年という時間が余りにも長すぎたから気付かなかった。――いや、そんなのは全部言い訳だ。
――Aは。
――いや、天音ちゃんは。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お父さん、見て!九九全部言えるようになったよ!」
真名・雨ノ宮天音。まだ小さな手が、真新しいドリルを掲げる。リビングのソファ、その向こう側――白衣姿のままノートパソコンを広げている父は、顔だけをこちらに向けた。
「うん、偉いな、天音。後でな」
その「後で」は、いつも来ない。天音は一瞬笑顔になり掛けて、直ぐに口を噤んだ。期待してしまった自分が、恥ずかしかった。
「お母さんは?聞いてよ、わたし――」
ダイニングテーブルには、分厚いファイルと資料の山。スーツのジャケットを椅子に掛けたまま、母はペンを走らせている。視線は一度も、こちらへ上がってこない。
「そう。偉いわね。いい子ね、天音。……そのプリント、机の上に置いといて。後で見るから」
その「後で」もまた、いつも紙の端を黄ばんだままにして、捨てられていく。
「……うん」
天音は俯き、ドリルを胸に抱き締めた。リビングは広くて、明るくて、床はふかふかのカーペット。テレビも大きいし、週末には高いケーキだって並ぶ。友達が羨むような家。なのに――どうしてこんなに、寒いのだろう。
医者の父。弁護士の母。立派な仕事をしている、と学校の先生も、近所の大人も言う。「自慢のご両親ね」と笑う。天音も、最初はそう思っていた。二人が誇らしくて、何か一つ褒められれば、それだけで一日中胸が熱くなった。――でも、気付いてしまったのだ。
――お父さんもお母さんも、お仕事のほうが好きなんだ。
テーブルの上のカルテと訴状の方が。病院からの電話や事務所からのメールの方が。自分よりも、ずっと。胸の奥がじくじくと痛んだ。
「……うそつき」
誰にも届かないほど小さな声で、天音は呟く。
「いっぱい頑張ったら、いっぱい褒めてくれるって言ったのに」
けれど、その夜も、母は深夜まで帰らなかった。父は急患の電話を受け、靴を履き直して出ていった。テーブルに残された夕食だけが、天音の前で冷たくなっていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
家にいても、寂しさは増えるばかりだった。リビングの時計の針が、矢鱈と大きく音を立てて回る。テレビの笑い声も、独りで聞けばただの雑音だ。
だから天音は、外へ逃げた。いつの間にか足が自然と向かう場所が一つ出来た。近所の、小さな公園だ。
滑り台とブランコが二つずつ。砂場の隅には、去年の秋から取り残された落ち葉が、まだ一部泥に混ざり切らず残っている。夕方になれば子供で賑わい、夜になれば大人達の足音が遠くを通り過ぎていく。
学校が終わるとランドセルを放り出して、天音は公園へ走った。何をするでもない。ただブランコに座って揺れたり、砂場で山を作ったり。それだけでも、家にいるよりはずっとマシだった。
その日も、天音はブランコを一人で揺らしていた。夕陽が赤く、チェーンの影を長く伸ばす。風が頬を撫でた、その時――。
「……ねえ」
背中から、少し掠れた、けれどよく通る声がした。振り返ると、そこには一人の少年が立っていた。年は同じくらい。黒髪は少し長めで、前髪が額に掛かっている。手には分厚い問題集が一冊、ぎゅっと抱えられていた。
「ブランコ、空いてる?」
「あ、うん。どうぞ」
天音は慌ててブランコから立ち上がる。だが少年は、首を横に振った。
「いや、そっちじゃなくて。隣に座ってもいい?」
その言い方が、何故か擽ったかった。
「……いいよ」
二人並んでブランコに腰掛ける。ぎこちない沈黙。鎖が擦れる音だけが、耳に心地良く響いた。
「その本、勉強?」
天音が話を振ると、少年は肩を竦める。
「うん。家、勉強ばっかなんだ。毎日深夜二時まで勉強。だから、逃げてきた」
「逃げてきた?」
「うん。あのままだと、気が狂うからさ」
少年が冗談めかして笑う。けれど、その笑いの奥には、薄い影があった。
「家にいるの、嫌い?」
「嫌い……っていうか、苦しい。問題集とか、テストとか、点数とか、そういうのばっか見られてる気がして。僕が何考えてるかとか、何したいかとか、聞いてこない」
その言葉は、天音の胸にそのまま突き刺さった。
――あ……おんなじだ。
家にいたくなくて、外に逃げる。自分を見てくれない大人達。形こそ違えど、少年の状況は天音と良く似ていた。
「わたしも、だよ」
思わず口が動いていた。
「お父さん、お医者さんで。お母さんは弁護士で。二人ともずっと忙しくてさ。わたしが何しても、『後でね』って言うだけで……。だから、家にいてもつまんない」
少年が、驚いたように目を見開いた。
「……そっか」
「うん。家で一人でいると、なんか、悪い子みたいな気分になるの。なんでだろ」
「悪い子じゃないよ」
少年は即座にそう言った。迷いが一切ない声だった。
「逃げてくるのだってさ、本当は頑張ってる証拠だと思う。苦しいのに、ちゃんと感じてるから、ここまで走ってこれるんだよ」
天音は目を瞬かせた。そんな言葉をかけられたのは、初めてだった。
「……へんなの」
褒められ慣れていないから、頬が熱くなる。
「ねえ、君、名前は?」
「僕?僕は――」
少年は一拍置いて、少しだけ含羞んだ。
「雪村雪渚」
「……せつな?」
天音はその音を、舌の上で転がす。
「なんか、かっこいい……じゃあさ」
天音はブランコから立ち上がり、少年の前に回り込んだ。夕陽を背負ったシルエットの向こうで、雪渚の目が瞬く。天音は何度か口の中で転がし、それからぱっと顔を輝かせた。
「せつな……せつな……じゃあ!『せつくん』!」
「……は?」
余りに唐突な命名に、雪渚は目を瞬く。
「せつな、でしょ?せつくん。うん、かわいい」
「いや、可愛くなくていいんだけど……」
困ったように眉を寄せるその顔が、天音には少し可笑しくて、つい笑ってしまう。
「君は?」
「え?」
「君は?君の名前」
「あ、天音。雨ノ宮天音」
「……いい名前だね」
素直な声色に、胸の奥がぽっと熱くなる。自分の名前を褒められたのは、多分初めてだった。
「ねえ、せつくん」
「……その呼び方、変えないつもりなんだ」
「変えないよ。もう決めたもん」
天音は胸を張る。
「せつくん、逃げてきたならさ、一緒に遊ぼうよ。逃げてる間くらい、楽しくしなきゃ損だよ?」
雪渚は一瞬、何か言い掛けて、止めた。その代わりに、ゆっくりと立ち上がる。
「……そうだね。じゃあ、何して遊ぶ?」
「鬼ごっこ!」
即答だった。雪渚の目が、ぱちぱち瞬く。
「ハードじゃない?」
「せつくん、逃げてきたんでしょ?逃げ足速くなきゃ、また捕まるよ」
にやり、と笑い、天音はスタートラインも宣言せずに走り出した。
「ちょ、ちょっと待って──!」
慌てて追い掛ける雪渚。二人の足音が、公園の土を蹴る音と混ざって響く。
その日、夕暮れが完全に落ちるまで、天音と雪渚は走り回り、笑い続けた。
それから、公園は天音にとって「ただの公園」ではなくなった。雪渚──せつくんに会える場所。家では聞いてもらえない話を聞いてもらえる場所。勉強ばかりの家から逃げてきた少年と、仕事に忙殺された両親を持つ少女が、互いの寂しさをそっと擦り合わせる場所。
ブランコで遊んだり、競走したり、砂場で巨大な城を築いたり。時には、雪渚が持ってくる問題集を一緒に解いた。
「ここわかんない」
「これはね、こうやって式を整理すると……」
「うわ、せつくん頭いい!」
「そうでもないって。覚えさせられてるだけ」
笑い合う時間の中で、天音の胸には少しずつ、温かなものが積もっていった。
――せつくんがいるなら、わたし、がんばれる。
いつしか、そう思うようになっていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺は必死で村を駆けていた。息が上がるのも構わず、A――天音ちゃんの家へと走る。さっき訪れたばかりの玄関扉は、半端に開いていた。胸騒ぎが一段と強くなる。
――俺は馬鹿か。Aは――天音ちゃんは俺のことを好いてくれていた。だとしたら、俺との記憶は残っていたってことじゃないのか。天音ちゃんは、俺に自力で自分のことを思い出して欲しかったんじゃないのか。
そっと隙間から中を覗くと、そこには天音ちゃんと、大柄な男が向かい合って立っていた。男は下卑た笑みを浮かべ、低い声で告げる。
「相変わらずイイカラダしてんなぁ。はは、勃ってきたぜ……」
「……………………」
「ヤらせろよ」
場違いなほど軽い言葉。けれど、その圧は暴力そのものだった。
「――はい」
A――天音ちゃんが、小さく答える。
白い指が、メイド服のボタンへと伸びた。躊躇うように、一瞬だけ止まり――それでも、彼女はそれを外していく。布が滑り落ち、肩口から覗いた白い肌が、夕暮れの光に淡く晒される。
胸の奥で、何かが音を立てて弾けた。
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