15 魔力臓器の世界・ファイブ・ウィザード
出店には30cmのゴブリンの心臓が売っている
ここは新たな世界、魔力臓器の世界、ここでは魔力を発する臓器が売られている。
人々は魔力臓器を媒介に魔法を行使するのだ。
アナトリ・キオ王国
白と灰のローブを着た人々が集まっていた。
その一団の中の一人が声高に熱弁する。
この世界はあと少しで終末を迎えます!ですが我らエイレースケイア原理主義に入信すれば滅びを生き残ることができるのです!
白いローブの男が横から口を挟む
このペテン師め!エイレースケイア近代主義こそ!救い!みなさん騙されてはいけませんよ!
エイレースケイア?ミリアたちがいるのか?
まさか彼女たちもこの世界に来ている?
ははっ、乾いた笑いも漏れるというものだ。
異世界にまで布教しているというならずいぶん壮大な話ではあるが、いまさら会おうとも思わない。
ま、どうでもいいか・・・。
どうでもよくないことだとわかっていても自分を納得させ目を背けるためにどうでもいいかとスタンスを作っていく。
灰のローブをかぶった女が言った
大司教!ピエールカルダン様です!
なんか巨乳のおばさんが現れた。美人ではあるが、誰だあれは?ミリアでもプリズマでもない。
それだけ見て本当にどうでもよくなった。
新たな世界に来ても、ぬぐえない弟子たちの仕打ちを思い出すと夜も眠れず、どこか投げやりな自分をはらえない。
そんな矢先、いつかは起こると思っていた問題が起きた。
トゥアレタとケンカした。
闇魔術で悪魔を呼び出すだなんて!正気ですか!汚らわしい!
それが闇魔術だから!学びたがったのは君じゃないか!
だって!それはマスターアカーテスがいたからで!聖術を学び世界を救う。そう誓ったのに今さら汚れを力にするなんて考えられません!
それならマスターアカーテスは闇魔術を知ることで邪悪な敵を知ることにつながると言うはずだ!
言いませんよ!
ピュエロスが紙に書き込んだ幾何学的な模様、悪魔の名を書き込んだその護符を手に叫ぶ、
タリズマンよ!我が呼び掛けに応えよ!
闇魔術・カミオン・スコタディ・スフェラ!!
手の内のタリズマンが焼き付くと同時に10cmくらいの手のひらサイズの闇の玉が飛んでいき闇が木を隠そうとする。
すぐ横でピュエロスが闇の玉を打ち出してみせる。
ほら、見なさい。君がいつまでもそうやって駄々をこねているから同期のピュエロスはすでに闇魔術を使いこなし始めてる。まったくピュエロスはえらい。
トゥアレタ君だけ遅れているがそれでいいのか?
ピュエロスも困った顔で言った。
トゥアレタ、そんなに聖術にこだわらなくてもいいんじゃない?
よくないの!わかるでしょ!
トゥアレタがピュエロスにまで噛みつく
トゥアレタいい加減にしなさい。
その言葉が思いのほか彼女の逆鱗にふれたようで
もう限界です!出ていきます!
えっ!ちょ、ちょっと!トゥアレタ!待ちなさい!
さようなら!
トゥアレタは感情のままに宿を飛び出してしまった。
マスター!私追いかけます!
付き合いきれない!放っておきなさい!
そう言ったのにピュエロスもトゥアレタを追って出ていってしまった。
それからトゥアレタもピュエロスもいつまで待っても戻って来なかった。
二人がいなくなってからしずかになる。
数日もたたずに気がつく。
やることがないのだ。もともとやることを探していなかったのもあるが輪をかけて体が動かない。無気力になってしまい半日家でぼーっとしてしまう。
軽く鬱病になっていたのかもしれない。
するとふとしたときに嫌な記憶を思い出してしまう。
弟子たちから拒絶された記憶、歪んだ妄想、より悪意ある言葉になって頭の中で再生された。
何度も、何度も。
時には弟子たちの幻覚が僕を蔑んだ。
マスターゼロスあなたが憎い!
どうして助けてくれなかったの?
あなたはマスターなどではない。
僕は悪くない。僕は悪くない。僕は悪くない。僕は悪くない。だいたいあんな状況どうしろと・・・。
ブツブツブツブツブツブツと言葉を口ずさみ、町中を歩いていく。
思い出すほどに傷つき、また思い出すほどに傷つく。
最悪な気分だった。
おい!
ダン!
突然、路地裏に放り投げられた。
日の射さない、暗がりだ。人混みからも死角になっている。
僕に何か用?
無言で殴られる。
憂さ晴らしかはたまた物取りか。
やられるままに殴らせておく。
まったく痛くない。防御力755もあるのだ。当然だ。
ドゴ!ドゴ!ドゴ!ドゴ!
ふぅ!すっきりしたぜ!
むしゃくしゃしてたんだ。
おい!こいつすげぇぜ!金貨がザックリだ!
おらぁ!
もういいだろ!死んじまうぞ!
そうだな!
わりぃな!そう言って男は買い物袋からリンゴをひとつ取ると見せつけるようにかじって去っていった。
リンゴはあまり好きじゃないしミカンが取られなかっただけよしとしよう。
僕は持ち物を奪われたのに、空を見上げていた。
金くらいならいくらでもくれてやる。
鼻から血がたれる。1のダメージ、血が出るのはゲームで例えるならエフェクト的な現象でしかない。ダメージが低くとも血は出るのだ
うあ!こいつ!ぐあ・・・。
てめえええ!うあ!ごはっ!ぎい!ぐえ・・・ぼはっ!
バク転して空中で二連撃、さらに肩に乗って大車輪で頭を地面にたたきつける。
見るも鮮やかな動きで男たちを蹴り倒していく謎の女
可憐だった。
女が目の前まで来ると腕をつかまれ立ち上がらせられる
凛とした雰囲気のある芯の強そうな女だ。
しっかりしなさいよ!ほら、大丈夫?
パンパンと膝の泥を払ってくれる。
あ・・・ああ・・・ありがと・・・。
男たちはこの女にボコボコにされたようだ。すぐそこで失神している。
毛ほどもいたくなかったのだが、見た目ボロボロに見えれば心配されるには十分か。
ゼロスです。あなたの名前は?
私はオッぺリア。あんた、男なんだから自分のことくらい俺って名乗りなさいよ。そんなんだからこういうやつらに目をつけられるのよ
ははっ、手厳しいな。
苦笑いをしながら自己紹介が終わったところで気が付く。
プリズマ・・・?
え?
オッぺリアと名乗った女は見た目がプリズマとそっくりだった。
2mはある大柄、人を殴れそうなほど大きな胸、耳にピアスもしている。髪は長く髪の色も赤毛、それにエプロンだ。
目をこらしてみたがわからない。
ただのそっくりさんかもしれないし。
異世界に自分と似た人間がいる。
そんなどこかの本で読んだような可能性がふと頭をよぎる。
よくはわからない。
すみません。知り合いにあまりに似ていたもので
へえ、そうなんだ。
そうだ!いまから家来る?
あんた仕事してなさそうだし。紹介するわよ!ちょうど人手が足りなかったのよ!
えっ、えっと~・・・。それはどうだろうか、と考えていると
決まりね!
えっ!
いいじゃない!ね!
オッペリアさんに手をひかれあとをついていく。
虚無感で満ちていた自分の世界が広がっていく。そんな気がした。




