表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/2

01話 島流し生活初日

「ぼくは無実なんです!」


 とてつもない暴風雨に見舞われて、大雨が降りしきる中、船は島に到着。

 ぼくたち10人の男は船から岸へとおろされた。

 嵐のせいで船はぐわんぐわん揺れて、気分は最悪なんだけど、今は弱音を吐いてる場合じゃない。

 どうにかして、ぼくの無実を信じてもらわなくちゃ。


「お願いします。ぼくをここへ置いてかないでください!」

「うるせえ、黙れ!」


 屈強な警察官にどかんと蹴られて、ぼくは転がる。

 あぶない、あぶない!

 あとちょっとで海の中に落っこちちゃうところだったじゃん!

 だけど警察官はぼくにあわれみなんて向けてくれないし、それどころか唾を吐いて、


「罪人がごちゃごちゃ喚いてんじゃねえ!」

「違う……ぼくは本当に罪を犯してなんて――」

「じゃあなんで有罪になったんだ?」

「裁判官がぼくの話をきちんと聞いてくれなくて、それで――」

「ふん。そんな怖がることはないだろ。なんたって、お前は……」


 警察官は警棒でぼくの顔を撫でる。


「こんなかわいい顔してるんだからよ。この島には頼もしい罪人がいっぱいいるんだぜ。そいつらに体でご奉仕すりゃあ、悪いようにはされないだろう」

「ひいぃ」

「たっぷりかわいがってもらえよ」


 にやりとわらって、警察官は船の扉を閉めた。

 そして船はぽーっと大きな汽笛を鳴らして、島から遠ざかっていった。

 岸に残された10人。

 みんな、ぼくと同じように、


(悲しい想いに包まれてるのかな……)


 と思ったら大間違い。


「脱走しようぜ」


 島に到着して早々、もうこんな話を始めたやつがいる。

 他の人たちは真面目に受け取らず、へらへらしてるだけ。

 そのうち言い出しっぺはイライラしだした。


「どうした? 何をぐずぐずしてんだ? 行かねえのか?」

「行きたきゃ行けよ」

「俺は本気だぞ」

「ははは」

「意気地なしどもめ」


 男の一人が海に飛びこんだ。

 嵐で海は荒れている。

 大丈夫かな?

 大丈夫そうなら、ぼくも一緒に逃げちゃおうかな?

 だけど、みんなげらげら笑ってる。


「バカだな。本当に飛びこむなんて」


 何がそんなにおもしろいんだろ?

 その謎は次の瞬間に解けた。


「あっ!」


 泳いでる男の近くで、大きな生き物が海面から顔を出した。

 クジラでもないしサメでもない。

 形は細長くてアナゴっぽいんだけど、その大きさが尋常じゃない。

 水の上に出ているだけでも10……いや20メートルはあるんじゃないかな。

 そいつが、脱走中の男を一口で丸呑みしちゃった。


「生で見る魔物は迫力が違うな」


 ぼく以外の犯罪者は口笛を吹いたり、大声をあげて笑ったり、目の前で人が食い殺されたにしてはやけに平気な様子。

 ぼくなんて体が震えちゃってるよ。

 言葉も出てこない。


(おしまいだ……)


 絶望した。

 あんな巨大な魔物がいるんじゃ、泳いで逃げるなんて絶対にできっこない。

 ぼくはもう一生この島から出られないんだ。

 人生終了。

 ああ……。


「あー、おもしろかった」


 ぼく以外のみんなは平然とした面持ちで、


「んな簡単に脱獄できりゃ島流しなんて成立しねえっつーの」

「あいつ、ここが異世界島だってこと忘れてたのかな?」

「なあ。いつまでもここで雨に打たれてたら風邪引いちまう。どっか雨宿りできるところ探そうぜ」

「だな」

「お前も来いよ、お嬢ちゃん」


 犯罪者の一人がぼくの腕を引っ張った。

 お嬢ちゃんじゃないんです、なんて訂正する気力も湧いてこない。

 ぼくたちは移動を始めた。

 海岸のすぐ近くは森になってて木がいっぱい生えてる。

 とりあえず木の下に行くと、葉っぱが屋根の代わりになってくれて、少なくともさっきよりはましになった。

 だけど……


「不気味だな……」


 9人全員が同じことを思ってるみたい。

 そうだよね。

 薄暗いし、変な鳴き声とか聞こえてくるし、見たこともない植物が生い茂ってるし。


「てか、やろうぜ」

「え?」


 ぼくをここまで引っ張ってくれた男がズボンを下ろし始めた。

 な、何?

 何がおこなわれようとしてるの!?


「さっき、おまわりも言ってたろ? 頼もしいおじさんにご奉仕しろってさ」

「あ……」


 そういうことか。

 もちろん、


「嫌です……」

「じゃあお前今日からここで一人で生きていけんのかよ?」

「う……」

「自業自得なんだよ。罪を犯したから島流しにされたし、これからめちゃくちゃにされるんだよ」


 ズボンの次にパンツが下ろされ、モノがあらわになる。

 ヤバイ。

 ものすごい状態になってる。

 これ絶対ぼくを壊す気満々じゃん。


(考えてみれば……)


 この人たちは犯罪者なんだ。

 どんな罪かは知らないけど、とにかく危険なやつらなのは間違いない。

 いたいけな中学生をオモチャにしちゃうくらい朝飯前なんだろう。

 でも、ぼくは違う。


「無実なんです!」

「よく言うぜ」


 別の男が言った。

 この人は地べたに座りこんでいて、ズボンを下ろしてはいない。

 ぼくを見つめて、


「ニュースで見たぞ。あんただろ。元アイドルの殺人鬼ってのは」


 途端に空気が一変する。

 みんなのぼくを見る目が変わる。


「かわいい見た目と違って、えぐい罪状なんだな」

「そりゃ島流しにされるのも無理ないだろ。何が無実だ、バカが」

「俺なんてたかが窃盗で島流しなんだが? おかしくねーか?」

「初犯じゃねーからだろ」

「何でもいい。とにかく俺はやるぜ。島流しの判決が下った時は、もう二度と女にありつけないと思ってたが、ついてる」

「ああ。そいつ、ついてるよ」

「あ?」

「ちんぽ。そいつ男だから」

「!?」


 またみんなの目の色が変わった。

 大きく目を開いて、上から下までじろじろとぼくを見る。

 ぼくが男だって信じられないみたい。

 まあ、でも自分で言うのもなんだけど無理ないよね……。

 髪は長いしセーラー服とスカート着用だし。


「マジかよ……女にしか見えねえ……」


 もろ出しにしていた男のモノがみるみるうちに萎えていく。


「いくらかわいくっても男じゃなあ……」


 バイじゃないんだ。

 よかった~。

 露出男は周囲から、


「その汚ねえモノをさっさとしまえ」


 となじられる。


「いや、ついでだから小便するわ」

「離れたところでやれよ」

「ちっ。うっせーな。そんくらい言われなくてもわかるっつーの」


 と、男はぶらぶらさせながら二、三歩あるいて立ち止まった。

 当然、他の犯罪者連中からブーイング。


「おい。もっと向こうでやれよ」

「……」

「……おい?」


 返事がない。

 どうしたんだろ?

 心配してたら、彼は後ろ向きに倒れた。


「なっ……!!」


 ぼくも含めて8人全員が青ざめた。


「首から上がなくなってやがる……」


 そして血がぴゅーぴゅー噴き出てる。

 おしっこを垂れ流してる。

 完全に死んでるんだけど……どうして?

 誰かが気づいた。


「いるぞ……すぐそこに……何かが!」


 はっとした。

 本当だ。

 ただでさえ曇り空で、しかも木々がたくさん生えてるせいで、ここはずいぶんと暗い。

 見通しの悪さは闇の中にいるのと変わらないかもしれない。

 だから、こんなに接近されるまで気づかなかったんだ。

 でも今はわかる。


「はう……はう……」


 濃厚な息づかいがすぐそこから聞こえてくる。

 やがて闇の中から姿を現したのは3つの顔を持つ巨大な犬。

 さすがにこれはぼくでも知ってる。


「ケルベロス……!」


 普通なら、そんなの創作の中にしか存在しない。

 でも、この島にならいてもおかしくない。

 だって、ここは異世界島。

 犯罪が多発して刑務所がパンクしてるからって理由で、政府が造り出した、犯罪者を収容するためのファンタジー空間なんだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ