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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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自分からそれを放棄した人の言葉なんて

最近は『国を守る』とかご立派なお題目を声高に叫ぶ人も多いみたいだけど、そういうことを言ってる人で、『結婚もしない』とか『子供は要らない』とか言ってる人がいたら、『国を守るとか、嘘じゃん』としか思わない。


国ってのは、人の集まりなんだよ? 人がいなくちゃそれは<国>とは言わないんだよ? 自分に代わって国を形作る<人>を育てないと、そんなの、『国を守る』ことになるなんて僕は思わない。


『自分の老後の面倒をみさせる為に子供を作るのか?』とか、


『税金や年金保険料の為に子供を作るのか?』とか、


そんなこと言う人がいるけど、ただの論理のすり替えだとしか思わない。いかにも『自分はそういうことを押し付けられる子供を案じてます』アピールをしてるようにしか見えないよ。


僕は美智果に僕の老後の面倒をみさせたいとは思わない。でも同時に、<自分の力だけでは生きていけなくなった家族を見捨てるような人間>には育てなかったつもりだ。年老いて自分の力だけでは生きていけなくなった自分の親を見捨てないのが、悪いことなのか? 酷いことなのか? 『自分の老後の面倒をみさせる為に子供を作るのか?』って思うということは、『自分は、自分の親が一人で生きていけなくなっても手助けもしない』って言ってるのと同じだと思わないのかな?。


僕も、本音を言えば自分の実の父親が体が不自由になっても手助けしたいとは思わない。だってあの人は、母を騙して苦しめた人だから。僕がまだ幼い頃に家を出ていって養育費すら一円も払わなかったような人だから。僕をこの世に生み出しておいてロクに責任も負おうとしなかった人だから。


それを薄情とか親不孝者とか思うなら思ってくれて構わないけど、同時に、母については放っておこうとは思わない。身の回りの世話までしようとは思えないとしても、生活を支援し、施設に入る手助けをし、美智果を連れて顔を出すくらいのことはしたいと思う。だって、その程度のことはしてもいいと思えるくらいには母は僕を大切にしてくれたと思うから。


税金や年金保険料を払うのは、『国を支え、国を守る為』なら当然のことだよね。そして、万が一、有事の時に国を守る為に戦うのも人間だよね。ロボットが守ってくれる訳じゃないよね?


『国を守る』とか言うのなら、自分が率先して結婚して子供を作らなきゃおかしいよね? ううん、結婚しなくても子供を作らなくてもいいけど、少なくとも<次の世代を育てる>か、<次の世代を育てる手助け>をしなきゃおかしいよね?。そういうことはしたくないって言いながら『国を守る』なんて、口先だけにも程があるよ。


僕は、日本という国に生まれてよかったと思う。だからこそ、これからも日本という国が続いてほしいと思うからこそ、子供は生まれるべきだとも思ってるんだ。


そして、『生まれてきて良かった』とも、思わせてあげたい。


僕は今、自分にそれができる自信が持てたよ。だからこうして美智果を育ててるんだ。


自分からそれを放棄した人の言葉なんて、僕には届かない。



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