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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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代われるものなら代わってあげたい

買ってきた焼きプリンを、横になったままの美智果に僕が食べさせてあげる。四個入りのを買って来たけど一個食べただけで「ごちそうさま」と言った。いつもなら四個とも一気に食べてしまうのに。


それでも食べられるようになったのなら一安心だと思って、僕は少しホッとした。顔色も赤いけど不安を感じるようなものじゃない。乗り物酔いが酷い時とかはくっきりとクマとかが浮かび上がって一目見て普通じゃない顔になってたりしたし、そういうのとは確かに違ってたから。


本当は、代われるものなら代わってあげたい。


この小さな体で病気の苦しさに耐えなきゃいけないなんて、見てる方も辛い。だったら自分が苦しい方がまだ気が楽だ。


翌日も、熱はかなりマシになったけどとても学校に行けるような様子じゃなかった。だから学校に休むことを伝えて、夕方、今よりは楽になってるようならかかりつけの医院に行こうと思う。


お昼は『冷たいうどんが食べたい』と言うので、うどんの麺を茹でてそれを冷やして冷たいうどんつゆを掛けたものを用意してあげた。それをつるつると少しずつ食べる姿を見守った。


もしインフルエンザとかだったら、美智果がちょうど治った頃に僕も発病する感じかな。でも同時じゃなければそれでいい。今日、診察してもらったら分かるかな。


夕方、午後の診療が始まる頃、タクシーを呼んでかかりつけの医院に行った。美智果が辛そうだったので、膝に抱いてあげた。僕の胸に頭を預けて「ふうふう」と呼吸が少し早かった。


名前が呼ばれていつもの先生が、


「どうしたのかな、美智果ちゃん」


と名前を読んでくれた。最近はあまり来なくなったけど、小さい頃は割と頻繁に診てもらったし、妻が亡くなった後で来た時にそのことを告げたら看護婦さんが泣きながら、


『美智果ちゃん、頑張ってね』


と言ってくれるくらいに顔馴染みだった。


鼻に綿棒を挿し込んで粘膜を取り、インフルエンザの簡易鑑定を行ってもらった。でもそれでは反応が出なかったから、検体を検査に出して詳細に調べてもらうことになった。簡易検査では分からない種類のインフルエンザもあると言われた。


「明日には結果が分かりますので、来てください」


と言われ、今日のところは解熱用の頓服だけ処方してもらって帰ってきた。


明日もまたと思うとちょっと大変だなと思ってしまったけど、もしインフルエンザだったら一週間ほど休むことになるからね。こういう時は在宅仕事でつくづくよかったと思わされたのだった。



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