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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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遺族がどう感じてるのかなんて

たとえ家族が殺人鬼に殺されたとしても、家族の誰が殺されたかによって、犯人に対する感情はまったく違ってしまうと思う。


だから僕は、『遺族の気持ちが分かる』なんて言えない。その遺族がどう感じてるのかなんて、本当のところは分からない。


それが現実だと思う。


遺族になった訳じゃない人が死刑反対を唱えてて、でも家族を殺されて死刑賛成に回ったとしても、僕はそれを責める気にも『それ見たことか』という気にもなれない。それよりもむしろ、自分が被害に遭った訳でもないのに『死刑にしろ!』と騒ぐ人間の方が気持ち悪いとさえ感じる。


僕はそれを、ちょうど一年ほど前に起こった、母親の葬式の時に父親を包丁で刺したっていう娘の事件で改めて感じた。


あの事件では、それこそ加害者と被害者は実の肉親であり家族だった。だから刺された父親がもし死んでたとしたら、刺した方の娘は、加害者であると同時に被害者遺族でもあるっていうことになる。


なのに世間は、特にネットの中では、刺した娘を『母親の葬式で父親を刺すような気畜』と言って、死刑にしろの大合唱だった。加害者自身が遺族になるのに、そうじゃない事件の加害者に対するそれと同じようにね。


それを見てやっぱりって実感したよ。<遺族の気持ち>なんて、ただの口実だったんだって。本来は<遺族>になる筈の娘が父親を刺さなきゃいけないほどの<何か>があった筈なのに、それにはまったく目も向けないでただただ『死刑にしろ!』って罵りたいだけだったんだって。


『家族を殺されたら犯人を死刑にしてほしいと思うのは当然だろ』って?


じゃあ、どうしてあの事件の娘は、確か《いとうれいな》伊藤玲那とかいったかな? 彼女は、『殺されたら犯人を死刑にしてほしいと思うのが当然の筈の家族』を、自分の手で殺そうとしたんだろうね?


一口で<家族>って言ったっていろんなのがある。仲のいい家族もいれば、それこそ殺し合いをし始めるくらいの家族もいる。そんなのは当人にしか分からない筈なのに、他人が勝手にその気持ちを斟酌するのなんて、傲慢そのものじゃないかな。


遺族が『犯人を死刑にしてください!』と言うのは分かる。その関係が本当はどうだったかなんて他人である僕には分からないから、そんな風に思える家族だったんだろうなって受け止めるだけだ。でもだからこそ、遺族じゃない他人が『犯人を死刑にしろ!』と罵るのが気持ち悪いし嘘臭く感じられるんだ。


こんなことを言うときっと反発を招くだろうし、ネット上に上げたりしたらそれこそ袋叩きにされるかもしれない。


でもそんな風に過剰に反応するということは、図星だったんだろうなとしか僕は思わないよ。



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