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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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悩まされた覚えが僕にはない

他人から見ると僕は、<子供に自分の人生をすべて捧げてる>ように見えるらしい。


だけど僕自身は、それを少しも苦痛に感じてない。むしろ誇らしくさえ思ってる。だって、何度も言うけど僕は、<美智果オタク>だから。


以前にも言ったと思うけど、イヤイヤ期とか反抗期とかで悩まされた覚えが僕にはない。でもそれはもしかすると、美智果が駄々をこねてる姿すら愛おしく感じてて、僕の方がイヤイヤとか反抗だとか思ってなかっただけなのかもしれないと、イヤイヤ期や反抗期で悩まされたという人の体験談とか見てると思ってしまった。


スーパーに買い物に行った時なんかに子供の駄々に明らかに苛々してる親らしき人の姿を見てると、『もったいないな』と思ってしまうこともある。何しろそれは、子供の方からちゃんと自分の気持ちを伝えようとしてくれてる姿なのになって思ってしまうんだ。僕にとって子供が駄々をこねてる姿は、微笑ましいものでしかない。自分が伝えたいことを上手く伝えられなくてそれがもどかしくて自分でもどうしていいか分からなくなってしまってるだけだから。


一生懸命なんだよ。頑張ってるんだよ。それが上手くいかなくてどうしようもなくなってるだけなんだよ。


すごく、いい子じゃないか。


一見すると大人しくていい子そうなのに実は、っていうのに比べるとよっぽど分かりやすくて扱いやすいよ。だってさ。話を聞いてあげれば納得するんだよ?。自分の伝えたいことが伝わったと感じれば納得するんだよ?。駄々をこね始めた早いうちに話を聞いて理解してあげればその時点で収まるよ。美智果があんまり酷い駄々をこねなかった理由の一つがこれだと思う。僕がいい子いい子って言ってる美智果だって、たくさん我儘を言ってきてたからね。


抱っこして欲しいとか、寂しいとか、構ってほしいとか、眠いとか、疲れたとか、お腹空いたとか、あれが食べたいとか、これは食べたくないとか、その時の自分の気持ちとか感じたことを言ってくれてたよ。それを我儘と言うのなら、美智果はとても我儘な子だったと思う。


だけど僕は、そうやって我儘を言ってもらえること自体が嬉しかったんだ。ちゃんと自分の気持ちを伝えようとしてくれることが嬉しかったんだ。だからそんなことでは苛々なんて殆どしなかった。


それだけだったんだなって、今では思う。


なんにも言わないのに何故か機嫌が悪いとか、そういうのの方がよっぽど難しいよ。僕は、そういうのは苦手だ。僕は他人の感情とかを察してしまう性質だけど、僕に分かるのは、機嫌が良いか悪いか、僕のことを好きか嫌いか何とも思ってないかくらいだし。


具体的なことは、やっぱりちゃんと伝えてくれないと分からない。


美智果は、それを伝えてくれる子だったんだ。



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