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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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自分を曝け出すことができない

今回は、途中でアニメショップに寄った以外は素直に真っ直ぐに自宅の最寄り駅まで戻ってきた。寒くてどこかに出掛ける気にはなれなかったというのもあるし、何より美智果が買ったCDを聞くのに忙しくてそれどころじゃなかったというのもある。


改札を出て夕食をどうしようかと思った時、美智果が「ラーメンがいい」と言ったので、駅構内にあるラーメン屋に入った。


「楽しかったか?」


席に着いた美智果を見ながら僕は問い掛けた。「うん!」と彼女は大きく頷いてくれた。


僕と母の間には、いまだに消えない見えない深い溝がある。母の内縁の旦那さんの間には、見えない高い壁がある。だけど、この子の様子を見る限りでは、そういうのを強く意識させない程度には上手くやれてるんだと思う。


どんな相手であっても、たとえ実の親兄弟であっても、僕と美智果がしてるようにおバカなやり取りをして大笑いできるような関係でいられるとは限らない。自分にとって完璧な人間でいてくれることなんて有り得ない。だから溝や壁や距離を感じながらでも、その上でお互いに折り合いをつけることは大事だと思う。


それもまた上辺だけの付き合いでしかないのは分かってる。だけどすべての人を相手に打ち解けるなんてこともできないし、する必要もないと思ってる。できれば素晴らしいかもしれなくても、誰もがそんなことできる訳じゃない。そして、できないからといって駄目な訳でもないと思うんだ。


上辺だけの付き合いなのに、『私達は信頼し合ってる』とか『素晴らしい関係だ』とか嘘を吐くから白々しくなるだけでさ。


自分を曝け出すことができない相手とは上辺だけの付き合いで、社交辞令だけで対処する感じでいいと思うんだ。僕と母、僕と母の内縁の夫である男性のようにさ。そこで無駄に噛み付いたって、ただ立場が違うからそうなってるっていう状況が変わる訳じゃない。相手が自分の都合に合わせてくれる訳じゃないんだ。自分が相手の都合に合わせることができないのに、相手が自分の都合に合わせてくれるのを期待するなんて、そんな考え方が許されるのは小さな子供のうちだけだと思う。


子供も、成長する中でそうじゃないっていうのを学び取っていくから。美智果にとっての<アイドル好きのリンちゃん>や、<意地悪なことを言ってきたアキちゃん>みたいに、あの子の思い通りにならない相手はちゃんといるし、そういう相手とも折り合って行かなきゃいけないことをあの子は学んでる。


それでいいと思うんだ。



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