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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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あげつらうこともしない

もちろん、母と一緒に暮らしているその男性に対して何か思うところがない訳でもない。彼自身、<非の打ちどころのない完璧な人間>という訳じゃない。ある部分では時代錯誤な価値観をいまだに持ってるから、細かいところを言えば不満もあるし。


だけど、そんなのは向こうも同じだと思う。気の利かない僕に対しては彼だって思うところはあるだろう。だからお互い様なんだ。そういう訳で些細なことを針小棒大にあげつらうこともしない。それができるから、母とも上手くいってるんだろうな。


お昼は近所のファミリーレストランに連れて行ってくれた。美智果を本当の孫のように思ってくれてるのが分かる。


ただここで、彼は、


「俺の分にドリンクバーを付けとくから、美智果ちゃんもジュース取っておいで」


とか言い出した。自分の分のドリンクバーで全員分のドリンクを取ってきてもいいと思ってるんだ。本人に悪気がないのは見れば分かる。でも、それは駄目なんだよな。


すると母が、


「それは駄目ですよ、お父さん。ドリンクが欲しい時はそれぞれ頼まないと」


と言ってくれた。実は、以前にも同じことがあって、その後に母に対して『それはルール違反。詐欺罪とか窃盗とかにもなりかねないから気を付けてほしい』と伝えておいたんだ。僕が直接言うと角が立つかもしれないから、母を通じてっていうのもある。それに何より、普段から一緒に暮らしてるから僕たちよりもこうやって食事に行くこともあるだろうし、そこで店とトラブルになったらそれこそ母や彼自身の為にならない。そういうのは早めに改める必要があると思うんだ。


母に言われて、


「ん、そうか? そんな細かいことは言わなくても…」


と少し不服そうにはしたけれど、彼もそれ以上はしつこくしないでくれた。こういう点からもまあ悪い人じゃないっていうのは分かる。ここで、


『何言ってんだ!? こっちは客だぞ!? それくらいサービスするのが当たり前だろ!』


とか逆ギレするような人だったら、たぶん、別れるように言ってただろうな。それ以前に母が見限ってたかもしれないけど。


こんな風に、彼も完璧な人じゃない。気のいい人なんだけど、悪意なく良くないことをしてしまう人でもある。でも人間なんて大なり小なりそういうものの筈なんだ。良くない部分は気付いた時に改めていけばいい。一面だけを見てあげつらってネットに晒しあげて袋叩きにする必要なんて僕は感じない。


まったく態度を改めない、法律なんて知ったことかというような人なら、それこそ<通報>すればいいだけだろうからさ。



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