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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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今年もいろいろあったようで

大晦日か。今年もいろいろあったようで、でも概ね平穏な一年だった気がする。


美智果は冬休みの宿題ももう終えて、後はただお正月をのんびりと過ごせばいいだけになってた。お祖母ちゃんの家に行くのは二日からだ。そこから二泊三日になる。僕は正月だからって仕事が休みになるわけじゃないけど、PCさえあれば向こうでもできる仕事だから困らない。


今日は美智果も夜更かしして、絶対に笑ってはいけない番組を見ることになる。僕自身はもうずっと以前から見てるから既にもういいかなっていう気分にもなってるけど、美智果が楽しみにしてるから一緒に見ることになる。


これも、いずれは別々に過ごすことになるんだろうな。今は僕の膝に座っていたいっていうのがあるからっていうのもあって一緒に見る訳だし。


でも面倒臭いとかそういう風に思ってる訳じゃないんだ。ただ、美智果の体が大きくなるにしたがって、その圧力が年々強くなってきてるなというのを実感させられて、たぶんそのうちに収まりが悪くなってくるだろうなっていうのもあるから。


今でももうそろそろ、美智果を膝に抱いて座椅子に座ってる状態がまあまあ無理がある状態かなっていうのも感じてきてる。そもそもこの座椅子は一人で座るためのものだ。二人で座るようには作られてない。今はまだ大丈夫でも、そう遠くないうちに座り心地も悪くなってるんじゃないかな。僕の膝に座ってることで、美智果自身の体重で自分の脚が圧迫されて痺れたりしてきそうっていうのも感じる。


小さくて体が軽かった頃には感じなかったことをいろいろ自覚させられるんだろうな。だけどそれも、成長の実感というものなのかもしれない。


やっぱり感じる。後ろから見た時の雰囲気がますます妻に似てきてるって。僕の記憶の中にある妻の後姿と重なってきてるって。この子はやっぱり、彼女の子なんだな。彼女が残してくれたんだなって。


テレビを見ながら、後ろから抱き締める。すると、ゲームをしてる時とは違って、甘えるように体を預けてきてくれた。


「パパ…」


「ん…?」


「大好き」


「うん、お父さんも美智果のこと大好きだよ」


もうすぐ、美智果の人生においては、こうして僕と二人きりの時間の方が長くなってしまう。僕が妻と結婚して一緒に暮らし始めた時間さえ、あと一年ちょっとで越えてしまう。そうだ。三人でいた時間は、たった六年ちょっとだったんだ。


短いな…短すぎるよ……だけどとっても充実した時間だったと思う。


僕に残された人生すべてを足しても足りないくらいかもしれないな。



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