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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
174/201

たとえ日記とか手紙とかが

僕は、妻と結婚するまでにも何人かの女性と付き合ってきた。すぐにフラれたのも含めても十人には満たないと思うけど。


だけど僕は、自分をリア充とか思ったことはない。決してコミュ力が高いわけでもない。むしろ人付き合いは苦手な方だと思う。単に、社交辞令がまあまあ身についてただけで。


あと、相手が自分に対して好意的かどうかが何となく分かるっていうだけかな。


だから、親しくなった女性が何となく自分のことを悪からず思ってくれてるのが分かると、そのまま付き合うことが多かっただけだ。


僕は元々、臆病なんだと思う。その所為で、相手が自分に対して好意を向けてるのか悪意を向けてるのか、それとも本当に何とも思ってないのかっていうのを察してしまってたのかもしれない。


そうなると、好意を向けられると僕もその人のことを好きになってしまうんだ。


ただ、その反面、悪意を向けられたり、何とも思ってないっていうのを感じてしまうと、僕も距離を置いてしまう。


だからか、フラれると僕も割とすぐに冷めてしまったりもした。なので、しつこくつきまとったこともないんだ。自分のことを好きじゃない人のことは僕も好きでいられないから。


そういう意味では、ストーカーと呼ばれるタイプの人の気持ちが僕には理解できない。自分のことを好きじゃない人を想い続けられるのは何故なのかが分からないんだ。


だけど、妻のことだけは今でも好きなんだ。あんなに罵られたのに、あんなに険しい目で見られたのに、好きなんだ。


それまでは、フラれただけですぐに気持ちが切り替えられたのに。


もしかするとそれは、妻が<亡くなった>からかもしれない。生きていれば、別れた後でももう気持ちが僕に向いてないってことを確認できるけど、亡くなってしまったから、それが一時的な感情だったのか、本当に僕のことを嫌いになってしまったのかっていうのが確かめられないからかもしれない。


妻が本当に僕のことを恨んでいたのなら、今でも僕に好かれてるのなんて迷惑なのかもしれないな。


でも、それが本当はどうだったのかなんて、もう永久に確かめることもできないんだ。


人が死ぬっていうのはそういうことなんだって分かる。確かめたくても確かめられないんだ。それができる可能性は<ゼロ>なんだ。


たとえ日記とか手紙とかが残ってたとしても、それが本当に本心からのものなのかどうかさえ、確かめられない。


妻の顔を見て、声を聴いて、態度や仕草を感じて、僕のことを嫌ってるんだって実感できたら諦めもつくのにな……


それが確かめられないから、諦めることもできないんだ……



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