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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
172/201

都合のいい部分だけを切り取って

人間は、ついつい自分にとって都合のいい部分だけを切り取ってそれを正しいことだと思い込んだりする習性があると思う。


議員の発言の一部だけを切り取って攻撃の材料にしたりするのもそういうのの一種じゃないかな。


実験結果の上手くいった部分だけを見て、どうしてそうなったのかを一から再検証もせずに『新発見だ!!』と大騒ぎしたりというのもそうかもね。


子供が親や教師の前だけで良い子のふりをしてる部分だけ見て『良い子ね!』ってやってるのもそれなんだろうな。


仕返しとか復讐とか、そういうのが『上手くいった』って思うのも、実はその陰で起こってる都合の悪い部分を切り捨てて、都合のいい部分だけを切り取って、『上手くいった』って言ってるだけなんだとしか思えない。フィクションの場合は当然、そういう部分しか描写しないし。


それを見て仕返しとか復讐が必要だとか考えるというのがもうおかしいよ。それって、完全にフィクションに影響されてるってことだよね。以前にも言ったと思うけど、犯罪が起こった時にフィクションの影響を否定するのなら、フィクションを見て仕返しとか復讐するのが正しいと考えたりしない筈だよね。一方では影響を受けながら、もう一方では影響なんて受けないとか、そんなムシのいいこと言わないよね。


良い影響を受けることもあるのなら、悪い影響を受けることだってあるんだよ。どっちかだけなんて現実的じゃない。


だから僕は、敢えて良いことも悪いこともなるべく包み隠さず美智果に見せるようにしてる。美智果の大好きなイルカが、実は仲間のイルカをイジメ殺したりすることもあるっていう事実も誤魔化さずに教えてる。イルカを食べるという食習慣もあることも教えてる。


僕だって、綺麗なばかりの善人じゃないってこともね。


でもだからこそ、僕は美智果の全てを受け止めるんだ。あの子が生まれたことで得たものもあれば失ったものもあるという事実もひっくるめて受け止めるんだ。僕が立派な人間じゃないからこそ、<僕にとって都合のいい完璧な良い子>じゃないあの子を受け止めるんだ。


良いところも悪いところもあるのが当たり前。それは人間でも社会でも同じ。理想に近付こうとするのは必要だけど、それが実現することは多分ないという現実も受け止めなきゃいけない。


その為には、都合のいいところばかり見てちゃいけないんだってことをあの子にも教えるんだ。


『フィクションなんて嘘』っていうこともね。


そして同時に、その<嘘>の中にも事実があるということも。


それが本当に役に立たない危険な嘘なのか、それとも何かの役に立つ参考になる嘘なのかっていうのは、自分で検証して確かめていかなきゃいけないってこともね。



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