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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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もし自分が子供を産めるなら

正直言って僕は、まったく赤の他人のことなんて助けられるとは思わない。せめて自分のよく知る人でないと、自分にとって『この人なら助けてもいいかな』って思える人でないと助けられないと思う。


今日も、自分が産んだ子供をそのまま死なせて隠してた母親のニュースを見て、僕はそんなことを考えてた。


僕は、本当を言うとせめてあと一人、できれば二人くらいは子供が欲しいと思ってた。だけど妻が大変そうだったから無理強いはできないと思って諦めてた。もし自分が子供を産めるなら産みたいとさえ思ったりもする。


それなのに、この母親は自分が産んだ子供を死なせて捨てたんだな……


もし可能だったら、僕がその子達を引き取って育ててもいいという気持ちはある。だけど実際にはそこまで踏み切れない気もする。


だって、どこの誰かも分からない完全な赤の他人だから。


僕は決して聖人でもなければ博愛主義者でもない。自分にできることとできないことくらいはわきまえてるつもりだ。だから助けたいという気持ちがあっても実行に移せないだろうってことも分かってる。


ただ、もし、この母親と知り合いだったら。普通に友達だと思える程度に親しかったら。妻がいない今なら逆に引き取れる気がする。


僕の勝手な想いで妻に負担をかけるくらいなら諦めがついても、自分一人が大変になるだけならって。


血の繋がらない子供を愛せるのかって疑問もあるかもしれない。だけど僕は、自分と血が繋がってるから美智果オタクになった訳じゃない。そもそも美智果が生まれた時だって『僕の子だ』なんていう実感なんか本当はなかった。僕の体から出てきたわけでもないから実感がなくて当然だと思ってる。それよりもとにかく目の前にいる子が僕を必要としてくれてるんだって思ったら放っておけなかっただけだった。それだけなんだ。


血が繋がってるかどうかで大切かどうかを決める感覚は、僕には備わってない気がしてる。血の繋がりに拘る人にはこの感覚は理解できないかもしれないけど、それはお互い様じゃないかな。


もちろん美智果にも少なくない影響はあるのは分かってる。ヤキモチだって妬いてしまうかもしれない。だけど、今、あの子の前で赤ん坊を世話するのはそれ自体がまた学びの機会になるんじゃないかな。あの子自身が経験したことを客観的に見るという形で。


それに、そろそろ、自分が助けてもらうだけじゃなく、助ける側になることも少しずつ学んでいってほしい。単に守られてるだけの存在でいられるのは小さな子供のうちだけだと思う。いつかは守られる側から守る側になるんだからさ。


それが<成長する>ってことなんじゃないかな。



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