表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
158/201

そんなこと言ってまだ無理だろ

僕は美智果を守りたいだけで、束縛したい訳じゃない。あの子に依存してる自覚はあるけど、それでいいとも思ってない。


女の子の美智果と男の子だった僕の違いはあるとしても、僕は小学校の四年の時には一人でバスに片道四十分乗って遊びに行ったことがある。小さい子にお遣いさせる番組を見て、『こんな小さい子にできるなら自分はもっとすごいことができる』という意味不明な対抗心にかられたちょっとした冒険のつもりだったのかもしれない。


行先は、以前、住んでいたことがあった町なんだけど、丁度そこには当時僕がはまっていたプラモデルをたくさん置いてある模型屋があって、久しぶりにそこに行きたかったというのもあったと思う。


けっこう何度も行って、五年生の頃には自転車で二時間近くかけて行ったり、バス代がもったいないからっていくつもバス停を歩いて飛ばしたりもした。


一度、一人でとぼとぼ歩いてた時に、警察官に止められたことがある。名前と住所と聞かれて『○○くんじゃないの?』と知らない名前を聞かれた。その時は家出した子と間違われたのかなと思ったけど、今から思うと普通に捜索願の出てる子を探してたのかもしれない。だとしたら、その子はちゃんと見付かったんだろうか。


当時は今より安全だったと考えることもできるかもしれない。でも、警察官に名前を聞かれた時のことを考えてもあの頃から子供が巻き込まれる事件はあっただろうから、本当に安全だったのかは分からない。


あそこまでの無茶をしてほしいとは思わないけれど、親が思ってる以上には子供はいろんなことを考えて実行できるんだと思う。


不安も感じつつ、だけど任せても大丈夫かなと思ってる頃には実は大丈夫だったりするんだろうな。何より、本人が友達と一緒に行きたいって言ってるんだ。『怖くて無理』って言ってる訳じゃないんだから、信じてあげたい。


だけど、それでもし、事故とか事件とかに巻き込まれたら、きっと一生、後悔するんだろうな。


でも、妻の病気のことだってどうして気付いてあげられなかったんだって僕は今でも悔やんでる。妻はもう、三十も過ぎた大人だったのにね。だから何かがあったら、美智果がたとえ何歳でも後悔はするんだと思う。


だったら、本人が自分で『できる』って言うならやらせてみるのも必要なことなんじゃないかな。


『お風呂は一人で入れないのに?』って思ったりするけど、何もかも一律でできるようになる訳じゃないというのもあるんじゃないかな。


きっと、お風呂だってそのうち一人で入れるようになる気がしてる。


『一人で入ってみる』ってあの子が言った時に、『そんなこと言ってまだ無理だろ』と決め付けてしまわないようにしなきゃね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ