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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
157/201

自分で考えて判断して行動して

十二月か。今年もいろいろあったような気もしつつ、おおむね平穏な一年だったと思う。


今日は美智果は、好美よしみちゃんと真理恵まりえちゃんと一緒に映画を観に行ってる。刀剣の付喪神達が出てくる映画だ。


すごく楽しみにしてたらしい。まるでデートに行くみたいにうっきうきで出掛けて行った。


と思ったら、真理恵ちゃんから電話がかかってきて、


「美智果ちゃん、おうちにいますか?」


だって。待ち合わせのところに現れないって話だった。


美智果は携帯を持ってないからこういう時は不便なのは事実だった。だけど、僕が子供の頃はまだこれが普通だったと思う。便利に慣れすぎて不便に感じてしまってるだけなんじゃないかな。


でも同時に、早々に出掛けて行ったから、途中で何かあったのかと不安になってしまう。


不安な気持ちを抱えつつ、僕は待った。単に行き違いになってるだけの可能性の方が高いから。みんなまだ子供だからか、それぞれ思い込みで勘違いをしていることがよくあった。話が通じてないのに通じてると早とちりして失敗ということもちょくちょくある。


そういう失敗を繰り返して成長していくんだと思えば、あまり気にしすぎるのもどうかと思う。


もし、事故とかならあの子には保険証のコピーをいつも持たせてあるからすぐに身元が分かるんじゃないかな。そうなれば当然、うちに連絡がある筈だ。


だけどもし、誘拐とかだったりしたら……。


やきもきしながら待ったけど、結局、それから何も連絡はなかった。映画館で合流さえできなかったらその時点でまた真理恵ちゃん達から電話がかかってくるだろうと思ってたらなにもかかってこなかった。


それに美智果は携帯ゲーム機を持って出てる。公衆無線LANが使えるところに行けばメールもできる。そのくらいの知恵は持ってる子だ。実際、それで連絡を取り合うこともある。


夕方、「ただいま~」と上機嫌で美智果が帰ってきた。


「おかえり」と普通に出迎える。


「楽しかった~、めっちゃ面白かった~!」


嬉しそうなその様子を見てるだけで、心配してたことは吹っ飛んだ。


この子ももう六年生。あと数ヶ月で中学生だ。ずっと見守っていくつもりだけど、それでもこの子自身が自分で考えて判断して行動していかなくちゃいけない。


その為には、徐々にそういうことにも慣れていかないとね。


友達と一緒に映画に行くというのも、そういう練習の一つだと思う。


守りたい。だけど過度に干渉するのも違う。


その辺りのせめぎ合いが、親にはずっと付きまとうんだろうなと改めて感じたのだった。



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