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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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自分を『殺した』ってこと

子供の自殺が後を絶たない。


僕はそれが悲しい。どうしてそんなことになってしまうんだろうって。


それと同時に、自殺っていうのは結局は加害行為なんだっていうのも実感する。残された人に対する加害行為なんだって。


『自殺なんかで他人に迷惑かけるな』って言う人がよくいるけど、僕の言う加害行為ってのは、そういうのとはちょっと違う気がする。僕のはあくまで、亡くなった人の家族とか、近い人に対してのことだから。


もし、美智果が自殺なんかしたら、僕は他人に殺されたのと変わらないくらいにショックを受けると思う。そういう意味では殺人と変わらない。自殺するほどに追い込んだ人間に殺されたっていう意味でもそうだけど、何より亡くなった本人が自分を『殺した』ってことだから。


どうしてそんなことをしなきゃならなかったんだって、恨みにさえ思ってしまう気がする。


しかも、通り魔的な殺人と違って、事前にそれを防げる可能性はずっと高いだろうから、そういう意味でも防げなかったことに対するショックは大きいんじゃないかな。いや、間違いなく、防げなかった自分自身が許せなくなる気しかしない。


僕は美智果を守るって決めてた。それなのに、美智果がそこまで苦しんでたのに守ってあげられなかったなんてことになったらって想像するだけで頭がおかしくなりそうだよ。


だから本当に罪深いことだって気がするんだ。


だけど、それを選ぶ本人は、もうそういう判断ができない状態だから結局そうなってしまうんだろうな。そういう状態になってしまったら手遅れなんだ。そうなる前に手を打たないと。本人に冷静な判断力があるうちはそんなことしないだろうから。


その為に、僕は美智果のことを見る。普段のあの子を知ってないと、様子が変わったことにも気付けないと思うから。


医師がレントゲンを見て病気を判断できるのは、正常な状態を知ってるからだという話を聞いたことがある。正常な状態を知っているからこそ、異常に気付けるんだって。


精神的なことも同じなんじゃないかな。普段の様子を、正常な時の様子を知っていればこそ、そうじゃなくなった時に気付けるんじゃないかな。


何かおかしいことがあった時だけ子供のことを見るんじゃなくて、普段から見ててこそ分かることがあるんだと思うんだ。


そう思えばこそ美智果のことを見てるっていうのもある。


実際には、それ以上に、ただ単に可愛いあの子のことを見ていたいっていうのもあるけどさ。


だけど可愛いと思うからこそ見てられるっていうのもあるとは思うかな。



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