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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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人を傷付けてみたかった

『人を傷付けてみたかった。殺してみたかった』ということで人を刺した中一の少年を警察が児童相談所に通告して保護されるという事件があったとニュースでやっていた。


僕はそれを見て、また陰鬱な気持ちになってしまった。


中一と言ってもその少年はまだ十二歳だったらしい。学年は上でも、美智果とほとんど同じ歳みたいなものじゃないか。そんな子供が『人を傷付けてみたかった。殺してみたかった』なんて、意味が分からないよ。


正直、僕にもそういう時期があった気がする。母とは殆ど会話もなく、鬱屈したものを抱えていた頃になんとなくそんなことを考えていたような気もする。だけど幸い、僕はそれを実行することはなかった。たぶん、それを実行しないといけないほどには追い詰められてなかったからだと思う。


そして今、美智果がもしそんなことを考えていたとしたら?。そんな欲求を抱え込んでるとしたら?。


僕は、他人を傷付けるくらいなら、その刃物を僕に向けてくれた方がずっと気が楽だとさえ思うだろうな。


だって、そこまで追い詰められるような状況に置いてしまったのは、他ならない僕なんだろうから。


元々の原因は外にあったんだとしても、そうなるまで美智果の気持ちや葛藤に気付かなかったのは僕なんだから。何より、そういう苦しみがあるこの世にあの子を生みだしたのは僕なんだから。


一応、今の時点では僕の知る限りではあの子にはそんな欲求はないらしい。誰かにムカついて『叩いてやりたい…!』と思うことはあっても、理由もなく誰かを傷付けたいとまでは思うことはないらしい。


それに、以前、『友達にヒドイこと言いたくないよ』と言って泣いたくらいの美智果が、何の予兆もなくそんなことをするとも思えない。


じゃあ、事件を起こした少年はどうだったんだろう?。誰も彼がそこまで思い詰めてることに気付かなかったんだろうか?。


僕は、自分も子供を育ててる親だからこそ親に対しては厳しい目で見てしまう。自分自身を戒める為にもね。ただ、だからといって無闇に攻撃する気もないんだ。どうしてそんなことになってしまったのか、その原因を知りたいなっていうだけでさ。


もし、少年がそういう予兆を見せてたのに何もせずに放っておいたんだとしたら、真剣にとりあおうとしなかったんだとしたら、身近な大人の責任はすごく大きいと思う。


ましてや十二歳の少年となれば刑事責任は問えないだろうから、確実に親の責任ということになる。


だけど僕はもし、美智果がそんなことになってしまったら、あの子がたとえ何歳であっても僕にも責任があるという実感しかないんだよね。



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