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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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あの子の顔をよく見てれば

美智果が四年生の頃、いよいよお風呂に一緒に入るのはどうかなと考えた時期があった。だから訊いてみたんだ。


『そろそろ一人で入れそう?』って。


でも美智果は、叱られたみたいにショックを受けた顔になって、


『イヤだ! ムリ…!』


だって。


そこで突き放しても大丈夫かどうかを見分けるのが大事なんだろうな。だけど僕は、その時の美智果の反応を見て、本気で怯えてるのが分かったから突き放すのは無理だと判断した。ここまで来たらもう、とことんまで付き合ってあげようと腹を括った気もする。


たとえ大人になっても一緒に入っても構わないってくらいにね。


ただ同時に、いつか一人で入れるようになるなっていう予感もあったように感じてた。


実際、最近はもうこの頃までに比べると明らかに『怯えてる』感じじゃなくなってるし。ただのスキンシップになってるってことなんだろうな。


十分に満足できれば、自然と必要じゃなくなってくるものだというのを実感する。


『おしりかじって~ん♡』っていうのも、いつの間にか言わなくなってた。僕がお尻をかじらなくても不安そうにしなくなってた。こうやって徐々に平気になっていくんだと思う。


そこでもし、美智果自身が必要としてないのに僕がお尻をかじろうとすれば、これはもうハラスメントってことになるんだろうな。過干渉ってことになるんだって感じる。


その辺りについても、あの子の顔をよく見てれば僕は感じ取れたんだけど、そういうのを感じ取れない人もいるのかな。


子供の表情とかをしっかり見るのが面倒臭いから見てないなんていうのは親としての務めを果たしてないとしか思わない。ただ、人によっては『しっかり見てるつもりなのに分からない』っていう人もいるかもしれない。


そういうのはもう得意とか苦手とかいう話になってくるだろうから、本当にできない人にとっては『努力したって誰もが百メートルを九秒台で走れる訳じゃない』っていうのと同じことなんだと思うんだ。


となると、それができる誰かにやってもらうってことになるんだろうな。


家族が多かった頃には家族の中の誰かがそういうのが得意だったりして補ってくれたんだろうけど、家族が少なくなった今では誰がそれをしてくれるんだろう。


うちは幸い、妻よりも僕の方が得意だった。それはたぶん、他人の顔色を窺うのが得意っていうのもあったんだろうなって気がしてる。それを役立てることができたんだ。


美智果も、割とそういうところがある。他人の機嫌とか顔色に敏感っていう部分が。


もし子供を産んで育てることになった時、それが役に立てばと思ったりもするんだ。



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