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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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何回言っても同じとこでまちがえるんだよ

美智果の学校には、<にこやか学級>というクラスがある。


これは、いろんな事情で普通の授業にはついていけない子達が通う学級だ。そこに美智果と同じ名前のミチカちゃんっていう子がいた。


ミチカちゃんは、軽度の学習障害を伴った発達障害を持つ子なんだけど、名前が同じということで割と美智果と一緒に遊ぶことも多かったみたいだ。


ただ、その子が発達障害を持つことになった原因というのが、親からの虐待だったらしい。暴力も伴うネグレクトで、食事を満足に与えてもらえず、脳が委縮してしまったことでそうなったということだった。


両親は逮捕されて、保護責任者遺棄、暴行、傷害、殺人未遂等々の罪で、今は刑務所にいるそうだ。


ミチカちゃん自身は里親に預けられて今は幸せに暮らしてるって話だった。


でもこれは、運動会の時に保護者同士の噂話が聞こえてしまっただけで、どこまで本当なのかは僕には分からないし、それ自体は別に重要なことじゃない。僕が気になってたのは、美智果がそのミチカちゃんとどう接するかということだった。


一度、マンションの敷地内で美智果とミチカちゃんが遊んでたことがある。その時の様子では、発達障害があるとかすぐには分からないくらいに普通に遊んでたから僕はホッとしたのを感じた。


なのに、モモカちゃんのお祖父さんがその時に遊んでた子供達に対して『五月蠅い!』と怒鳴ったことが怖かったのか、ミチカちゃんは二度とうちのマンションには遊びに来なかったんだって。


それでも、学校では、休憩時間とかに割と一緒に遊ぶことがあるらしいから良かったと胸を撫で下ろしたのを覚えてる。


だけどその頃、美智果が言ったことがある。


「ミッちゃん、何回言っても同じとこでまちがえるんだよ」


って、少し不機嫌そうな感じで。ミチカちゃんが自分の思ってる通りに動けないことに苛立ってたんだと感じた。


だから僕は言ったんだ。


「だけど美智果だって運動苦手で、何度言ってもできないことってあるじゃん。それと同じだよ。ミチカちゃんにとってはそれが苦手なことだってだけだよ」


そう言ったら美智果は、「あ、なるほど!」と納得してくれたようだった。


僕は、相手が自分と同じようにできないからってそれを馬鹿にしたり、いつまでも腹を立てたりして怒鳴ったりとか文句を言ったりとかするのが嫌だった。たとえ苛立ってしまっても、その自分の苛立ちをぶつけるようなことはしたくないと思ってるんだ。


それをするということは、他人からも同じように苛立ちをぶつけられても仕方ないっていうことになるからね。



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