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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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本当に伝わる方法を探す姿勢を

僕が美智果を叩いたり怒鳴ったりしないのは、あの子を甘やかしたいからじゃない。自分の思い通りにならないからって他人を叩いたり怒鳴ったりするような人になってほしくないからそうしないだけなんだ。


『相手に伝わるまで言葉を尽くすこと』を学んでほしいからなんだ。


ドラマやアニメで、叩かれた相手がハッとなるシーンがある。でもあれは『叩いたから分かってくれた』んじゃないと僕は思ってる。元々、叩かれた方が、『以前から何となく分かっていたことに改めて気付けた』だけだと思うんだ。叩くという行為は、その為のきっかけになっただけに過ぎないんじゃないかな。


そうなんだ。最初から双方にある程度の信頼感とか共感とか共通認識とかがあればこそのものだと思うんだ。そういうものがなければ成立しない、危うい行為だと僕は思ってる。でないと反発を招いて余計に状況を悪化させる危険性すらある。


それに、もしこれで『叩いたり怒鳴ったりすれば相手は分かってくれる』という危うい認識を持ってしまったらそれこそ危険だと思うんだ。そもそも信頼感も共感も共通認識もない相手を叩いて従えようとして、でも相手にそれが伝わる素地がないから伝わらなくて、『どうして分かってくれないんだ?。自分の叩き方が足りないからか?』とかと勘違いしてしまってさらに強く叩くようになってエスカレートしていって、いつか取り返しのつかないことになることもあるんだと思う。


相手が怪我をしたり死んだり自殺するまで追い詰めてしまったりっていうのは、結局はそういうことだと思うんだ。


『いつだって叩けば相手に伝わる。分かってくれる』なんていうのは、ただのファンタジーに過ぎない。むしろ逆効果なことが多い。


だってそうだろ? 叩いたり怒鳴ったりすれば相手が分かってくれるんなら、仕事で叩かれたり怒鳴られたり叱責されたりしたことで根に持ったり追い詰められたり酒を飲んで嫌な上司の愚痴を言ったり『もうこんな職場辞めたい』って思ったりする筈ないじゃないか。嫁姑問題があんなに昔から共感を集める訳ないじゃないか。


叩いたり怒鳴ったりというのは、それが効果を発揮するシチュエーションが実はものすごく限定されてるんだと思うんだ。汎用性なんてない、そもそも元から信頼関係や共通認識がある者同士の間でしか効果を発揮しないものだと思うんだ。


だから僕は、美智果に、安易にそれに頼るような人になってほしくないんだ。以前にも似たようなことを言ったけど、先輩風を吹かせて後輩に対して『いざとなったら叩いて怒鳴って従わせればいい』とか考えるような人になってほしくないんだ。


その為に、僕は、伝えるべきことが本当に伝わる方法を探す姿勢を学ばせてあげたいんだ。



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