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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
128/201

もう見られない妻の分まで

二年生の発表会。美智果は鍵盤ハーモニカの練習の成果を披露してくれてた。<エーデルワイス>とか<某有名アニメの曲>とか、定番中の定番っていう選曲だったけど、とても良かった。クラスの子達と並んで懸命に鍵盤ハーモニカを吹いてる姿に、目頭が熱くなってしまったりもした。


僕はこれからも、あの子のこういう姿を見守っていってあげないといけないと改めて思った。もう見られない妻の分まで……


「上手に吹けてたよ」


家に帰ってきた美智果の頭を撫でながらそう言うと、嬉しそうに「えへへ」って笑ってた。


ママに見立てたドールに対しても、


「パパに褒められたよ」


って報告してた。こういう毎日を、これからも続けていこうと、続けていきたいと素直に思った。


クリスマスには小さなツリーを飾って、三人でお寿司を囲んだ。美智果はケーキがあまり好きじゃなかったから。


お正月には、僕からの分とママからの分ということでお年玉は二つ用意した。それぞれ千円ずつだけど。


でもこの頃の美智果は、それこそお年玉を使うこともなかった。欲しいものがあれば、子供の日と誕生日とクリスマスにプレゼントとして渡してた。玩具で遊ぶよりも、僕に絵本を読んでもらうことを望んだ。だから一時間とか二時間とか、ずっと絵本を読んでることもあった。テレビはニュースとか情報番組とか一部のアニメくらいしか見なかった。一年の時に、バラエティ番組で人が死ぬことをギャグにしてたのを見て固まったことがあったから。僕も、正直言ってあれはかなり気分が悪かった。だから見ないようにした。


そういうネタをするなとは言わない。妻のことがあるまでは僕だってそういうので笑ってたし。こっちが見ないようにすればいいだけだ。だけどそうなると、どうしても品のない悪趣味なバラエティは見なくなってしまう。


悪趣味なのが悪いという意味でもない。ただ、この頃の僕達にはそれを許容するだけの余裕がなかったっていうだけだから。


ただ、その手の番組を見てないと、学校で他の子達と共通の話題が減ってしまう。そういう形で割とよく話をしてた子が一人減り二人減りしていって、残ったのが好美よしみちゃんと真理恵まりえちゃんだった。この二人は、アニメとかお笑いとかアイドルとかの話でなくても、美智果と普通に話ができる子達だった。まあそれ以外にもある程度は話ができる子もいたけど、この二人は別格だったかな。今でも、二人はスマホ持ってて美智果は持ってなくても友達だし。


無駄に遊び仲間が多くても自分に合ってないと意味がないっていうのも実感したよ。



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