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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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うんどう、にがて~。はしるのキラ~い

美智果は運動はあまり好きじゃないし得意じゃない。だから運動会も好きじゃない。元々他人と争って順位を競うっていうことに興味が無い。優劣を決めることに興味が無い。


それでいて勉強は好きだった。特に算数は問題が解けるのがパズルみたいで好きらしい。テストで百点が取れるのは当たり前だった。優劣を争うのはモチベーションを保つ為の方法の一つでしかないんだってことを感じる。


他人と競わなくても能力が高い人は高いみたいだし。


だからか美智果は、二年生の時にはもう運動については完全に切り捨ててる感じだった。運動会の徒競走でも、勝とうという意欲をまったく感じない走り方をする。


でもまあ、人間には得意なもの不得意なものがあるのが当然だから、運動が得意じゃないことに必要以上にくよくよしないでいてくれるならそれでいいって思ってる。運動会っていうのは、普段、勉強はあまり得意じゃないけど運動は得意っていう子が輝く為のイベントだって思ってるし。


それでも、あの子があの子なりに頑張ってる姿を見るのは嬉しい。勝つ気はなくても、それなりに楽しんでるのは分かる。徒競走がビリで終わっても、僕が手を叩いてるのを見て嬉しそうにニカッと笑う姿がすごく良かった。美智果が輝けないからって、やる気を見せないからって運動会を見に行かないというのは何か違う気がする。


「うんどう、にがて~。はしるのキラ~い」


笑いながらそう言う美智果を、素直に可愛いと思った。苦手なものでもこうやって笑顔になれる程度には楽しめてるんだからそれでいいんじゃないかな。


自分が苦手だからって腐して貶める人がいる。その価値を認めない人がいる。僕は、美智果にそんな人になってほしくないと思う。


苦手なら苦手でもいい。嫌いなら嫌いでもいい。だけどそれが得意だったり好きだったりする人もいるんだ。勉強は苦手だけど運動が得意な子を、アニメは好きじゃないけどアイドルが好きな子を、馬鹿にしたり蔑んだりする子にはなってほしくないんだ。


そういう意味でも、苦手なことを強引に押し付けて無理にやらせて余計に苦手意識を持たせたり嫌いにならせたりっていうことを僕はしないでおこうと思ってる。『なぜ勝とうと思わないんだ!?』みたいな感じで頭ごなしに責めて、運動が苦手で好きになれないことに必要以上に劣等感を抱いて、運動に対する嫌悪感を育てたくない。


美智果は運動は苦手。でも、それが得意で好きな人もいる。それでいいじゃないか。美智果には、そういう人のことを素直に『すご~い!』って言ってくれる人になってほしいと僕は思ってるんだ。



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