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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
124/201

力関係が逆転する時が来る

親から虐待を受けた挙句にその親を包丁で刺したっていう事件があった。その手の似たような事件は昔からあったと思う。なのにどうしてそういう事件から学ばないんだろうと僕は思う。


暴力で人を支配するのは、相手を追い詰めることにしかならない。相手が成長せず力も強くならずずっと同じままの力関係でいられるならもしかしたら支配し続けることも可能かもしれない。でも、人間は成長するし変化するんだ。


子供は大きくなって力も強くなるし知恵もつく。逆に、大人は歳を取って体力も衰えていく。いつかは力関係が逆転する時が来るんだよ。その時、『力が強いものが弱いものを支配する』っていうのが染みついてたら、当然、力が強い方が弱い方を支配しようと思うだろ?。


どうしてそんな簡単な理屈が理解できないんだろう。


腕力や体力ではまだ勝てない段階でも、武器を手にすれば勝てる場合だってある。実際、包丁を手にするっていうのは力の差を逆転させる為の手段だよね。その程度のことを思い付く知能さえ育たないとか思うんだろうか。そうして反撃されてる事件がこんなにあるのに。


僕は、そういう事件からも学んだ。暴力で支配するのは合理的じゃないって。以前にも言ったけど、いずれ自分に返ってくるだけだって。包丁で刺されたりしなくても、歳を取って体が不自由になってから見捨てられたりすることもあるって。


せっかく生まれてきたのに、自分の家族とそういう関係を築くのって自分にとって得だと思う?。それを得だと思う人がいるなら、僕にはその感性が理解できない。そういう人とは関わりたくない。あれだけ良い関係を築けてきたと思ってた妻とでさえ最後はああなったんだから、最初から良い関係を築こうとしなかったらそれこそ僕は妻に『死なばもろとも』で刺されていてもおかしくなかったと思う。妻も、美智果の前で良い母親の姿を貫けなかったんじゃないかな。


美智果は、今でもママのことが一番好きで、僕のことは二番目だって言う。それは、美智果にとって彼女が好きでい続けられる母親だったからだ。最後までそういう母親でいてくれたからだ。もしそうじゃなかったら、がんでアラフォーにもならないうちに死んで、自分の娘にも『死んで清々した』とか思われるような母親だったら、彼女はそれこそ何で生まれてきたのか分からないじゃないか。


そして、自分の母親をそんな風に思ってしまうような人間になってしまったら、美智果だって他の誰かから『死んで清々した』って思われたりするかもしれない。


そんなの、僕は見たくないんだ。



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